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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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17話 天啓

◇◇◇

瑞奈(みずな)が良い子だからって変な事は絶対にしないでよね」


 目が覚めた異世界で、天戸はきつく俺に釘を刺してきた。


「変な事ってなんだよ。具体的に禁止事項出せっつーの」

 俺の反論にイラっと来た様子で天戸は少し声を大きくする。


「言わなくてもわかるでしょ?主にセクハラよ。どうせ今日も胸ばっかり見てたんでしょ?変態」

「え、何で胸見るの?その発想に至った理由が知りたいんですけど、天戸さん」


 天戸は口元をマフラーで隠してプイッとそっぽを向いた。

「ばーか、うるさい」


 まるで小学生のような反論に思わずクスリとする。これが学力テスト学年一位の語彙か。


 何周か世界を救ってみて気が付いたことがある。召喚される場合は『明確な敵』がいることがほとんどだと言う事だ。……まぁ、考えてみればそうか。何もわからないのに助けにきてってのはあまりないだろう。

『あぁ、異世界の勇者よ。南半球のオゾンホールが広がっているのです。どうか救いの手を……』……とはなりづらいだろう。神にでも頼むといい。仕組みはわからないが助かる。さて、今度は何だっけ?降魔王(ごうまおう)だっけ。


 降魔王はなかなか凝った所にいて、RPG初心者の天戸では数年かかりそうな雰囲気を感じた。

「……面倒ね。目の前にいてくれれば一瞬で細切れにできるのに」

「いい加減その脳筋発想止めた方がいいぞ。……あのさ、今気になったんだけどお前が強いの?それとも戦乙女の襟巻き(ヴァルキリーマフラー)が強いの?」


 俺の問いに一度振り返るが、すぐにまた前を向く。全方位視界なのに、何故振り返る。

「どっちもよ。便利だから使っているだけ。誰だって虫を潰すのは素手じゃない方がいいでしょ?」

「……あぁ、そうっすね」


◇◇◇

 んー、何だろう。異世界ファンタジーの様な世界。本来ならすっげーワクワクするんだろうと思う。


 俺は天戸の後ろに隠れながら戦乙女の襟巻き(ヴァルキリーマフラー)乱舞が魔物たちをなぎ倒すのを見守る。あっという間に30体くらいの魔物は肉塊に変わる。


「さ、行こ」

 全方位視界の天戸は振り返らずに俺に言う。

 あー、わかった。昔友達に借りたゲームのチートデータ使った時と同じ感じだ。初見プレイ時はあんなに楽しかったのに、最初から全スキル解放とかお金無限とかなってると途端につまらなくなったよな。あれだ。チートデータ、ダメ絶対。


「今後はもう油断しないから。安心してて」

 冥王戦の反省だろう。と言っても俺がお荷物なだけなのが全ての原因なのだが。『無限に世界を救い続ける天戸を救う』なんてカッコつけた事を言ったが、今の所まだ具体的な手だては浮かばない。


 魔物の群れを全滅させて王城に入る。この城に降魔王の城へと続く鍵があると聞き助けに来たのだ。さすがの天戸も物理的に行えない行為は行えない。万能チートでなく只の物理チートだな。砕けるものは何でも砕ける。


「おぉ、勇者様!九死に一生の思いです。……どうか降魔王を倒し、世界を救ってください」

 可愛い巨乳のお姫様が城の奥でずっと守っていた宝珠をくれた。これが無いと降魔王の城が現れないらしい。

「うん、ありがと」


 わずか六文字で王女の思いを受けて天戸はマフラーで宝珠を受け取る。

「行こ」


 もうここに用は無いとばかりにさっさと踵を返して城を出ようとする天戸を引き留める王女様。

「勇者様!お待ちください!いくら勇者様がお強くても……降魔王の力は強大です!」

「大丈夫。杜居君、早く」


 本当に天戸はこっちの世界の人たちに冷たい。現実世界では無駄に愛想を振りまいていると言うのに。俺は王女様のフォローをする。

「あっ、あのですね王女様。勇者様は力の対価としてコミュ(りょく)を失ってましてね。話は代わりに俺が伺いますんで」


 おいていくよー、と聞こえたが無視して王女様の話を聞く。王女様は天戸の塩対応に若干涙目だ。

「……そうでしたか。力の代わりに……」

「あはは、そうなんすよ。でも実力は確かなんで安心して下さい。降魔王でも冥王でも何でもワンパンっすから」


 俺がそう言うと王女は悲しそうな顔で首を横に振る。遠くから杜居くーん、と聞こえてくる。

「……過去に幾度となく世界を滅ぼした降魔王の力を甘く見てはなりません」

「大丈夫っすよ。あいつだって300回以上世界救ってますから」

 それを聞いて王女は驚いた顔をする。

「そんなに!?……では、この秘薬は……必要ありませんか?」


 泣きそうな顔でガラス瓶を差し出してきた王女。

「えっ、あぁ貰っとくっす。あれすか?今飲んでいい感じですか?」

「ダメです!……その秘薬は、飲むと体の底から魔力が湧き出てくる対降魔王用の最終決戦薬です。その代わり……服用者はその後速やかに命を落とす」


 俺は慌てて瓶の蓋を閉める。

「あっぶねぇ!また犬死するところだった!」


 シュルリとマフラーが伸びてきて俺の体を巻き取る。

「えっ、こんなに伸びるの!?」

 そのまま天戸の下に引き寄せられる俺に別れを告げる王女。

「勇者様方!ご武運を!」


◇◇◇

 城を出て南東へ絨毯で向かう。エアーズロックの様な一枚岩の上で宝珠をかざすと幻術が解けて城が現れるそうな。


 天戸はやはり不機嫌だ。何度呼んでも俺が来なかったからか。

「随分おしゃべり弾むんだね、こっちの世界だと」

「いやいや、お前が話さなさ過ぎるんだよ。まだ話してる途中だったろ」


「……だってすぐ終わっちゃうじゃん。仲良くなっても二度と会えないんだしさ」

 あぁ、なるほど。それであのNPC扱いか。まぁ場所が逆なだけでやっている事は俺と同じようなもんか。別にいいや。


「まぁ、天戸はそれでいいか。コミュ力を犠牲にして力を得たって言ったら王女様納得してたぜ」

 そう言うと天戸は驚いた顔で俺を振り向いた。

「はぁ!?勝手な事言わないでよ、後世に記されたらどうするの!?」

「はは、いいだろ、もう会わないなら」


 そういう問題じゃない!と天戸は口を膨らませたが、そうこうするうちに目的に到着した。


 宝珠を使い、城を出すと後はお決まりのパワープレイで降魔王の部屋までたどり着く。


 扉を開ける前に天戸は収納を開けていくつか俺に装備を渡す。

「あなたの持っているものは戻ると無くなっちゃうから、光ったらすぐ返してね」

 そう言って明らかに何等かの伝説に記されていそうなマントと盾と杖を渡してきた。

「これを持って私の後方にいて。後ろには一切被弾させないから。もう油断も慢心も無いわ、一瞬で決める」


 天戸は決意を込めた顔でそう言った。いつも淡々と事務的に戦っていたのに、少し新鮮だ。俺は頷くことしかできない。


「行こ」

 天戸は男らしくバンと大きな音を立てて扉をぶち壊す。

 すると、そこには降魔王がいた。五対の手、四面の顔、手にはそれぞれ仏具を思わせる武器を持っていて、一つの手には炎を持つ。目は顔によって数は違い、正面の顔は4つだが、他はまちまちだ。下半身は毛の生えた馬の様な雰囲気であり、一目で強いだろう事は伺わせられる。


 天戸は左手を右肩まで引いてから真っすぐと左肩の高さまで手を伸ばす。

「顕現・無限剣」

 瞬間、ずらっと無数の光の剣が天戸の前方に現れる。


『ははははは』と降魔王の笑い声が部屋を揺らす中で天戸はゆっくりと右手を上から下に振り下ろした。

「さよなら」


 すると剣の全てが間断無く降魔王に襲い掛かる。


 天戸が左手を真横に伸ばしている間、剣は無限に生まれ続けて降魔王に襲い掛かる。断末魔の様な降魔王の叫び声は千を遥かに超える剣の着弾音にかき消された。


 何十秒経っても天戸は攻撃を止めない。額から汗が垂れて、床に落ちる。……恐らくもう肉片も残っていないだろうと思うが。


 少しして体が光りだした所で天戸はようやく左手を下ろした。

「おつかれ。装備返して」


 何となくの体感だとこの時間は1分強くらいか。急いで装備を脱いでいると王女から渡された小瓶を思い出す。

『……その秘薬は、飲むと体の底から魔力が湧き出てくる対降魔王用の最終決戦薬です。その代わり……服用者はその後速やかに命を落とす』


 身体に電流が走ったような感覚だった。天啓とはこういうことを言うのか。


 俺はおもむろに瓶の蓋を開けると躊躇なくその液体を飲み干した。


 次の瞬間天戸の表情が変わり俺の視界は赤く染まった。

「杜居くん!?……何を飲んだの!」


 天戸が駆け寄るが、俺は口からも血を吐いた。身体中が軋みをあげて骨と言う骨が全て抜かれるような感覚を覚える。

「杜居くん!」


◇◇◇

 急に視界がクリアになった。


 クリアに見える蛍光灯。――そして、身体の底から湧き上がる力!試してみないとわからないが……力も、魔力も跳ね上がっているだろう事が伺える。


 ピロンとメッセージが鳴る。

『おはよ。説明して』


 ――どう説明をするべきか……。


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