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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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89話 冒険者風男と受付嬢風女

◇◇◇


「ほら、このマントなんかゲームっぽくていいんじゃない?」


「うるせぇな。……ん?ちょっと格好いいな、それ」


「ふふ、でしょう。好きだと思った」


 えーっと、俺杜居伊織(もりいいおり)君はなぜか今天戸(あまと)うずめ閣下の着せ替え人形となっております。


 謎の素材で出来た冒険者風マント。首の辺りには謎の宝玉が付いていて、何らか謎の加護が有りそうだ。


「おいおい、いいじゃねぇかよ。楽しくなって来ちゃったぞ。後はあれだな、ブーツとか小物まで揃えたいところだな」


「買う?」


「買う」


 即断即決。


 店を出てマントをバサッとやってみる。


 うへぇ、俺超格好良い。


 三回ほどバサッとやってみて天戸の視線が気になった。


「……何だよ」


「気に入った?」


「おう。むしろなんで今までやらなかったのかと後悔した」


 あまりの俺の食いつきにクスクスと笑う天戸さん。


「武器は?身の丈ほどの大きな剣とか」


 俺はパチンとならない指を鳴らして天戸を指差す。


「それだよ、足りないピースは」


 天戸さんの笑顔に少し影が差す。


「ん、少しうざいわね」



 ぶらぶらと探すと武具店はすぐに見つかった。


「この店で一番大きい剣下さい」


 天戸の要望を冷やかしと思った店主は鼻で笑う。


「お嬢ちゃん……どこで聞いたか知らないがうちの『大根斬り(ラ・ディッシュキラー)』は誰彼構わず売れるような代物じゃあ無いんでね。怪我しないうちに帰りな」


 天戸はチラッと俺を見る。


「ですって、杜居くん。残念だったわね」


 うおい、何故そこで諦める。


 俺は役立たず(天戸)を押しのけて前に出ると、カウンターに腕を突く。


「オヤジ……、どうやらお前さんの目は節穴の様だな」


「ほう?」


 ――何だかそれっぽいやりとりの後で、剣を売ってくれた。どうやら本当に節穴だったらしい。大根斬りなんて名前も格好悪いから俺がつけよう。


 んで、買ったはいいが……重い。重すぎる。


「……あっ、天戸!だめ!これ!下ろして!」


 背中にカチッとホルダーをセットされたが、重すぎて歩けない。情けない声が出てしまうが、天戸さんは俺の懇願を無視してスマホを向けている。


「ふふ、もう少しがんばろ」


「バカだな、お前は!折れるんだよ、もう!腰骨が折れるって言ってるの!」


「平気よ、あなた治癒得意でしょ?」


 そんなやりとりの間にも俺の腰は限界を迎えそうだ。


「アホすぎる!頼むよ、うずめ様!」


「しょうがないなぁ」


 そう言ってスマホからピロンと音がする。……動画を撮っていた……だと?


 天戸のマフラーはヒョイと大剣を外す。

  

 俺の背中に背負ったものが軽くなる。


「ぶはー……。助かったぜ。人生とは、重き荷を背負いて長き道を行くが如しだな」


 意味不明だが、そう思った。


「家康?」


「いや、なんかのマンガ」


「あ、そう。徳川家康よ」


 いまいち会話が噛み合わない。


「いや、違うと思う。そのマンガじゃない」


 天戸も同じ事を思っているようで、少しイライラしているのが見て分かる。全く、気の短いやつだ。


「だから誰もマンガだなんて言ってないでしょ?徳川家康の遺訓よ、それ」


「あ、そう」


 はい、その話終わり。



◇◇◇


 取りあえず大剣はしまっておいて貰う。


「せっかく買ったのに」


 天戸が不満げな顔をするが、背骨には換えられない。


「お前も何か買ったら?いつも制服じゃん」


 そう言えば、今更ながら転移時の服が毎回制服な事が気になった。


「なぁ、こっちで起きたとき既に服着てるよな?どんなルールなんだろうか」


 正に『今更?』と言う顔で天戸は俺を見る。


「恐らく一番意識下に残っている服じゃないの?ハルは三回ともパジャマだったわ」


「写真は当然あるんだろうな?」


「答える必要は無いわ。で、あなたそんなに制服好きだっけ?それとも他に服を持っていないの?」


「無駄にディスって来るなよな。んー、確かに制服が楽だけど……部屋着の方が楽だよな」


 少し考えて思い至る。

 

 初めて中学の制服を着たときに思ったことを。


「あー、たぶん分かった」


「どんな下らない理由?」


「……中学に入る時、制服を着て、初めて鏡を見たとき思ったんだよ。……ハルに見せたかったな、って。はは、だから制服なのかも」


 天戸は俯き黙っている。


「なんかコメントしろよ」


「……ごめん」


「はぁ?何謝りだよ」


「全然下らなくない」


 あぁ、余りにさらっとした蔑みだったから特に気に留めなかったな。


 ただ、素直に謝られるとどうにもやりづらい。


「絶対、見せようね」


「そのつもりだよ。だからお前も写真見せてくれよ、ハルの」


 急にぷいっとそっぽを向く天戸さん。


「却下。私の服も選んでくれるんでしょ?行こ」


「選ぶとは言ってないような気がする」


「細かいなぁ」


◇◇◇


 女の買い物は長いと言うが、天戸は比較的早いと思う。


 元々短気でせっかちなのもあるだろうが、気に入るとすぐ購入となる。


 金があって、収納スペースがほぼ無限だからだろうか?


 結局天戸は俺の三回目の『いいんじゃね?』の後で黒っぽいロングスカートの、あまり露出のない服を買った。


 ギルドの受付にいそうな雰囲気を感じる。


 正直悪くない。


 着替えた天戸は少し恥ずかしそうに現れる。


「……文句が有るなら早めに言ってよね」


「いや、いいぞ。似合ってる」



「……本当に?」



「あぁ、写真撮ってやるよ」


 天戸は異次元ポケットからスマホを取り出す。


「ん、私が撮る。折角だからあなたも一緒に映ったらいいわ」


 毎度思うが意外とコスプレ好きだよな、こいつ。


「オッケー。あ、いいこと思いついた。俺この『ユグドラシル(さっき買った剣)』を構えて写真撮りたい」


 クスリと笑い、戦乙女の襟巻き(ヴァルキリーマフラー)で剣を抜き、支えてくれる。


「子供ね」


「男はいつだって少年なんだよ」


「あ、そう」


 そう言いながらも剣の角度を微調整してくださる天戸さん。


「撮るわよ」


 何の愛想も無く、パシャパシャと何度かシャッターを切る。


 撮り終わると、大剣をしまいスマホを眺めて写真チェックをする。


 心なしか口元が少し弛んでいるような気がする。


「何ニヤついてんの?」


 途端に無表情になり俺を睨む。


「ニヤついてなんかないわ」


「どっちでも良いけどさ。お前、その服着て戦う気?一発ボロ布になるだろ」

 

 もうじきジラークとの戦闘訓練が待っている。


 昨日の今日で無傷で終えられるはずがない。


「……着替えるわ」


 異次元ポケットに入っていった天戸の後ろ姿は、少し寂しそうだった。


 





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