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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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42話 白き闇と音波兵器

◇◇◇

 白き闇が居城とするガルガンド城は、元々金色の鬼に滅ぼされた国だ。


 大陸中央の平野に位置して、交易の要衝でもあった。高くそびえる城壁は要塞の様相を呈し、厳格な入国管理と合わせて行商人にも国民にも確かな安全と安心を保障してきた。



 取りあえず、平野の中央に高くそびえる城壁を目視できる距離に来た。


 洞窟や山の上と違い見通しがとても良い、相手から見てもきっとそれは同様だろう。


 俺は目を細めて城……、と言うか壁を見る。


「さてさて、どうしますかね。このまま近づいて平気かな?」


 天戸は絨毯をしまいながら俺を見ずに答える。


「ある程度以上の魔法の使い手や上級魔族ならこの平野全体が射程にあると思うわ。セオリーで言えば雷魔法ね、速度が速いもの」


 だよなぁ、遮蔽物が無さ過ぎる。


「天戸だったらどうやって撃退する?」


「ん、前使った剣覚えてない?無限剣って言う武器と術のあいの子みたいなの」


 少し考えて思い出す。


「あー、確か降魔王(ごうまおう)の時のやつか。千剣展開……とかって」


「そ、それ。あれも目視範囲まで飛ばせるから。あの時は取りあえず千にしたけど全然もっといけるわ」


 苦笑いしか出ない。


 俺にもそう言うチート武器の一つでもあればもう少し戦力になれるのに。


「じ、じゃあ……仮に勇者天戸があの城を治めていて、周りを五万の兵に囲まれたら?」


 天戸はきょとんとした顔で俺を見た。


「えっ、囲むって?10キロ以上遠くなら流石に囲まれちゃうかもね」


 話をするのも馬鹿らしや。要するに囲むほど近付けないと言うことだ。半径10キロを五万人で囲むとどのくらいの密度になるのだろう。誰か頭のいい人に計算してもらいたい。


「まぁ、さておき。過大に見て白き闇が天戸クラスだと仮定すると迂闊に近づくのは危険だよな」


「ん、呼び掛けてみようか?」


 この距離を!?と、思ったけどできないことを言うやつじゃない、きっとできるんだろう。


「あ、じゃあそれで」


 俺が言うと天戸は、んんっと咳払いをして、深呼吸をする。


 そして、思い出したように俺を振り返り収納を開ける。


「なっ、中にいて。鼓膜破れるじゃ済まないわよ」


 何故だか少し赤い顔で天戸は物騒な事を言った。だが、どんだけ馬鹿でかい声なのか少し興味はあるので拒否する。


「障壁張るから平気だぞ?別にお前の大声なんてレアなもんが聞けるなら鼓膜くらいくれてやらんこともない」


 怖いもの見たさのその言葉で、天戸はまた少し顔を赤くして城を向く。そんなに大声聞かれるの恥ずかしいかね?


「……知らない。勝手にすれば」


 とは言うものの、出来れば鼓膜は守りたい。


 天戸の真横でなく、百メートル程後方に少し距離を取る。耳のあたりに手を準備しつつ、障壁を張る。


「いいぞー」


 天戸は頷いて、再度深呼吸をする。





「すっ……」



 俺の鼓膜が捉えられたのはその音だけだった。


 俺の全力の障壁は薄氷のようにパリンと砕け散り、耳からは生暖かい何かが流れ落ち、気が付くと視界も赤くなる。


 咄嗟に耳を塞いだが、脳自体が直接揺さぶられたようにグワングワンと揺れ響き、気が付くと天戸の方を見たまま地面に伏していた。


 視界の先では少し恥ずかしそうな顔で振り返った天戸が急に心配そうな顔に変わって俺に駆け寄ってきた。


 倒れる俺を抱きかかえて何かを言っているが全く聞こえない。取りあえず両耳に全力で治癒魔法を施す。脳震盪はだいぶ治ってきた。


 

 天戸は泣きそうな顔で俺の目耳の周りの血を拭っている。申し訳ねぇ。何か言っているが、まだ聞こえない。


「……ごめんね!ごめんね!」


 何分かして鼓膜が復活した。天戸はずっと俺に謝り続けていたらしい。


 天戸は忠告をしてくれたので、悪いのはどう考えても俺なのだが、まだ治らないふりをしていようと思う。


「あ……天戸、まだ治らないけど気にすんな、お前は忠告してくれたんだから」


「ううん、でももっとしっかり伝えていれば……ごめんね。ごめん、杜居くん」


 うおぉ、何だこの罪悪感は。


「あー、ごめん。嘘。もう治ってる」


 手を挙げてそう言うと、天戸は顔を赤くして勢いよく立ち上がったので、俺は地面に落とされる。


「いてっ」


「馬鹿じゃないの!こんな時に嘘つかないでよ!ばか!」


「……つっても、実際にダメージを受けたのは事実だしなぁ」


 それにしてもものすごい威力だった。5万人くらいの一般兵なら、声だけで制圧できるんじゃないか?

 

「あ、誰か出てきた」


 天戸は不意に城を振り返る。さすがの全方位視界。どういう原理なのだろう。


 何人かに止められながら、1人の中年の男がゆっくりと門を開けて出てくる。


 俺達と目が合いニッコリと微笑み、近付いてくる。


「どう思う?」


「此処まで来てくれるなら待ってようぜ」


 俺の提案に天戸は賛成し、男が近付いてくるのを待つことにする。


 距離にするとどのくらいだろうか?遮蔽物が無さ過ぎるのと、城壁がデカすぎるので距離感が掴みづらい。



 何分か待って、男は俺達から10メートル程の距離まで到着した。


 男が両手を挙げたので、俺も同様に両手を挙げるが天戸はポケット手を入れたままだ。


「おい、天戸」


「イヤよ。だって無駄だもの。ただのポーズでしょ、こんなの。私は話をしにきたの」


 ぐぬ、空気の読めないやつだな。


 天戸の言葉に男は笑う。


「お嬢さんの言うとおりだ。両手をあげていても使える武器も術式も無数にある。僕も話をしに来たんだ。場所はどうする?城の中でも、ここでもいい」


 天戸は収納を開くと俺にテーブルセットを出すように促す。


「杜居くん、テーブルセット出して。ここで良いわ」


「用心深いお嬢さんだ。君が異界の勇者だね?」


 テーブルセットを設置して、缶の紅茶を並べる。


 天戸はマフラーで椅子を二脚引くと、男に着席を促す。


「私は天戸うずめ、異界の勇者よ。彼は杜居伊織」


 男は缶ジュースを珍しそうに眺めた後で自己紹介をする。


「ご丁寧にどうも。僕はギルティ、『元』異界の勇者……、今は白き闇とでも呼んでくれ」


 俺は缶ジュースを開けてあげて、毒味がてら自分の分を飲む。


「粗茶ですが」


 天戸はぷっと少し笑う。


「それじゃ、話をしましょう」


 俺と天戸と白き闇は、何もない平野で缶ジュースを飲みながらテーブルを囲んだ。



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