サファリジャケット
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詩織『おはようございます 僕は先に行って色々準備しておきますので』
東町一『え 大丈夫?』
詩織『昔からお手伝いはやってますので 山の入口に着いたら教えてください』
東町一『ありがとう 了解!』
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朝10時。
その山には、電車に乗ってバスに乗って。
30分ぐらい歩いたら着いた。
色々悩んで『仕込み』をしていた為に、かなりバタバタしちゃったけど。なんとか約束の時間に間に合った。
「山だ……」
小学生並の感想を口にして、いそいそとその中へ歩いていく。
山といっても整備されていて、近くには駐車場もあった。
椛さんの言う通り、あまり人の活気はない。
助かる(陰キャ)。
「着いたよ――っと」
指先、送るメッセージ。
そして同時に――
「……と、東町君」
「!?」
居た。
大きな岩の横に、隠れる様に。
気付かなかった。彼女はまさか俺より高位の“陰の者”か……? (隠密使い並感)。
「い、行きましょう」
「うん。それにしても……何というか、本格的だね」
目の前の椛さんを見て俺は言う。
そう、気付けない自分を攻めないでいただきたい(正当化)。
その理由は彼女の服装にある。
「その、昔着てたものがあって……せっかくなので」
「確かになんか年期入ってるね」
恥ずかしそうに笑う彼女。
全身緑を基調に、たくさんのポケットが付いたジャケット。
カウボーイハットっぽい帽子。
あれだ、サファリジャケットってやつかな。
それに身を包んだ彼女は、まるで森に紛れる探検者である(隠密+50)。
……ジャージの俺が恥ずかしい(雑魚)。
「似合って、ませんか?」
「いいや。凄いしっくりくるよ」
「……ありがとうございます」
まるで森の住人だ(?)。
冗談は置いておいて……何か、山の経験値が俺より大分ありそうな――
「――と、東町君。髪の色増えました……?」
「! 増えたよ二色。良く気付いたね」
「いえ。暖かい感じで綺麗です」
「ありがとう」
「……い、いえ」
俺の髪色が眩しいのか、俯く彼女。
ただでさえ低い身長がもっと低く感じる。
それはさながら小動物だ……。
これで山の中をガンガン進んでいってたらもうリスだよ(バカ失礼)。
☆
「(絶句)」
「キャンプとか、枯れ木とか落ち葉の調達はやっておきました……あとはその他にも色々と借りて来ました」
俺は、目の前の光景に驚いている(現在進行系)。
山への入場手続きとかを済ませて、椛さんに案内されるまま少し山の中を進んで。
恐らくキャンプスペース、開けた場所に出たと思えばこれだ。
「これ、全部椛さんがやってくれたの? テントの組み立ても?」
「? はい」
燃料にするであろう、積りに積もった枯れ木と落ち葉。
既に組み立てられたやや大きめのテント。
中を覗けば、椅子とか机とかもしっかり置かれていた。
その前には、『何かおかしいです?』と言いたげな椛さんの顔。
これが流行りのなろう主人公ってやつか……(違う)。
「しんどくなかった……?」
「昔よくやっていたので。全然大丈夫ですよ」
「そうなんだ(敬服)」
「その、子供の頃はずっと山にいたので。火起こしとかテントの設営とかは得意なんです」
「マジっすか(語尾崩壊)」
何というか、経験値の差がスライムとドラゴンぐらいあるよね。
恥ずかしくなってきた……。
一緒にすんなって?
その通りです(ミジンコ)。
「……その。まずはあちこち探検しませんか。お昼までには戻る感じで……」
「良いよ(即決)」
「! 行きましょう。あっ荷物は置いとかないと。貴重品は持っていきましょうね」
キラキラした目が眩しい。あといつもより口調が流暢である。メモ紙いらず。山は椛さんを変えるらしい。
……ああ、勝手に彼女をインドア派認定していた己を恥じるよ。椛さんの口から『探検』なんて言葉が出るなんて思わなかった。
人は見た目によらないね(反省)。
☆
それから数十分間。
自然豊かな山の風景は、現代に疲れた俺達を癒やして――
「モミジサンマッテ……(必死)」
「あっ」
探検という名の森林散歩だったが、インドア派だった俺には慣れてなさ過ぎた(言い訳)。
舗装されたアスファルトの道と、今歩いている山のそれは違う。
とにかく足が疲れるのだ(死)。
「はぁ、はぁ。凄いね、スイスイ歩いて」
「い、いえ……子供の頃から登山には慣れてるので」
なるほど、レベルで言えば俺が1で彼女が100ぐらいってことね。
子供の頃から机に居た自分とは正反対だ。
あの読書に勤しむ彼女の印象とは逆。人は見た目によらないね(本日二度目の反省)。
……しかしながら。
女の子に気を使ってもらうのはマジで申し訳ない。
「ごめん、もう回復したよ。どんどん行こう」
「! 行きましょう……あっあそこ滝がありますよ――」
この山に住んでいるかのように、スイスイと森の道を進んでいく彼女。
まるでリス――いやもうタヌキ(クソ失礼)。
見える、見えるぞ。
揺れる彼女のしっぽが……(変態)。
「と、東町君! こっちです」
振り返る椛さん。
何時にもまして楽しそうな彼女を見ていると、この脚の乳酸も無くなっていく――
☆
「モミジサン(瀕死)」
「あっ」
山の中。
轟音を立てて落ちていく水の柱が、視界に広がっている。
たった今、それは地面になってしまったが。
体力クソ雑魚の俺を殴りたいが、殴る元気もない!
過去の俺見てるか? 今すぐ筋トレしながら勉強しろ(鬼)。
いつも応援ありがとうございます。今日は夜にもう一話投稿します!




