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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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78話 続きやろっか

◇◇◇


 朝起きると窓の外が騒がしい。


 と言うか、窓の外が騒がしくて起きたに違いない。


 何事かと窓の外を覗くと、死屍累々と横たわる鎧姿の兵士達の中で一人立つ天戸うずめさんが目に入った。


「おはよーっす。朝っぱらから何やってんすかね」


 少し距離はあるが、天戸には問題なく聞こえる。チラッと俺を見て僅かに微笑む。


「おはよ。訓練よ。あなたもやる?」


「……いや、結構。低血圧なもんで」


「あ、そう。あなた達は?」


 天戸の声掛けに兵士達は立ち上がる。


「お願いします!」


「伝説の勇者様に訓練をつけていただけるまたとない機会……逃すわけには行きますまい!」


 天戸はポケットに手を入れたままニコリと微笑んだ。


「その調子。私達が帰った後もイズーニャを守ってあげてね」


『応!!』


 超高血圧なやり取りが眼下で繰り広げられている。


 天戸はポケットに手を入れて、マフラーを手の代わりにしながら多対一で戦っている。


 普段のパワープレイとは違った流れるような身のこなしからしばらく目が離せなかった。



◇◇◇

 


 天戸が朝の訓練を終えた後は食堂に向かう。


「お前の使ってる武術?って何か流派とかあるの?」


 朝っぱらからラーメンに豚カツの様な物がのった超高カロリーっぽい食べ物を食されている伝説の勇者天戸うずめさん。


「ん、言わなかったっけ?武神と修行したって。強いて言えば武神流なんじゃない?」


「武神さんは人?神?それ以外?」


 頼んだらシリアルがあったので、俺はシリアルで朝食をとる。子供の頃からのささやかな夢が今叶った。うちでは絶対に許されない。我が母上のカテゴライズではシリアルはお菓子だから。


「さぁ?人だろうと神だろうと、必要だから教えを請うたんだもの。興味ないわ」


「あ、そうっすか」


「あなた何で時折変な敬語なの?」


「さぁ?変な敬意の表れじゃねぇ?」


「変なの」


 わけのわからないやり取りをしながら朝食を終える。


 

 朝食を終えると天戸はまた兵士達の戦闘訓練へと向かった。


 彼らから見れば天戸も武神なのだろうと思う。


 魔法や、何らかの特殊能力を使わずに、素の戦闘力だけで竜も魔王も圧倒する武の極致。


 天戸うずめさん、16歳。


 

 その間俺はやる事が特に無いので、イズーニャが俺の相手をしてくれる。


「伊織さんが心配すると困るから弁解しますけど、あの子達大陸でも名を馳せるうちの最精鋭なんですよ。本当は超強いんです」


 イズーニャが必死に兵達のすごいところを俺に説明してくれるが、なんとなく俺もわかっているから大丈夫。


「あぁ、大丈夫。さすがにわかるから。並大抵のやつじゃあいつに向かっていく事も出来ないからさ。威圧感だけで口から内臓出させられるんだぜ」


 俺がそう言うとイズーニャは両手で口を塞いで驚いた顔をする。


「それほどですか」


 実際に出ている所は見た事無いけど、多分出来ると思うから頷いておく。


「あ、手出して」


 そうそう、忘れていた。と俺はイズーニャに白く小さな手を差し出させる。


 ポッと淡い光が灯り昨日のひっかき傷を治す。


 イズーニャは驚いた顔で俺を見てにっこりと笑う。


「やっぱり優しいです!ありがとうございます」


「いやいや、つーかそれやったの俺だし。今まで忘れていたし」


「忘れていたんですか!嫁入り前の女の子の肌に傷をつけて!責任取るしかないですね!」


 イズーニャはぷんぷんした振りをして横に座る俺に距離を詰める。


「あらぬ疑いをかけられるから近づくなよ」


「冗談です。願い事は一つって約束ですから」


 そう言って年相応に悪戯な顔で笑う。


 年相応って言うのは勿論見た目年齢だ。


「竜がいる所ってここからどのくらいかかる?」


「近いですよ。馬車で3日ってとこです」


 想像以上に近くて少し驚いた。


「……俺が言うのもなんだけど、よく平気な顔して皆暮らしてんな」


「この街だけですよ?この街では、困った事があったら異界の勇者が来てくれるって皆思ってますもん」


 困った顔で頭を掻く。


「それはそれで問題だと思うけどな。……次はもうだめだぞ?マジで」


「お約束とまではできませんけど、気にはしますね」


「言ったよな?死ぬぞ」


 イズーニャは少し考えた後で言い辛そうに俺の服を引く。


「怒らないでくださいね?」


「内容による」



「えへへ、私子供のまま不老不死になったから、子供いないんですよね。……だから、この街の人たち全部が、私の子供と思ってずっと生きてきたんです。だから、子供たちを守る為なら私の命なんて……いくらでも差し出しますよ」


 何も言えずにジッと見る俺に寂しそうに笑うイズーニャ。



「……子供に先に死なれるのが、親は何より辛いんですよ」



 その言葉で真っ先に浮かんだのは、やはりハルの顔だった。


 ハルのおばさんとも、あれから一度も会っていない。


 あぁ、俺は本当に馬鹿で自分勝手なガキだな。


 ハルの家に行けば思い出すから、とあれから一度も行っていない。


 イズーニャが頭を撫でているのに気が付くと同時に、涙がこぼれているのにも気が付き慌てて袖で拭う。



「杜居くーん、ごめん。一人怪我した。治してあげて」


 大きな声で天戸が俺を呼ぶ。


「あいよー。こちら救護本部でーす。怪我人はこっちへ~」


 俺は大きく手を広げて兵達に示すが、誰もこっちに来てくれない。


「……勇者様は治癒魔法使えないのですか?」


 怪我をしたと言う兵士はやや赤い顔で天戸に言うが、当然冷たくあしらわれる。


「ん、無理。あの人得意よ。死んだって蘇生できるんだから」


「そ……蘇生!?」


 途端にざわつき、異教徒を見る目が俺に向く。


 どの世界でも蘇生は悪なんだな。


「……無意識に俺の評判を落とすのやめてくれませーん?あと、そいつお前に治癒されたいだけだぞ」


 天戸は怪我をしたという兵をチラッと見る。


 兵は直立に気を付けをして腹から声を出す。


「押忍ッ!『痛いの痛いの飛んでいけ♪』でもいいであります!」


 天戸はニッコリと笑ってポケットから手を出してマフラーを後ろへ払う。


「なんだ、元気ね。続きやろっか」


 その言葉のどこかに元気になる要素があったようで、兵たちはまた一段とでかい声で天戸に応える。


『押忍ッ!願いますッ!』


 そしてまた戦闘訓練が始まった。


 流れるような動きの天戸は、まるで踊っているようにも見えた。



 


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