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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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63話 答え合わせとある夏の日

◇◇◇


「それじゃ、うずめちゃん。朝ご飯出来たら呼ぶけど、……忙しかったら無視して良いからね」


「はいっ、おばさん。いつもごちそうさまです」


 ベッドに寝ころんだ俺の眼前で異言語の会話が繰り広げられているような気がする。異世界でも此処まで話が分からない事って余りない。


 御母堂様は上機嫌で階段を下りてキッチンに戻っていった。


 天戸は母上が持ってきた座布団を使って床に座っている。


 いつもなら椅子に座り高圧的に腕を組んでいるだろうに、特に何も言わずに大人しく座っている。


 うーむ、どうにも気持ちが悪い。


「……お前何しに来たんだよ」


「……どこから起きてたの?」


「どこからも何も最初から気絶とかしてないけど?ずっと普通に死んだフリしてただけだぞ」


 そう言うと、天戸は顔を真っ赤にして下を向いた。


「あ、そう」


 全く、やれやれだ。別にあの状況なら恥ずかしがることも有るまいに。そもそもこいつは兵士とか騎士じゃないんだし。……しょうがない、助け船を出してやろう。



「まぁ、お陰様で隙をつけたから結果OKだな。あ、種明かし聞く?」


 天戸は顔を上げると、俺の枕を引っ張って奪い取る。


「聞くに決まってるでしょ」


 部屋を見渡すと、ガチャガチャのカプセルがあったのでそれを手に取る。


「まず始めに予防線張らせて貰うけど、俺学者先生でも偉大な魔道士でもないから全ては憶測と推測でしかないという前提で聞いてくれ」


「何も言ってないのに言い訳から入るのね」


 段々天戸の調子が出てきたようで嬉しく思う。


「あいつの蘇生術って、多分俺の障壁じゃ防げないと思ったんだよ。アレだけの規模で蘇生術をあんな風に使う相手だぜ?天戸ならともかく、俺程度の力で防げるとは思えない。天戸もそう思うだろ?」


 枕を両手で持ちながらコクリと頷く天戸。


「で、ご存知封印術。滅竜の時に思ったんだけど、あの時の俺程度の封印で『三日』封印できるって巫女さんは言ったんだよ。覚えてる?封印できない、じゃ無くて『三日』封印できるって」


「一々細かい事言うわね、覚えてないわ。同じじゃないの?」


 大雑把過ぎてため息しか出ない。

 

「あほか、全然違うだろ。要するに、封印術の『効果』のベクトルは『威力』じゃなくて『期間』なわけだよ。どれだけ実力差があっても、封印自体は出来る。ただ、早く解けちゃいますよ?って事。ここまでいい?」


「いいわ、続けて」


 人の枕を両手で持って偉そうにする天戸うずめさん。


 茶化すとふて腐れるからやめておく。


「彼我の差に係わらず相手の力を無効にする……で、あの封印術ってそれを超圧縮して球にしてるよね?」


「杜居流封印術九十九式の事?」


 天戸が半笑いで言ったのが少し(かん)に障ったが大人な俺はスルーしてやる。そもそもかっこいいからOKだ。


「九十八式もあるの?」


「無い」


「百式は?」


「有る」


「続けて」


 視覚的補助の為にガチャのカプセルを天戸に見せる。


「まぁ、これが封印術だとして本来はこれの内側に捕まえる様なイメージなんだけど、これを裏表ひっくり返して『封印面を外側にして』内臓を覆ってたようなイメージ。伝わる?」


 重ねて言うが、推測と憶測の積み重ねなのでぶっつけ本番だった。ジ・デスの蘇生術を『防ぐ』のではなく、『無効』にしたのだ。


 天戸にも伝わったようで、枕を抱いて感心して頷く。


「……あの牛は財布が蘇生された結果って事ね」


 珍しく理解が良くて助かるな。念の為、買っておいた革製の財布。


「そ。ズボンの後ろポケットに入れてたからな。無効範囲外だ。今回は事前に相手のやり方がわかってたから助かったよ。墓場で同じ事やられてたら終わってた」


「そうよ。……でも、本当によかった。無事で」


 思い出してか天戸はまた泣きそうな顔になった。


「あのなぁ、泣きたいのはこっちだぞ?何が悲しくてお前のストリップショーなんて見させられなきゃならねーんだよ」


「黙れ!」


 真っ赤な顔で枕を投げつけてくる天戸うずめ。


 そうこうしていると階下から天戸を呼ぶ母親の声。


「うずめちゃ~ん、朝ごはんできたわよ~」


「はーい!今行きます」


 やれやれと言うべきか、とうとう俺の名前が呼ばれなくなってしまった事に一抹の不安を覚える。


 俺の朝食が用意されているのかどうかは、食卓につくまでわからない。言うなれば今はシュレディンガーの食卓と言うわけだ。使い方あってる?



◇◇◇


 

 さすがにわが母上は俺の朝食もキチンと用意していて下さった。


 天戸のおかずの方が量が多くて、一品多いのは何故なのだろうか?


 家を出ると、天戸もすぐに外に出る。


「おい、ずらせよ」


「嫌よ。別にいいじゃない」


 わざとらしくプイッとそっぽを向く天戸。


「あのなぁ。俺は何度同じ説明をしなきゃならないんだ?余計な噂を立てられると俺が困るんだよ」


「余計な噂って?」


 俺は首にヘッドフォンを装備して少し早足で歩くが、天戸は元々歩くのが早い。


「俺とお前が付き合ってるとかそう言うのだよ。そりゃなるだろ、毎朝うちから出てくれば」


「噂になると困るの?」


「困るから言ってんだよ」


 天戸は少しふて腐れた様子でポケットに手を入れて立ち止まる。


「じゃあ先に行けばいいでしょ」


「はいはい、言われなくても行きますよっと」


 ヘッドフォンを装着して歩く。


 どうにも後ろが気になるが、振り向いたら負けな気がする。こんなとき全方位視界があれば。


 気にしないようにそのまま歩き続けようとしたが、つい振り向いてしまった。


 天戸はいない。


『おい、どこ行った』


『ふん、どこだっていいでしょ。早く行きなよ、一人でさ』

 

 秒で返信が来た。


 何をふてくされていやがる、面倒くさいかまってちゃんめ。


 でも、考えてみると異世界であんな事があって、すぐ学校ってどうにもアレだよな。俺も麻痺していたのかもしれない。


『サボろうぜ』

 

『うん、ハルの所いこ』

 

 どうせ今日明日と行けば夏休みだ、少しくらいいいだろと勝手な言い訳を心にする。


 一応一目を気にしながら、俺達はハルの元に向かった。

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