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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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77話 300年ずっとだよ

◇◇◇


 この街で一番高いお城の一番てっぺんに座り、杜居くんとイズーニャの話が終わるのを待つ。


 聞かれたくない話でなく、聞かせたくない話だと彼は言った。


 言葉って不思議だ。たった一文字違うだけで、全く意味が変わってくるのだから。 


 逆に考えると、その一文字違いで、言葉足らずで、もしかして私は今まであの人を傷つけたりしたのではないだろうか?


 街を見下ろす。


 この街の事はよく覚えている。


 もし、私だけで来ていればイズーニャの父を殺して終わりだっただろう。


 この世界に杜居くんと来てよかったと心から思う。


 次の転移も、その次の転移も、その次も、杜居くんはきっと来てくれる。


 それならどんな世界でも、きっと楽しい。


 どんな世界でもきっと、救える。


 ハル、ごめんね。


「……いつまでもこの毎日が続けばいいのに」


 全方位の視界の端に杜居くんとイズーニャが入ったので、膝を抱えて顔を(うず)めた。


 ほんの三ヶ月前までは、終わりの無い呪いの様だった毎日を、終わらないでと今は願う。

 

 ハル、ごめんね。私はなんて性格が悪く、なんてわがままなのだろう。


 


◇◇◇



 杜居流封印術九十九式を受けて少し経っても、イズーニャに変化は見られなかった。


 イズーニャは両手でギュッと俺にしがみついていたが、手を緩めて恐る恐る俺の顔を見た。


「……これから、死ぬのでしょうか?」


「どうかな。ちょっと痛いぞ」


 そういって串でイズーニャの白い手の甲を少し引っかく。


 白く小さい手に赤い引っかき傷が出来て、うっすらと血が滲む。


「今までは?」


「……治ってました」


 俺はわざとらしくがっくりと肩を落とす。


「イズーニャ。お前は死ぬよ、……あと70年くらい経ったらな」


 大きく二つと言ったが、俺の推測では99%こっちだと思った。『エリクシルの効果が封印されて、普通の身体になる』


 イズーニャはポロポロと子供みたいに泣き出して笑った。


「400歳超えちゃいますよ」


「500歳は超えられなくて残念だったな」


 そんな軽口を叩き合って、俺とイズーニャは笑い合った。


 傍らに置いておいたグラスで、思い出したように乾杯をする。


 何のことか知らずに楽団は楽しげな音楽を鳴らす。


「できればもう召喚はするなよ。大体一度喚んだら死ぬから」


「もう喚ぶ理由がありませんですし。……私はお二人を待ってたんですもの」


 不死者ならではの異界の勇者ガチャって感じか。


 8回目でSSR天戸うずめを引いたと考えるとかなりの轟運と言えるだろう。


 俺は334歳の少女の頭をよしよしと撫でる。


「一応釘刺しとくけど、もう不死じゃないんだからな?無茶するなよ」


「はいっ!」


 よかった。


 99%平気だとは思っていたけど、99%は100%じゃない。


 俺は城の上の天戸をチラッと見る。

 

 遠すぎて豆粒みたいに小さい。

 

「じゃあ天戸呼び戻すぞ」


 イズーニャは慌てて俺を制止した。


「あっ、待って!……300年ずっと好きだったって、言いましたよね?」


 そして、俺の肩に寄りかかった。


「……もう少しだけ二人で」


 俺は寄りかかるイズーニャの頭を撫でると、天戸を呼んだ。


「うーずめちゃーん」


「ええっ!?」


 驚いて俺からずり落ちるイズーニャ。

 

 十秒も経たずに空からふわりと天戸が舞い降りる。


「変な呼び方しないで。話は終わった?」


「あぁ、終わった」


「終わってません!」


 俺の言葉に被せるようにイズーニャは声を上げた。


 俺の腕にしがみつくイズーニャを見て、天戸は冷たい目で俺を見る。


「知ってるわ。ロリコンて言うんでしょ?何が巨乳派よ」


 俺は自由な左手を挙げて発言する。


「はい、我が主。よく見てくれ、俺からくっついているのならその汚名を受けるのもやむなしなのだが」


 天戸は腕を組んで俺を冷たい目で見下ろす。


「そう。一理だけあるわ。説明して」


「はいっ!私がします!」


「止めろよ、マジで。絶対(こじ)らせるから」


 天戸は嘲笑を浮かべ、俺を(そし)


「何を拗らせるの?ロリコンを?」


「だから、違うっつの」


 天戸はクスリと笑う。


「冗談よ」 

 

◇◇◇


 俺の説明を受けて、天戸は満足そうに頷いた。


 エリクシルの効果を封印して、不老不死では無くなり、ここからはみんなと同じように歳をとれると言うこと。


 そして、イズーニャの口から300年ずっと思い続けていた事が告げられた。



 天戸に連れられてきた城のてっぺん。


 見晴らしは良いが超怖い。


 風も強いのだが天戸のマフラーやスカートが凪いでいるのはきっと障壁だろう。


 いつもより月が近い……、と言うか月ではないし、いつもなんて無かった。


「どうするの?」


 不意に天戸が口を開く。


 こんな所まで連れてきた意図もわからない。


「どうするも何も、明日普通に竜退治だろ」


 天戸は大きくため息を吐いて横目で俺を見る。


「冷たいのね」


「お前に言われたかねぇよ」


「300年ずっとだよ?」


「それは俺じゃないだろ。『救ってくれた勇者様』をだろ」


「あなたじゃない」


 いまいち話が通じないやつだ。


「違う、俺じゃねぇ」


「……もしあなたが望むなら」


 天戸は何秒か間を置いて言葉をつなぐ。


「いつまでだってこの世界に残ってあげるけど」


 余りに頓狂な提案に眉をひそめる。


「はぁ?何言ってんのお前。そもそも望んでねぇだろ」


「だって……白き闇の皆だって、あの二人のために残ったじゃない。だから私だって……」


「あほか。使えない気を使うんじゃないよ。いいか?俺の目的は二つ。お前を救う、ハルの生きている世界を作る。それだけだ」


 天戸はため息を()いてニコリと微笑む。


「格好つけちゃって」


「つけてねぇ」


「……私を救ってくれるの?」


「ずっとそう言ってるだろ?」


 そう言うと天戸はニッコリと笑って、次の瞬間背中からフワリと空に落ちた。


 色々考えるよりも早く、俺も天戸を追って落ちた。


 何ができるわけでもないのに。


 不思議と怖くは無かった。


 天戸はマフラーを翼のように使い、フワリと落下速度を緩め、落下する俺の手を掴んだ。


「……なんのつもりっすかねぇ」



 天戸は上機嫌にニコニコしている。


「ふふ、さっき上ってて綺麗だったから」


「答えになってねぇ」


 天戸は両手で俺を掴むと、大きくマフラーを羽ばたかせてゆっくりと舞い降りた。



 街よりもずっと高いところを、気持ちのいい夜風が吹く。


 風の音以外は何も聞こえない。


 風の音と、マフラーの羽ばたく音以外は何も聞こえない。


「楽しいね」


「……酔ってんのか、お前」


「……酔ってるのはあなたでしょ?お酒、飲んだでしょ。お酒臭いわ」



 ――やぶ蛇だ。


 どうやら、天戸は鼻もいいらしい。


『ハルに言うわ』、と天戸は笑った。





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