円(1)
「美都ちゃん、気を遣ってくれてありがとう」
「別に気を遣っているわけではない。我は、思ったことをそのまま口にしているだけだ」
「……優しいのね。お気持ちはありがたく頂戴するね」
「澪葉、バカな考えはやめて、早く階段で降りて来い!」
舞泉さんの呼び掛けに対して、澪葉さんは、「それはできない」と即答する。
「私は子どもを殺してしまった。ただ、それだけじゃない。私はもう1人大事な人を殺してしまった」
澪葉さんが殺してしまったもう1人の「大事な人」。それはおそらく――
「時雨だろう?」
僕が思っていた人の名を、舞泉さんが口にする。
「大事な人」というフレーズには、正直、違和感がある。むしろ、梓沙から得た情報を前提とすると、澪葉さんと水城先輩とは仲が悪い可能性が高い気がするからだ。むしろ、互いに憎しみ合っていた、というのが僕の推理であった。
ただ、澪葉さんが殺害できた可能性のある人物は、水城先輩のほかはいないように思えるのである。水城先輩の死体は、澪葉さんが暮らしている円形校舎のすぐそばで見つかっているのだ。
案の定、澪葉さんは、「うん。そうだよ。時雨は私が殺した」と告白する。
「私は、時雨を殺した罪も償わなければならないの。ここで死ぬ以外にその方法はないでしょ?」
「その必要はない」
「どうして?」
「時雨の死も、澪葉の責任ではない」
今回も、舞泉さんはそう言った。
これが舞泉さんの「気遣い」ではないとすると、舞泉さんは、水城先輩の死に関しても、何らかの事実を掴んでいるということになろう。
「じゃあ、美都ちゃん、時雨を殺したのは、私でなければ誰だと言うの?」
「……こいつだ」
舞泉さんが、上げた右腕を伸ばし、人差し指を突き出す。
人差し指の先には澪葉さんがいるようにも見えるが、それよりも少し低い位置を指しているようにも見える。
舞泉さんが、水城先輩を殺害した犯人である、と糾弾したのは――
「円形校舎だ。この奇妙な形の校舎が、時雨の命を奪ったのだ」




