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大手証券会社である三枝証券のご令嬢である三枝澪葉(17)が自らの命を絶ってから、2ヶ月が経った。
澪葉の父親である三枝應次は、三枝証券のCEOを務めており、神奈川県内の高校に通う娘を溺愛していた。
それだけでなく、澪葉は一人娘であり、應次は、将来、澪葉を三枝証券の重要な役職に就けようと考えていた。
それゆえに、應次の心境は察するに辛い。
将来を約束された、容姿端麗なご令嬢は、なぜ自らの命を断つに至ったのか。
その理由については、ハッキリしない。
一説によると、澪葉が、あらぬ罪の疑いをかけられていたという。
「澪葉は、バイト先のファミレスのレジのお金を横領したとして、学校から指導を受けていました。しかし、私は知っています。それは冤罪なのです」
そう証言するのは、大手ファミレスチェーンCでアルバイトをする大学生Aである。
Aは、当時、澪葉と同じファミレスでアルバイトをしていた。
「レジのお金が無くなっていたのは事実です。二桁万円のかなりの金額でした。しかし、澪葉は犯人ではないのです」
Aの話によると、澪葉にはアリバイがあるという。そもそも、レジのお金が盗まれた日には、澪葉はシフトに入っていなかったという。
それにも関わらず、店は、シフトの入っていない澪葉が、店に忍び込んだとして、無理やり澪葉の犯行を認定したのだという。
「澪葉が犯人だというのは、あまりにも強引なこじつけです。第一、澪葉の家はお金持ちですから、店の金に手を出す動機がありません。バイトをしてたのも、お金を稼ぐためではなく、社会勉強のためでした」
さらにAは、澪葉の性格についてこう語る。
「優しい子でした。特にお店に来る子どもの扱いが上手くて、癇癪を起こした子どもを親に代わってあやすこともありました。お年寄りにも好かれていて、チップを渡されそうになることもしばしばありました。全て断っていましたけどね」
チップを断るような人間が、店のお金に手を出すはずがない、とAは強調した。
それにもかかわらず、犯行は澪葉によるものとされた。
そして、澪葉は、校長室に呼び出され、噂では、休学を言い渡されていたという。
果たして、澪葉は、濡れ衣を被らせられたことを苦にして自殺をしたのか。
真相は不明である。
そして、澪葉の自殺には、更なるミステリーがある。
入水自殺をした澪葉の死体が、未だに発見されていないのである。
「私は、三枝澪葉が崖から海に飛び込むところを間違いなく目撃しました。絶対に見間違いではありません」
そう断言するのは、神奈川県内の、入水自殺があったとされる現場のすぐ近くにすむ会社員Bである。
「私は、毎晩、仕事終わりに犬の散歩であのあたりを通るのです。崖の先に立つ制服の少女を目撃したのは、夜9時過ぎのことでした」
記者が、三枝澪葉の写真を見せたところ、Bは、その時に崖に立っていた少女で間違いないと断言した。
あたりには明かりはないものの、海を挟んだ向こう岸の灯台の光か、もしくは夜間航行をしていた船の光に背後から照らされ、澪葉の顔はハッキリ見えたのだと言う。
「あの時間、あの崖に人がいることは普通はありません。私はすぐに少女が飛び降りようとしていることに気が付き、『早まらないで』と叫びながら、愛犬とともに少女の方へと向かいました」
しかし、澪葉は海に飛び込んだのだ。
その時、澪葉がいた崖の先端からBまでは50m以上の距離があり、止められる状況ではなかったと言う。
あの崖から落ちたら、B自身では助けられないことも分かっていた。Bは、その場で119番通報をした。
「飛び込む直前に、少女は私の方を振り向き、ニコッと微笑んだのです。その時の少女の顔が、私の頭に焼きついています」
澪葉の笑顔の意味は、果たして何だったのか。
澪葉は海に飛び込む前に、部屋に遺書を残していた。
遺書の内容につき、記者は遺族に電話にて問い合わせを行ったものの、「遺書の内容については明らかにできない」とのことであった。
しかし、遺書が存在することについては否定しなかった。
遺書を残し、海に飛び込んだ社長令嬢。
その死体はなぜ見つからないのか。
付近で漁を行っている複数の漁師に取材をしたところ、海流からすると、崖の真下の岩礁に死体は流れ着くはずだと異口同音に言う。
実際に、制服からから取れたと思われるボタンが、岩礁で発見されている。
それにも関わらず、死体は発見されなかった。先述のボタン以外に現場で見つかっているのは、崖の上に置かれていた靴と、澪葉のスマホだけだ。
三枝澪葉の自殺の真相は、死体とともに「行方不明」なままである。
みなさんもぜひ「矛盾」を見つけてみてください。答え合わせは次話で。




