リンク(2)
梓沙は、1度大きく息を吸ってから、言う。
「そうしたら、シフト表に、水城時雨の名前があったの」
――それは、僕にとって予期せぬ情報であった。
水城先輩が、澪葉さんと同じ時期にシャンゼリアでバイトをしていただなんて。
これはつまり、水城先輩と澪葉さんには繋がりがあったということだ。
千翔高校で起きた2つの事件には、ミッシングリンクがあったのである。
「ほお」
この情報は、当然舞泉さんにとっても予期せぬものだったはずだ。
腕を組み、しばらく考え込んだ後、
「時雨と澪葉とは同級生だったな。2人は仲が良かったのか?」
と、梓沙に質問する。
「当時パートで働いていた人の話によると、2人はシフトが重なることもあったんだけど、話しているところはほとんど見なかったんだって」
とすると、たまたまバイト先が同じだっただけ、ということだろうか。
このファミレスは、目立たない場所にあるが、千翔高校からはとても近い。たまたま面識のない同級生同士、バイト先が重なることはあるだろう。
そういえば、水城先輩と澪葉さんのことをともに知っている祥子さんも、2人の繋がりについては一切言及をしていなかった。
情報提供者である梓沙も、
「水城時雨のことは知らないけど、澪葉は相当なコミュ強だったらしいから、その澪葉をもってして、あまり会話がなかったということは、むしろ仲が悪かったんじゃないかな」
と推測を述べた。
逆に僕は、澪葉さんよりも水城先輩のことをよく知っているが、水城先輩は「コミュ強」とまでは言えないものの、人一倍寡黙というわけでもない。
少なくとも、仲が良い相手に対しては、口数は多い方だと思う。
「2人とも亡くなってるから、意味ありげな繋がりに見えたけど、単なる偶然かしらね」
「調査結果は以上よ」と梓沙は話を締め括る。
水城先輩と澪葉さんのバイト先が同じだったことは、本当にただの偶然なのだろうか。
心の中に大きなモヤモヤが残ったが、かといって、この点に関して、さらに梓沙から聞けることはないだろう。
「もう練習に戻って良いかしら?」
「待ってくれ。梓沙に訊きたいことが、もう1つだけあるのだ」
舞泉さんが、踵を返そうとしていた梓沙を呼び止める。
「……そういえば、最初に、美都ちゃんは、訊きたいことは大きく分けて2つって言ってたわね」
「ああ。そうなのだ。今度は澪葉とは全然関係ない話だ」
「じゃあ、私には答えられない話なんじゃない?」
「いいや。梓沙なら答えを知ってるかもしれないのだ」
舞泉さんが、梓沙に何を訊こうとしているのか、僕にも察しがつかなかった。
「どういう話?」
「マットについてだ」
――なるほど。そのことか。
舞泉さんの言うところの「マット」とは、水城先輩の死体とともに、円形校舎の周りに置かれていた体操用マットのことである。
梓沙は、新体操部に所属している。
もしかすると、あのマットについて何かを知ってるかもしれないのだ。
「……マットって、マット運動に使うマットのこと?」
「ああ。そうだ。それが最近無くなったということはないか?」
「無くなったっていうのは、盗まれたってこと?」
「たとえばそうだな」
「うーん、盗まれたことはないけど」
ただ、と梓沙は続ける。
「古くなったマットを廃棄した日はあったわ。あれはちょうど水城時雨が亡くなった日あたりだと思う」
「廃棄、とは具体的にどのようにするのだ?」
「中央校舎の1階にゴミ捨て場があるでしょ? そこに置いておくと、決まった日に業者が回収してくれるのよ」
とすると、円形校舎前に敷かれていたのは、捨てられていたマットで、何者かが、ゴミ捨て場から持ち運んだということか。
マットの出所は掴めた。
しかし、一体誰が何のために、わざわざマットを円形校舎前に持ち運んだのだろうか――
ミッシングリンク……ミステリーでよく使う用語なのですが、僕は今までずっと「ミッシングリング」で、無くなった指輪のことだと思っていました。
ちなみに、カラオケではよくL'Arc〜en〜Cielの「Link」を歌います。明るいロックが好きです。
……今年のサマソニのチケットを買えなかったことを思い出して、暗い気持ちになりました。blur見たかったのに……
それから、贔屓にしているACミランがCLで負けて、朝から発狂しそうでした。。
そんな暑い昼下がりです。




