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取り調べ(2)

「……校長、どうしますか?」


 豊浜教頭が、小声で布瀬川校長に相談をするのが聞こえる。


 僕と舞泉さんが互いに互いを庇い合っている様子を見て、2人の処遇を悩んでいるのだ。



「1つ訊くが、テニスコートのフェンス脇に穴を掘っていたのは、テニスコート内に不法侵入するためではないんだな?」


「違う。そこでオーブが……」


「校長先生、違います! 僕らにはテニスコートに侵入する動機などありません!」


「……そうだよな」


 たしかに客観的な状況を考えれば、テニスコートに忍び込もうとしていたように見えるだろう。

 まさか、校庭に埋まっている死体を探していたところ、ダウジング装置が反応したたためにそこを掘ったのだ、とは思うまい。



「君たち、とりあえず今日は帰りなさい」


 布瀬川校長は、僕らの処分を保留にした。


 仮にテニスコートに忍び込むために穴を掘ったのだとすれば、不法侵入という犯罪行為にも結びつくため、重い処罰が見込まれる。

 ただ、単に穴を掘ったというだけであるならば、処罰すべきかどうかは微妙ということだろう。



「ただ、今回の件については、正直、まだ事情がよく分からないということもある。今後、君たち両方、もしくは片方を呼び出して、追加で事情聴取することもあるかもしれない」


「……はい。分かりました」


「呼ぶなら我のみで十分だ。シモベ君は巻き込まないでくれ」


 舞泉さんはそう言ったが、舞泉さんのみ呼び出すというのはぜひとも避けて欲しい。

 「余計なこと」を色々と話すことは明らかだから。



「まあ、とにかく帰りなさい。君たち、今日は部活はないんだろう? くれぐれもまっすぐ家に帰るように」


「待ってくれ。まだ岩の下に……」


「はい! もちろんです! 一緒に帰ります!」


 これ以上舞泉さんに喋らせるわけにはいかないため、僕は舞泉さんの腕を掴み、無理やり立たせようとする。



 舞泉さんも腕に力を入れ、抵抗するものの、そこはさすがに僕の方が力が上回っていた。



 僕は、舞泉さんを立たせて、半ば引きずるような格好で、校長室の出口まで連れて行った。



「おい。シモベ君、乱暴しないでくれ!」


「それでは失礼します」


 僕は校長と教頭に向かって軽く会釈すると、廊下に出て、ドアを閉めた。




「シモベ君、一体どういうつもりなんだ!」


 校長室から離れるやいなや、僕は掴んでいた手を離したが、舞泉さんは取り乱したままだった。


「舞泉さん、ごめん。この場面ではこうするほかなかったんだ」


「シモベ君は何も分かっていない! せっかくこの学校を統べる者たちに会えたのだぞ! この学校に棲む凶悪な悪魔について、彼らに伝えるチャンスだったではないか!」


 まさか舞泉さんにそんな思惑があっただなんて、僕は少しも思い至らなかった。


 というか、仮に、舞泉さんがそんなことを校長と教頭に伝えたら、舞泉さんは精神病院送られていたのではないだろうか。


 やはり、校長室から舞泉さんを連れ出した僕の判断には誤りがなかった。



「舞泉さん、明日以降またゆっくり話そう」


「シモベ君、岩はどうするんだ?」


「それも明日以降……」


「あの……お取り込み中すみません」



 振り返ると、廊下に石月さんが立っていた。



 神出鬼没、と言うと本人に失礼かもしれないが、まさに神出鬼没である。



 舞泉さんの表情がパッと明るくなる。



「おお。小百合、ハンマーはあったか?」


 そうだった。石月さんは、体育倉庫に岩を砕くためのハンマーを取りに行くと言って、テニスコートから離れていたのである。


 それゆえに、石月さんは、布瀬川校長に見つからずに済んでいたのだ。



「美都さん、すみません。ハンマーは見つからなかったんです。体育倉庫にハンマーがある、というのが私の記憶違いだったみたいで……」


 たしかに、石月さんの手にはハンマーは握られていない。僕は内心ホッとする。



「それより、私、テニスコートに戻った時に、2人が校長先生に連れて行かれるのを見て、心配になって後を尾けてきたんです」


 石月さんには尾行癖がある、と言ったら尚更失礼だろうか。



「そうしたら、2人が校長室に入ってしまったので、私、廊下で聞き耳を立てていたんです」


 それはおそらく盗聴なのだが、石月さんに悪びれる様子はない。



「美都さん、死体を探していた、というのは本当なのですか?」


――マズいことを聞かれてしまった。


 知らないうちに死体探しに加担させられていたということを、石月さんは知ってしまったのだ。



「石月さん、本物の死体を探していたわけではなくて、『死体探しごっこ』であって……」


「本当だ。この学校の校庭には死体が埋まってるのだ」


 舞泉さんをコントロールすることは、僕には不可能だった。


 石月さんは怒るに違いない。せっかく「友達」になれたのに、絶交されてしまう。


 それどころか、財界に強い影響力を持っている石月さんの両親も怒って出てくるかもしれない。

 僕と舞泉さんは、社会に出る前に社会的に消されてしまうのかもしれない。



 僕は石月さんの次の言葉が怖くて、思わず目をつぶる。



 石月さんは――



「志茂部君、美都さん、それならそうと先に言ってくださいよ! この学校の死体に関して、私に心当たりがあります!」



……え? 石月さん、マジ?



 実はこれで第1章「死体探し」は終了です。


 だいたい12〜15万字での完結を狙っているので、全体の4分の1くらいのストーリーを消化したことになります。


 次話からは、第2章「消えた自殺者」に入ります。章のタイトルだけ見るとミステリーっぽいですね(ミステリーです)。


 ストーリーを進めるにつれて、ミステリー成分は強めていきますが、とはいえキャラ小説の部分は弱めないよう、第2章の冒頭から強烈なキャラを登場させます。


 今のところ、あらすじはちょこちょこ変えていますが、大きな矛盾にぶつかることなく、執筆は順調ですので、来月中には完結できればと思っています。


 引き続きよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] この子もこの子で相当変わってる(;'∀')
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