表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/95

記事

 大手証券会社である三枝証券のご令嬢である三枝澪葉(17)が自らの命を絶ってから、2ヶ月が経った。


 澪葉の父親である三枝さえぐさ應次おうじは、三枝証券のCEOを務めており、神奈川県内の高校に通う娘を溺愛していた。


 それだけでなく、澪葉は一人娘であり、應次は、将来、澪葉を三枝証券の重要な役職に就けようと考えていた。


 それゆえに、應次の心境は察するに辛い。



 将来を約束された、容姿端麗なご令嬢は、なぜ自らの命を断つに至ったのか。


 その理由については、ハッキリしない。


 一説によると、澪葉が、あらぬ罪の疑いをかけられていたという。



「澪葉は、バイト先のファミレスのレジのお金を横領したとして、学校から指導を受けていました。しかし、私は知っています。それは冤罪なのです」


 そう証言するのは、大手ファミレスチェーンCでアルバイトをする大学生Aである。


 Aは、当時、澪葉と同じファミレスでアルバイトをしていた。



「レジのお金が無くなっていたのは事実です。二桁万円のかなりの金額でした。しかし、澪葉は犯人ではないのです」


 Aの話によると、澪葉にはアリバイがあるという。そもそも、レジのお金が盗まれた日には、澪葉はシフトに入っていなかったという。


 それにも関わらず、店は、シフトの入っていない澪葉が、店に忍び込んだとして、無理やり澪葉の犯行を認定したのだという。



「澪葉が犯人だというのは、あまりにも強引なこじつけです。第一、澪葉の家はお金持ちですから、店の金に手を出す動機がありません。バイトをしてたのも、お金を稼ぐためではなく、社会勉強のためでした」


 さらにAは、澪葉の性格についてこう語る。



「優しい子でした。特にお店に来る子どもの扱いが上手くて、癇癪を起こした子どもを親に代わってあやすこともありました。お年寄りにも好かれていて、チップを渡されそうになることもしばしばありました。全て断っていましたけどね」


 チップを断るような人間が、店のお金に手を出すはずがない、とAは強調した。


 それにもかかわらず、犯行は澪葉によるものとされた。


 そして、澪葉は、校長室に呼び出され、噂では、休学を言い渡されていたという。


 

 果たして、澪葉は、濡れ衣を被らせられたことを苦にして自殺をしたのか。


 真相は不明である。



 そして、澪葉の自殺には、更なるミステリーがある。



 入水自殺をした澪葉の死体が、未だに発見されていないのである。


 

「私は、三枝澪葉が崖から海に飛び込むところを間違いなく目撃しました。絶対に見間違いではありません」


 そう断言するのは、神奈川県内の、入水自殺があったとされる現場のすぐ近くにすむ会社員Bである。



「私は、毎晩、仕事終わりに犬の散歩であのあたりを通るのです。崖の先に立つ制服の少女を目撃したのは、夜9時過ぎのことでした」


 記者が、三枝澪葉の写真を見せたところ、Bは、その時に崖に立っていた少女で間違いないと断言した。


 あたりには明かりはないものの、海を挟んだ向こう岸の灯台の光か、もしくは夜間航行をしていた船の光に背後から照らされ、澪葉の顔はハッキリ見えたのだと言う。



「あの時間、あの崖に人がいることは普通はありません。私はすぐに少女が飛び降りようとしていることに気が付き、『早まらないで』と叫びながら、愛犬とともに少女の方へと向かいました」


 しかし、澪葉は海に飛び込んだのだ。


 その時、澪葉がいた崖の先端からBまでは50m以上の距離があり、止められる状況ではなかったと言う。


 あの崖から落ちたら、B自身では助けられないことも分かっていた。Bは、その場で119番通報をした。



「飛び込む直前に、少女は私の方を振り向き、ニコッと微笑んだのです。その時の少女の顔が、私の頭に焼きついています」



 澪葉の笑顔の意味は、果たして何だったのか。


 澪葉は海に飛び込む前に、部屋に遺書を残していた。


 遺書の内容につき、記者は遺族に電話にて問い合わせを行ったものの、「遺書の内容については明らかにできない」とのことであった。


 しかし、遺書が存在することについては否定しなかった。



 遺書を残し、海に飛び込んだ社長令嬢。

 その死体はなぜ見つからないのか。


 付近で漁を行っている複数の漁師に取材をしたところ、海流からすると、崖の真下の岩礁に死体は流れ着くはずだと異口同音に言う。

 実際に、制服からから取れたと思われるボタンが、岩礁で発見されている。


 それにも関わらず、死体は発見されなかった。先述のボタン以外に現場で見つかっているのは、崖の上に置かれていた靴と、澪葉のスマホだけだ。



 三枝澪葉の自殺の真相は、死体とともに「行方不明」なままである。


 みなさんもぜひ「矛盾」を見つけてみてください。答え合わせは次話で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ