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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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86話 脅威無き世界

◇◇◇


 ジラークは召喚の対価を知らなかった。


 教えるべきか一瞬考えたが、俺たちを喚んだ術者は妹なのだ。知らなくていい理由なんてないし、因縁の有る無しは関係ない。……と、言うのは少し甘いだろうか?


「ジラーク、召喚術の対価だけど」


 ジラークはきょとんとした顔で俺を見る。



 ちらっと天戸を見ると、天戸はルカに何か世間話を振ってくれた。


「ねぇ、ルカ。今何時?お腹が空いたから何か食べようと思うんだけど、お勧めは何かある?」


「お勧めですか?うーん、万人向けかはわからないけど……」


 話は気になるが、折角の天戸の気遣いを無駄には出来ない。


 妹に聞こえないように小声で伝える。


「……召喚術の対価は術士の修道女の命だって俺達は聞いてるけど」


 その言葉に初めてジラークから笑顔が消えた。


「……本当ですか?」


「もしかしたら俺たちが喚ばれてる術とは違う可能性もあるけど、少なくとも俺達の今の情報ではそういう認識だよ」


 少し考えた後で、ジラークは椅子に座り腕を組み目を閉じる。


「眠る度に異世界に行く訳じゃないんですか?」

 その問いに俺はコクリと頷く。

「あぁ、だいたい三日に一度くらいかな。もちろん続くときもあるけど」

「なるほど」


 その後で、思い出したように片目を開けて俺を見る。


「五分待ってもらって良いですか?」


「えっ?……あぁ」


 俺の答えを待ち、微笑んで目を閉じると数秒後には寝息が聞こえた。



「あれま、ばか兄何でまた眠ってるんです?」



 天戸と世間話を終えたルカがやってくる。


「……いつもこんなにすぐ眠れるの?」


 苦笑いでそういった俺に呆れ顔で答えるルカ。

 

「そうなの、眠ろうと思えばいつでも眠れるんですって。お陰で学校でのあだ名は『瞬眠(しゅんみん)』ですよ、本当恥ずかしい、授業の度に眠ってるんだから」


「どこかで聞いた話ね、爆速の睡眠王さん」


 天戸は薄笑いで俺を(なじ)るが、正直笑い事じゃない。


 例えば俺のように、毎時間授業で居眠りをするとする。七限で七回、学校にいる間だけでざっくり二回も世界を救う事になる。俺と天戸がこの世界にいる間に、ジラークは何百回世界を救うのだろう。



 恐らく丁度五分後、パチリと機械的に目を覚ましたジラークは妹の顔を見ると優しく笑いかけた。


「あ、おはよう。お腹空いたね」


 ルカは呆れ顔で兄を見る。


「おーはーよ。今天戸ちゃんとも話してたの。ご飯行こ」


「賛成」


 俺達四人は建物を出て、街へと向かう。


『杜居さん、あなたの言うとおりでしたよ』

 

 急に頭の中に声がして驚いたが、ジラークを見ると彼は微笑む。


『あれ?念話できません?便利ですよ、教えましょうか?』


「まじで?俺にもすぐ出来る?」


「……何が?」


 先を行く天戸が訝しげな顔で俺を見てきた。

 

 あぁ、端から見るとただの独り言か。


「念話ってやつだよ。決して独り言ではない」


 俺がそういうと天戸は露骨に嫌そうな顔をしてまた前を向いた。


『結論から言うと、さっきの世界ではあなたの言うとおり修道女の命と引き換えに召喚したようでした。……ルカは生きていますが、どちらが真実なのでしょう?』


 声に出して話づらいな、と思うと『あぁ、妹はあまり他人の会話は聞いていないから平気ですよ』と念話が飛んできた。


 普通はそうなのかもしれないな。


「……俺もそれを知ったのは最近だから天戸の方が詳しいかも知れないけど、本人の素養によって何度か耐性はあるのかもな、って印象だよ。死ぬ人は一度で死ぬみたいだ」


 ジラークは深刻な顔をして下を向く。


『そうですか……』


「どちらにせよ、もう妹さんに召喚をさせない方がいいぞ。確定じゃないにしてもリスクが高すぎる」


 慰めになっていないような俺の慰めに、ジラークはようやくニコリとほほ笑んだ。


「そうですね。……ルカ以外にもさせたくないです」


「だなぁ。だってこの世界特に困って無いんだろ?それに並大抵の脅威ならジラークでどうにかなるだろうし」


「んー、まぁ戦闘系なら大概は。自然脅威は微妙ですけどね」


「はは、『微妙』ね」


 無理とは言わないところに自信を感じた。


 

 建物の外に出ると、やはり俺達のいた建物は古い教会だった。


 街の外は明るく、活気に溢れていた。


 教会から繋がる大通りの先にはかすかに城の塔が目に入る。



「はいっ、天戸ちゃん。ここが最近私の一押しのお店だよ!」


 ジラークの妹ルカちゃんがお勧めと言った食事処は、店の入り口に巨大な水槽があり、何やら玉虫色の太長い恐竜の様な魚がたくさん泳いでいる。優に一メートルはある。熱帯魚のポリプテルスに少し似ている。背びれもあるし。取り合えず光の当たり方で色が変わる。


「ねぇ、ルカ。初めてのこの世界の食事なんだからもっと一般的な料理をご紹介しなよ」


 笑顔でジラークが苦言を呈している所を見ると、この世界であまり一般的でない料理らしい。


 今与えられている情報から推測すると、恐らくこの玉虫色の魚が食材なのではないか……?


「お魚料理ね。ふふ、楽しみ」


 天戸さんは水槽に顔を近づけて玉虫色の魚を眺めながらご満悦の様子。


 ルカも天戸の反応にご満悦の様子で、ウキウキと店内に入る。


「おじさーん、4人お願いしまーす。活きのいいやつカリっとさせちゃって!」


「あいよっ!」


 厨房から威勢のいい声が響いて、戦士寄りの料理人さんがさっきの恐竜魚を銛みたいなのでぶっさす。



 ……まぁ、結論から言うとただの魚のフライとか刺身とかそんな感じの料理だった。独特の臭みが鼻に付くが、ルカはそこが気に入っていると言った。


 良くも悪くも個性ってのはそう言うものだよな、と思った。


「僕も学校があるからさ、学校が終わった後に一日一戦だったら実戦訓練お付き合いできるよ」


 恐竜魚の活け造りに箸を伸ばしながらジラークは天戸に言った。


「構わないわ」


「つか、さっきもちょっと言ってたけど学生なのか」


「別に僕は行かなくても良いと思ってるんだけど、ルカが行け行けうるさくって……」


 ジラークの言い分にルカは少しムッとして魚?のフライを頬張る。


「当たり前でしょ?あのね、学校って言うのは勉強だけじゃなくって、仲間や友達を作る場所でもあるんだから」


 ルカの言葉を聞いて天戸はニコリと笑い俺に嫌味を言う。


「ですって、杜居くん。耳が痛いんじゃない?」


「うるせぇ痛くねぇよ」


「はは、治癒魔法いる?」


「いらねぇ」


 俺達……主に俺とジラークのやり取りを見てルカは満足気にニコニコとした。


「私、二人を召喚してよかった」


 俺と天戸とジラークは一様に首を傾げるが、ルカはそのまま言葉を続ける。


「だってお兄ちゃんずっと、こんな風に話せる友達いなかったから」


「友達」


 その言葉に天戸は眉を寄せ、それに気が付いたルカは悲しそうな顔をする。


「あっ、ごめんなさい。……勝手に一人ではしゃいじゃって。友達じゃ、なかったかぁ」


 その言葉と表情は離れた席に座る俺の心も抉る。天戸はきっと内心罪悪感を感じながらも、表情を変えずに言葉を放つ。


「そうね、友達じゃないわ。私たちは勝手に呼ばれただけだし、私はただ強くなりたいだけだから。その為にあなたのお兄さんを利用させてもらうわね」


 ほんのわずかに天戸は優しく微笑む。きっと、これが今の天戸が彼らにできる最大限の譲歩。……天戸だって揺れているのだ。


 ルカは少し考えてニッコリと満面の笑顔を見せた。


「それでいいです!お兄ちゃんはみんなと違い過ぎてずっと一人だったから!……友達じゃなくても、仲良くしてあげてくださいね」

 

 この年齢で転移もなしにこの戦闘力。そりゃあ周りも怖いだろうと思う。


「お断りよ。うっかり殺しちゃったらごめんね、ルカちゃん」


 ニッコリと笑顔で怖い事を言う天戸さん。相手が子供だろうと一切の忖度はない様子。


「えぇっ!?」


 心配そうにルカはハッと兄を見るが、ジラークはいつも通りニコニコとほほ笑んで魚ステーキを切り分ける。


「はは、じゃあ僕はうっかり殺さないように気を付けますね」


 天戸近くの空気が凍り付き、店内の空気が重くなった。



 初めての脅威の存在しない異界転移。


 俺と天戸と、ジラークとルカ。四人の奇妙な毎日が始まる。




 

 

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