表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/151

90話 命の行方

◇◇◇


 一週間が経った。


 この世界に特に脅威は無い。


 その代わりに、世界を滅ぼせるだろう力を持った二人が毎日街の外れで殺し合いを行っている。……厳密に言うと殺し合いでは無いが、説明は省く。


 今日も天戸はボロボロになって戻ってきた。


「ごめん、杜居くん。お願い」


 毎日毎日何本も骨は折れ、血は流れ、傷は絶えない。


 一週間経っても慣れない。


「痛くねぇの?」


「痛いよ」


「だよなぁ」


 いつも通り顔の治癒から始めよう。


 頭に手をかざして治癒魔法を使う。


 きょとんとした顔で俺を見る天戸。


 そう、ついに俺は『触れないで治癒』が出来るようになったのだ。ふはは、凄い進歩だ。テレレレッテッレレー。うん、超音痴。


 恐らくとんでもないどや顔で天戸を見下ろしたことだろう。


「ふはは、驚いたか?お望み通りの触れない治癒だ。俺だって成長してるんだぞ」


 だが天戸は大きく溜息を吐くと、めんどくさそうな顔で俺の手を取り自身の顔にペタッと付けた。


「手抜かないでくれる?こっちは必死にやってるんだから」


 全く予期せぬ反応に困惑した。


「手を抜くってなんだよ、心外だな。人がせっかく新技披露したのに」


 天戸は俺の手を掴んだままぷいっと横を向く。


「あ、そう。でも非接触式より接触式の方がエネルギー効率いいんじゃないの?スマホの充電もそうでしょ?」


「スマホと一緒かよ……」


「そもそも『手当て』って言うじゃない」


 まぁ、一理ある。


 俺に出来ることは一秒でも早く治して、少しでも痛みを和らげてやる事だと思う。


「……分かったよ。だが頼むから胸部の怪我だけは避けろよ?」


 天戸は呆れた顔で俺を見る。


「はいはい、宗派の違いってやつでしょ?バカ。ほんとバカ」


「思ったんだけどさ」


 怪我の治療をしている俺達の所にジラークがひょこっと現れる。


 天戸は露骨に嫌そうな顔をして答える。


「何?戦い以外の事は口にしないで」


「じゃあヒントだけ」


「不要よ」


 治療を受けながらプイッとジラークから顔を背けるが、ジラークは気にせずに俺を見る。


「じゃあ後で杜居さんにだけ教えますよ」


「お、頼む。念話のコツも頼んます」


 天戸がキッとジラークを睨むと、ルカが頭をパシッと叩く。


「お兄!天戸ちゃんに意地悪しないの」


「え、悪いの僕?」


 ルカはニコニコと天戸の隣に座る。


「お兄が悪いに決まってるでしょ?天戸ちゃんがこんなに怒ってるんだから。ね?天戸ちゃん」


 この一週間で……と言うか、割と最初からだがルカは天戸に超懐いている。一人っ子の天戸も満更でもない様子に見える。


「そうね」


「ね、天戸ちゃん。治しながらでいいから今日も天戸ちゃんの世界の話を聞かせて?ね?いいでしょ?」


「でね、念話のコツなんだけどさ」


 ニコニコと俺に話しかけるジラークをキッと睨むルカ。


「お兄うるさい」


「はは、だよねぇ」


「……わかってるなら最初から念話にしろよ」


「杜居もうるさい」


「はいはい、わかりましたよ」


 傷だらけの天戸は、少し楽しそうにルカに俺達の世界の話をする。


 このところ毎日の決まり事だ。


 黒々と舗装された道や、そこを走る鉄の車。天を衝くビル群や空を飛ぶ飛行機。俺達から見たら当たり前の物事なのだが、当然ルカは目を輝かせて天戸の話を聞いた。


 俺は天戸の治療を終えても治療をしている振りをして、ジラークもニコニコと俺達を見守っている。


 この瞬間だけ切り取って見れば、仲の良い4人パーティだろう。


 或いは、本当にそうだったならどれだけいいだろうかとこの一週間毎日思う。


 

 彼と敵対しない世界が作れないか?と、言う考えは甘いだろうか。


 それによりどう世界が変わるのか、変わらないのかはわからないが。


 「はい、じゃあ今日はこの辺で終わり」


 キリのいいところで天戸は話を終えるが、ルカは不満そうに口を尖らせる。


「え~。もう?そのクラスで一人も友達がいない少年はどうなったの?」


 あれ?何の話してんのこいつ。


「ふふ、続きはまた明日」


 不満を漏らしていた先ほどとはうってかわって、満足気に息を吐くルカ。


「はぁ~、いいなぁ。私もみんなと他の世界に行ってみたいなぁ」


 ジラークは優しくルカを諭す。


「ダメだよ、危ないもの」


「危なくないでしょ。お兄と天戸ちゃんがいれば怖いものなんてないじゃん」


「あれあれ?一人足りなくない?」


「杜居も守ってもらう組だからいいんだよ」


 そんな組み分けがされていたとは。


「……そうっすね」


 ジラークはルカの頭をわしわしと撫でながら俺と天戸に問う。


「所でお二人に聞きたいんですけど、『仇』の特徴とか世界とか分かるなら教えて欲しいなって」


 天戸は冷たくジラークを睨む。


「あなたには関係ないでしょう?」


 もう一戦始まるんじゃないかと言うようなピリッとした空気を発するが、ジラークには関係ない。


「あはは、そうでもないでしょう?ほら、僕よく眠りますから、うっかり遭遇しちゃうことだってあるかもじゃないですか?僕が倒して良いならいいですけど」


「……心配しなくて平気よ。あなたには倒せないから」


 本人だからな。


 よけいな情報与えるなよと一瞬ヒヤリとしたが、ジラークは特に気にせず笑い天戸を煽る。


「あは、それなら天戸さんにはもっと無理ですね。僕よりずっと弱いもの」


 当然その言葉にカチンと来た天戸は立ち上がる。


「あ、そう。幸せな勘違いをしたまま死ぬと良いわ」


 明らかな戦闘態勢に入る天戸さん。


「止めろよ、お前が先だろ?つーか、今日もうしばらく治せないぞ」

 

 天戸は超絶感じ悪く『チッ』と舌打ちをすると、ポケットに手を入れたまま立ち去る。


 感じ悪いな~、あいつ。


 立ち去る天戸の後ろ姿をしばらくみた後でジラークを疑いの目で見るルカ。


「……天戸ちゃんに何したの?嫌われてるってレベルじゃないじゃん」


 ジラークはニコニコと笑う。


「さぁ?仇に似てるんだってさ」




 ――そんな感じの毎日がもう一週間ほど続いた。


 逆に言うと、一週間で(つい)えた――。




◇◇◇




 終わりは唐突に来た。




 天戸と伊織がこの世界に来て二週間程過ぎたある日の朝。



 朝起きて、いつも通り兄が別の世界を救って(眠って)いるうちに朝食を作ってしまおうと、ベッドから起きあがろうとしたその時、身体に違和感を感じた。


 ――正確には、『命に』違和感を感じた。


 ドクン、と心臓が一度強く、最後の脈を打つ。



 そして理解した、『あぁ、私の命は費えたのだ』と。



 身体に力は入らず、意識は朦朧として、目から、口から、鼻から液体が流れ、呼吸もままならない。


 兄の言うとおり召喚術が命を縮めたのだろうか?それとも何か別の病だろうか?


 兄は隣の部屋で眠っている。


 何とか隣の部屋まで行きたい。


 兄なら助けてくれるかも知れないし、ダメだとしても最期に顔が見たい。お礼を言いたい。気にしないでと伝えたい。


 だが、ルカにはベッドから落ちることしか出来なかった。

   

 声は出ない。



「ルカ!」


 ルカがベッドから落ちた音でジラークは目覚め、部屋に駆け込んで来て青ざめる。


「ルカ!大丈夫か!?今助ける!」


 視界の端に映る兄の目からは涙が溢れ、あの冷静な兄の歯がガチガチと音を立てていた。


 兄の治癒魔法が部屋を包む。


 だが、症状は変わらない。


 きっと生命自体が尽きたせいだ。


 声も出ない。手も動かない。泣かないで欲しい。あなたは悪くないのだから。来てくれて本当にありがとう。一目でも見られて心から嬉しい。


 伝えるすべが無いことが口惜しい。


 父の顔も、母の顔も知らないけれど、あなたと兄妹で本当に良かった、と。



 ジラークが床に倒れたルカを抱き抱えると、ルカと目が合う。


 ほんの僅かに、微笑んだかと思うとルカの身体は衣服を残して消えた。


「……ルカ?」


 ジラークの腕には、ルカの衣服だけが残っていた。


 ルカの体温の名残を残して。




 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ