表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安価で俺は変わろうと思う  作者: aaa168(スリーエー)
月曜15時、タイムリープ。
89/166

月曜15時、タイムリープ。









「桃先輩が……」

「だ、大丈夫なんでしょうか」

「……後で連絡してみる。桃だから大丈夫だと思うけど――」



ハンバーガーショップ。

彼女が居なくなったその場所。

初音さんのチームメイトが、焦った様子で話し合っている。



「っていうか、あの人は?」

「誰なんでしょうか」

「……もしかして、桃の……」



そんな声。

逃げるように机のゴミを捨て――店内から飛び出す。


「…………」


項垂れる。

ハンバーガーショップ。

14時、何も出来なかった。


無力感が俺を襲う。

彼女の声が降りかかる。



《――「ち、違います!」――》



あの言葉の意味は、嫌でも分かるよ。

巻き込みたくないんだ。俺の事を。


そして――その目から、どうにかするという熱意を感じた。


……だから。

信じても、良いんじゃないんだろうか。

弱気な自分がそう叫ぶ。



「……」



ま、それでも。

尾行するぐらいは許されるだろう。


趣味は隠密だ、遠く向こうに目をやって。

歩く三人の行方を追いながら辿り着く。

『カラオケ』だった。



「……入ったか」



入口。

彼女達が入っていったそこで、俺はまた立ち尽くす。


……何も出来やしない。

これ以上追えば、流石にバレる。

尾行したところでどうしようもない。



「待とう……」



分かっている。

無駄に今、初音さんに接触したら被害を受けるのは彼女だ。


分かっている――分かっているけれど。





14:58、14:59。


手元の携帯を覗いて、やがてそれは訪れる。


――15:00。



「……居ないよな」



駅、周囲を見渡す。

言っちゃあれだが、俺が初音さんを見逃すわけはない――


――プルルルル!



「!?」



思わず手に取る。

その着信。



「……もしもし」

「あ。いっち?」

「どうも、東町ですけど」

「あの……本当にごめんね。ちょっとOGの人達と遊ぶことになっちゃって」


「うん」

「今日は、ごめん。いつ終わるか分からなくて……だからその、来週。来週遊びに行こう?」

「初音さんが、それで良いのなら」

「わたしは良いよ。来週も休みがあるんだし……また話そう、ね」

「分かった」

「じゃ、ごめんね! せっかく誘ってくれたのに」

「良いよ」



――プツン、と。

そのスマホには、通話終了のメッセージ。



《――「初音さんが、それでいいのなら」――》



そんな言葉。

どこまでも弱気な自分の声。



「はは、雨まで……帰るか」



そして頬に水滴が当たる。

上を向けば曇天。そこからポツポツと降ってきていた。


……ああ。

約束相手からも、そう言われた訳だし。

その泣きそうな震えた声も。

通話口。彼女がきっと曇った表情をしていたとしても。


……だとしても。

今日は――これで終わり。そうだろ?



「…………」



雨が降る中、折り畳み傘を指して歩く。


《――「染めた髪は普通の髪よりも大切に扱ってくださいね!」――》


金曜日。


そう美容師さんから言われたから、いつ外出中に降っても良い様にソレは持っていた。

周りがアタフタする中、俺だけ余裕でその雨風に向かっていく。


しかしながら、頭の中はぐるぐると彼女の声が反響している。



「初音さんは、傘持ってるのかな」


「……まあ、通り雨か」


「きっと夜になるだろうし――」



雨中、誰にも聞こえない小さい声で呟く。

気付けば駅前で立ち止まっていた。


俺は何をやっているんだろう。

そのまま、電車に乗って家に帰るだけなのに。



「……」



過ぎ去っていく時間を駅前の時計が教えてくれる。


現実は、愚かなものだ。

何もしなければ何も起こらない。

都合良く、誰かが手を指し伸ばしてくれる事なんてない。


俺が帰れば、きっとそのまま世界は進む。

何も変わらない。

火曜がやって来て、水木金土日……。


繰り返し。

繰り返し。

繰り返し。


今までずっとそうだった。


そして。



《――「もうちょっと頑張ってればよかったな」――》



非情にも時間は戻らない。

この三連休を、やり直そうったって戻らない。

当然のこと。


……その後悔を。

……この心残りを。


俺はきっと、ずっと覚えている事だろう。




――『記憶は無いが、今貴方は人生をやり直す為に未来からやってきた。さあどうする?』――




「――っ、くそっ……」




ああ、分かってるよそんなの。

この思いをずっと引きっていくのなら。


高校二年。五月下旬の月曜日、駅前15時。


その時を、永遠と悔いに残すなら。

もし、そんな“今”をやり直す為に自分が戻って来たならば。

そんなの――




「決まってるだろ……!」




脳裏に浮かぶその問いに、俺はきっちり答えを出す。


たった一日の休日でも。

俺が、初めて友達を誘ったこの日を。


その後悔で――染めたくはない。

強く思って。

もう一度、ポケットから携帯を手に取った。




「俺が、彼女を奪い返す」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ