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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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37話 神様の能力

 ――5年振りの夏祭りは楽しかった。


 お面で顔を隠して視界の悪い俺の服をつまんで天戸は先導した。


「おい、速ぇよ」


「じゃあ取れば良いじゃない、お面」


 そんなやりとりをしながら俺は人目に付かない場所を探す。


「……変な事するつもりじゃないでしょうね?」


『浴衣が似合う体型の』天戸うずめさんはジトッとした目で俺を見る。何故未だにこう言うことを言うのだろう?


「奢ってもらった焼きそばと焼き鳥を食べる事が変な事に該当するならそうなるな」


 俺の言葉に天戸は呆れてため息を吐いたが、きっと天戸も焼きそばを食べたかったのだろう。人目につかない場所を探してくれた。


 出店が並ぶ広場?から少し入った所にある小さな社の傍だった。


 狐の狛犬……狛狐とでも言うのか?があるので、お稲荷さんなのだろうか。


「ちょっと持ってて」


 天戸に焼きそばを渡してお面を外し、財布を取り出す。


 少し迷ったが、500円玉があったので賽銭箱に投入してお参りをする。



 二礼二拍手一礼だっけ?パンパンと手を打ち、お参りをする。



 お参りを終えると、天戸が手に持った荷物を俺に差し出して少し笑っている。


「神頼みの趣味があるなんて意外ね」


「願えば叶うなんて幼稚な事を思ってるつもりはねぇよ」


 天戸は謎の袋から財布を取り出して小銭を探す。


「そう。じゃあ何をお願いしたの?」


 そして、小銭を入れてお参りをする。



 振り返った天戸に逆に質問をする。


「お前こそ何を神頼みしたんだよ」


「決まってるでしょ?『ハルが生きている未来を作れますように』って」


「うん、いいね。すごくいい願い事だと思うぞ。まるでお花畑のようだ」


 ムッとした顔で俺を見る天戸さん。


「馬鹿にしてるでしょ」


 そりゃ、勿論。さすがにそのくらいは伝わったか。よかった。


「そりゃするだろ。それを作るのは俺達の仕事だ」


 天戸が『ぐぬっ』とアテレコをしたくなる顔をした後で俺が買ったお面で顔を隠す。


「じゃああなたは何を願ったのよ」


「ん?別の世界の天戸達に会えますように、だよ」


 お面を被った天戸が言葉を止めたので、俺は話を続ける。


「ここで言うのもあれだけど、神様に願いを叶える力なんかねーだろ」


「じゃあ何でお願いしたのよ。あなただってしたでしょ」


「俺は神様の能力ってきっと確率操作だと思うんだよ。それも精々1パーセント上下させるくらいのさ。……それで十分だろ?0%でなければ――、1%……いや、0.1%でも可能性があれば、俺達は無限に繰り返すんだから。ははは、1000回やれば100%だ」


 そう言うと天戸は笑った。


「確率って足し算じゃないんだけど」


 天戸は再度小銭を出して俺に荷物を渡すと、またお参りをした。


 多分、俺と同じ願い事。


「悔しいけど、納得。ハルを助けるのは私達の仕事だもんね」


 荷物を俺から受け取りながら、お面を見て顔色が変わる天戸。


「……そっ、そのお面。被らないで」


「はぁ?何で……」


 言いながら俺も察した。


 俺が被っていたお面を、天戸も被った。


 天戸は少し顔を赤くして手を伸ばす。

「処分するわ。返しなさい」


「返せって……俺が500円で買ったんだけど」


「なんに使うつもりなのよ……!」


 赤い顔でわけの訳のわからない事をのたまう天戸さん。


「とりあえず、焼きそば食おうぜ。腹減ったよ」


 お面と引換よ、と天戸は理不尽な事を言った。



◇◇◇


「意外に楽しかったわ」


 今日の俺への目覚めのお言葉は意外にもお褒めの言葉だった。


 背伸びをしながら欠伸のコンボを繰り出す。


「意外に、な。ガキの頃以来だよ。昔はもっと広く感じたけどな」


「ふふ、そんなものよ。センチメンタルに浸りたいなら、来年も付き合ってあげるけど」


「気が向いたらな」


 さて、やってきました375回目の世界。


 場所は薄暗い牢屋の中だ。


 天戸は腕を組んでため息を吐く。

「このパターンは初めてね」


 天戸も初めてのパターン。375回目なので、0.3%以下のレアケースというわけか。そう考えると、1%って中々大きい確率に見えてくるな。


「どういう状況なんだろうな?とりま呼びかけてみるか?牢屋に召喚者がいるとかかな」


 大きく息を吸い込んで声を張り上げる。

「すいませ~ん、異界の勇者で~す。誰か()びました~?」


「何それ」

 天戸は口を押さえて笑う。


 俺の声の反響が収まって少しして、何部屋か離れた所から声がした。

「勇者様なのですか!?」


「おう、何用だ?」


「あなたもう少し威厳とかさ……」


「あ、天戸のアレはやっぱりそういう演出だったんだ?」


「黙って」


 図星だったらしい。『勇者』という役を演じるって事か。基本的に天戸はそういうところがあるよな。そんなの気にしなければいいのにと思う。


 檻に囚われていたのは亡国の王女様らしい。世紀末爬王(はおう)とやらに国が襲われて、さらわれたそうだ。


「てことは、ターゲットはこの上?」

 上を指差すと、天戸は頷いた。


「たぶんね。王女様、いくつか質問していい?」


 大陸の名前や、年号など。ハルと天戸が訪れた世界に出てきた単語を照合する。そのどれも当てはまらなかったので、全く新たな世界なのだろうと判断する。


「もう大丈夫よ、王女様。後は勇者様が助けてくれるわ。ね?」


 おい、何て無茶振りだよ。と、思ったがそもそも俺は勇者ではない。天戸が倒すという意味では間違っていない。


「そうだな。ちょっと試したいことあるんだよな」


「……また何か思い付いたの?」


 と言ってもそんなに大それた事じゃない。滅竜の封印術の効果を試したいだけだ。


「私じゃなくて、杜居君がやるの?」


「お前はこないだやっただろ?俺のを試したいんだよ」


「……せめて100年は封じてよね。行こうか」


 効率を言うなら、訪れる全ての世界で時間ギリギリまで滞在して、全ての知識と技術を得るべきなんだろうと思う。


 でも、俺達は神様でも勇者でも無い只の高校生、……幼馴染を助けたいだけの高校生だ。


 不遜にも、色々な事を試しながら、世界を救う。


 もしかすると、傍目には世界をおもちゃにしているようにも映るかもしれない。



 別に構わない、ハルを助けられるなら何だっていい。きっと、天戸も同じなんだろう。


◇◇◇


 そのまま階上をぶち抜いて爬王のところに行こうと思ったが、俺達が戻った後で王女様1人をここに残すのも忍びないので、街に送る事にした。


「珍しく人間的な判断をするのね。相手が女性だから?」


 絨毯の上で相変わらず俺に悪態をつく勇者様。パワハラですよ。


「そうだな」


 乗ってみると露骨に不機嫌な顔をした。


 城までどのくらいの距離があるのか、とりあえず最寄の街でいいか。



「せっかくだから、今日は情報集めにしようぜ。爬王は明日でいいか?」


「そうね」


「すみません……、私の為に」


 いやいや、置いていけないでしょ。



 俺は絨毯の上で封印術の練習をする。


 魔導障壁を何百層も重ねて作る例のあれだ。天戸のアドバイスで折りたたみ式に変えたら500層くらいまで作れるようになった。


 手の平にテニスボール大の封印術を乗せ、少し考えた後で消した。



 

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