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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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51話 きっと覚えていないけど

◇◇◇


 ――目が冷めると、見慣れた自室だった。


 あの日以来二度目の強制帰還術。身体を起こすと疲労感がすごい、あの日はそれどころではなかったので何も感じなかったが、きっと身体への負担がすごいのではないかと思う。


 異次元ポケットを開けてスマホを取り出し、杜居伊織への生存確認メッセージを送る。


『おはよ』


『おう』


 写真を確認すると、一番新しい写真は白き闇達と金色の鬼と撮った写真。


 そして、ドレスアップした天戸と杜居が映っている写真。


 少し眺めて口元が緩んでいる事に気が付いて頬を触る。


 白き闇の写真と一緒に杜居に送信する。


『はい、約束だから』


『おー、サンキュー』


 ピロンと音が鳴り、続けて杜居からメッセージが来る。


『何だっけ?同級生の名前』


 天戸は少し首を傾げた後でメッセージを送る。


『合ってるかわからないけど、話をしたのは渕向君の事よ』


『あぁ、そう言ってたな。了解』


 天戸はため息を吐いて背伸びをすると、本棚に目をやり小学校の卒業アルバムを手に取る。


 パラパラとめくる。


 1組に天戸うずめ、淡島瑞奈、杜居伊織がいて、渕向君とやらもいる。


 高天原ハルはいない。


 高天原ハルは6年生に進級していないから。


 クラス写真の後ろに1年生からの色々な写真があり、そこにはちらほらとハルの姿があった。


 ハルはいつも笑顔で、いつも杜居伊織と一緒に映っていた。





◇◇◇



「おーい、ブス。なにやってんだよ」


 小学一年の時、渕向くんはよくこんな風に私をからかってきた。


「……うるさいな、あっちいってよ」


 大人しく1人で本を読んでいるような子供だったけど、いじめられていたわけじゃない。でも、彼だけはことあるごとに私にちょっかいを出してきた。


『ブッチはきっとうーちゃんの事が好きなんだよ』と、後にハルは言っていた。ブッチというのは渕向くんのあだ名だ。


 ハルと杜居君とは幼稚園も一緒だったけど、特に仲が良かったわけではない。


 物心もついて間も無い様な幼児なのに、仲良くなったりならなかったり。今から考えると少し不思議ではあるけれど、子供だって人間だって言う事だろう。 好き嫌いも相性もある。

 

 とにかく、私はハルや杜居君とずっと同じ幼稚園だったにも関わらず特に仲がいいわけでは無かった。お互いに顔は知っている程度。


「何の本読んでるんだよー?面白いか?」


「だからあっち行ってってば、しつこいよ」

「うっせぇな、ブースっ」


 いつもちょっかいを出してきてはいたのだが、その日は確かに少ししつこかったと思う。


「ねぇねぇ、伊織。うずめちゃんて別にブスじゃなくない?」

「知らねーよ、俺に聞くな」


 少し離れた席でハルと杜居君がそんな会話をしているのが耳に入ったと思ったら、ハルはぴょこぴょことこっちに近づいてきた。


「ねぇねぇ、ブッチ。うずめちゃんて別にブスじゃなくない?」


 ハルに顔を覗き込まれて顔を逸らす渕向くん。


「ぶっ……ブスだろ」

「へぇ~、贅沢だねぇ」


 ハルは私の顔をまじまじと眺める。


 私もブッチみたいに目を逸らしてしまったが、ハルは恥ずかしくないのだろうか?


「じゃあさ!私とうずめちゃんどっちがブス?」


 ハルは自分を指差し、楽しそうにおかしな言葉を口にした。


「……天戸の方がブスに決まってるだろ」


 ハルと比べれば誰だってそうだよ、と比べられた私でさえも思った。


「あはは、伊織。ブッチが私の事かわいいって」


「はっ!?ちげーよ!かわいいなんて言ってねーだろ、ブス!」


 杜居君は一番後ろの席で、椅子の前足を浮かせながら少し不機嫌そうにこっちを見ていた。――ハルをブスと言われて明らかに頭に来ているのだ。


「ブスブスうっせぇわ。じゃあどっちの方がブスなんだよ」


 睨むように杜居くんが言うと、渕向君は困った様子で少し考える。


 私をブスと言えばハルの方が可愛いと言われ、ハルをブスと言えば私の方が可愛いと言っていると思われるのだから、どっちも答えられないのだろう。



「どっ……どっちも同じくらいだよ!ブスブスブス!」


 そう言って渕向君は走って廊下に出て行ったが、すぐに『廊下は走らない!』と先生の声が聞こえたので、三人で笑ってしまった。



「ハルと同じくらいって事は別にブスって程じゃないだろ」


 杜居君の言葉にハルはニコニコして顔を見る。


「あれ?じゃあ私かわいいって事?」


「とは言ってねぇ」


「……高天原(たかまがはら)さんは可愛いよ」


 私がそう言うと杜居くんは白い目で私を見た。


「え、自分も同じくらい可愛いって言ってんの?」


「ちっ……違う!そうじゃなくって」


「あはは、別にいいじゃん。うーちゃん可愛いもん」


 うーちゃん。この時から、今に至るまでずっとハルは私をこう呼んだ。ハルだけが、私をそう呼んだ。


高天原(たかまがはら)って長いでしょ?ハルでいいよ。私もうーちゃんって呼ぶから。帰り伊織のうちおいでよ。漫画もゲームもいっぱいあるよ」


「おい、勝手に呼ぶな」



 ――その日から、少しずつ二人と仲良くなった事を今でも覚えている。


 きっと、杜居くんは覚えていないだろうけれど。



 懐かしい気分に浸りながら杜居くんにメッセージを送ってみる。

 

『あの時さ、ハルの事ブスって言われたから怒ってたんでしょ?』


 すると、すぐに返信が来る。


『急にあの時とか言われれても何の事だかわかんねぇよ』『つーか、ハルをブスとかいうやついんの?鏡見ろって話じゃねぇ?』

『じゃあ私は?』

 送信すると返事が途絶える。

『ねぇ』

『返事は?』

『電波悪い?』

『ねぇ』

『ねぇ』

『ねぇ』


 意地で連打してみる。すると、ようやく私のスマホがピロンと鳴る。

『鏡にでも聞いてみろよ。この世で一番美しいのは誰?って』

『私魔女じゃないんですけど』


 ベッドに寝転がり、スマホを眺めながら私は一人笑う。


 あなたはきっと覚えていないだろうけれど、あの日の言葉も、きっと私を救ってくれた言葉だったんだよ。

 

 



 

 

 






 


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