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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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57話 蘇る死霊王

◇◇◇


「一応確認するわ。貴方が死霊王ジ・デスね?」


 周囲を無数の『生きる死体』に囲まれながら天戸は男に問う。


「……うるさいな、売女に名乗る名前なんて無いよ。……黙って死ね」


 男が舌を出しながら中指を立てると、死体たちは声にならぬうめき声をあげて一斉に天戸に襲い掛かる。


 次から次へ、何百かそれ以上の生きる死体が天戸に襲い掛かるのを見届けて男は勝ち誇った笑みを浮かべると、アビを抱き上げて手と足に治療術を掛ける。


「あぁ、全くクソ売女め。アビに何て事を……」


「……ジデス」


 心配そうな顔でジ・デスを見るアビを安心させるように笑いかけながら治療を続行する。


「大丈夫だ、アビ。問題なく元通りさ。あぁ、あのクソ女は何度でも生かしたままバラバラにしてやろう。それでも君の痛みの何万分の一にしかならないだろうが、何万回か繰り返せば伝わるだろう」


「……違うの、ジデス。後ろ……」


 アビが恐る恐るジ・デスの後ろを指差す。


「ははは、何だい。あ、そうかこの墓には何か有名な戦士がいたっけ?しまったな、あのクソ売女を簡単に殺しちゃったか」


 歯噛みをしながらジ・デスが振り返るとそこには死体の山とその中央に悠然と立つ天戸うずめがいた。

 

 厳密にはその横に俺もいるのだが、恐らくジ・デスの目には入っていないだろう。


 天戸の姿を見てジ・デスは幻でも見たかのように首を傾げる。


「んん?」


 その姿を見て馬鹿にしたように嘲笑を浮かべ、ポケットに手を入れる天戸。


「それが遺言ね?さよなら、死霊王」



 数百の死体を更に死体にした天戸のマフラーは死霊王ジ・デスを襲い両断した。



 天戸とジデスの間に立ち、天戸に背を向けて両手を広げて彼を庇ったアビと一緒に。



 アビは口から血を流しながらニッコリとジデスにほほ笑んだ。


「ジデス……またね」


「あぁ、アビ……」


 次の瞬間、アビの身体は高濃度の魔力を放ちながら爆発した。



 爆発はは墓地のほとんどを吹き飛ばし、砂煙が収まると天戸と俺だけがそこにいた。


 いつもの光の粒は現れない。


「……帰還が始まらない」


 天戸は大きくため息を吐くと、申し訳無さそうに俺を見た。


「ごめん、杜居くん。逃がしたみたい」



◇◇◇


 取り合えず兵舎に戻る。


 天戸が俺の手を拾っていてくれたので手は何とかなりそうだ。


「痛い、本当に痛いから。ちょっと、天戸さん?」


「痛いのはわかってる。でもしっかり固定しないとくっつかないと思うわ」


 いや、そんな接着剤みたいなもんじゃないから。


「助かったよ、天戸。拾っといてくれなかったらあの爆発で消し飛んでただろ。くっつけるのと再生は難易度が桁違いだから」


「ハルは簡単にやってたわ」


 俺の腕を縛りながら得意げに天戸は言った。


 ハルと俺を一緒にするな。相手は天才魔法少女だろ?大体何でお前が得意げなんだよ。


 処置を終えて、あの少女……ウラーユの事を聞いてみると、まだ目を覚まさずに眠っているらしい。


 幸いと言うか、彼女の家族からはまだ何もないそうだ。


「外れじゃない」


 またまた天戸さんが得意げな顔で俺を見てきた。


 あくまでもただの予想だから別にいいだろ。でも、『有力者の娘』だから蘇らせた以外にあの子だけを蘇らせる理由は無いと思うんだけど。


 右手は添え木をして布で首から吊っているので、必然全ての動作を左手で行わなければならない。


 利き手が使えないと大変だ、ドアノブ一つ捻るのも一苦労だ。


 別に天戸に責任があるはずはないんだけれど、天戸はいつもと違って俺のすぐ横を歩き、ドアを開けたり色々してくれる。ふはは、何だか新鮮だな。


「喉が渇いた」


 俺がそう言うと、白い目で睨まれる。


「調子に乗らないで」


 ――確かに、調子に乗りすぎた。



「あの子……ウラーユだっけ?あの子が起きたら任せてもらえません?」


 兵舎の責任者にそういう俺を天戸も驚いた目で見た。


 蘇生者は処分との国の指針があるので、この兵舎の責任者では決められない事なんか百も承知だ。だが、確認の体を取っただけのただの強制なので断る余地などない。


「わかってると思いますけど、断れば脅威が二つになると思ってください。まぁ、国にはそのまま伝えて貰えれば伝わると思いますよ。それ以外俺達からの要求は一切出さないんで。きっちりジ・デスを潰して帰るのでご安心を、ははは」


 兵舎のボスは一応悩んだ振りをしたものの了承してくれた。


 聞いた話だと、彼はこの町の生まれでずっとこの町で働いているそうだ。


 つまり、ウラーユの事も生前から知っているのだ。そりゃ殺したくないよな。


 それを殺せと指示を出せば、国と町との関係は益々悪化する。


 ジ・デスの国も、どっちも嫌な感じだよ。


 

 当面この子が起きるまでここにいる事になる。


「……どういう心境の変化?」


 椅子に座る俺の前で、天戸は腕を組んで言った。


「別に。よく見ると好みのタイプだったから」


 ほんの軽い冗談のつもりだったのだが、一瞬で露骨に機嫌が悪くなる天戸さん。


「あっそう。あぁいう子が好みなの。へぇ、そう。わかったわ、戻ったらハルに言うわ」


 何でもかんでもハルに言うなよ、チクリ魔め。


「冗談だよ」


「あ、そう。随分つまらない冗談ね」


 プイッとそっぽを向いてしまった。


「例えばさ、俺動物って割りと好きなんだけどさ」


 それを聞いて天戸はまた俺を見る。全方位見えているはずなのに忙しいやつだ。


「知ってる。それが?」


「世界中で動物は死にまくってるし、殺されまくってるよな。別にその事はある程度しょうがないって思うし、どうしょうもないって思ってる。……でも、目の前で殺されそうになってたら助けてもいいだろって。全部救えないから、全部変えられないから見殺しにするってのは違うだろって思っただけ」


 天戸は何も言わず、俺の青臭い言葉を聞いてくれた。


 あれだな、自分の心理や心境を話すのって恥ずかしいな。


 天戸が余りに何も言わないので、余計気恥ずかしい。


「おい、何か言えよ。恥ずかしいだろ」


「そう?平気よ、何も恥ずかしくないわ」


 天戸は腕を組んだままニコリと笑った。


 ウラーユが起きたら話をしよう。


 彼女がどう望むのかで方向は変わってくるよな。



◇◇◇

 

 山間の廃城、死霊王ジ・デスの居城。


「ふぅ~、全く。クソクソクソクソクソクソクソ売女め」


 ジデスは全裸で城を歩く。


 ひんやりとした冷気が漂う部屋の扉を開ける。


 そこには氷付けの人間の部位がたくさん並んでいる。


「あぁ……アビ。三日は会えないね、寂しいよ。早く元気になっておくれ」


 そう呟き、その中から手を一つ取り出すと蘇生魔法を掛ける。


 蘇生術を極めた『死霊王』ジ・デス。時間は掛かるが、彼は身体の一部からの完全蘇生が可能なのだ――。

 

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