堕天使(5)
「……すぅ」
かのんちゃんはお昼寝中。
「……」
「……」
二人は勉強中。
「(集中できない)」
目の前に女の子二人居て緊張しない奴いる?
いや居ない(反語)。
「うーん……」
「あ、そこ分からないの?」
「うん」
「えっと、そこは――」
初音さんが唸っていたから、そこを教える。
俺の取り柄なんて授業態度と学力ぐらいだからね。
人に教えるのは難しいけど、昨晩の“準備”もあって――
「……わ、分かっちゃった」
「よかった」
「さっきからいっち、家庭教師とかやってたの……?」
「ほめ過ぎだよ(照れ)」
「あの、東町君。ココ教えて欲しいのだけど……」
「えっとこの英文は――」
二人の質問を、俺が解消していく。
人に教えるのは自分の為にもなる――そう本には書いてあったっけ。
「あ、ありがとう。先生みたいね東町君」
「どういたしまして(嬉死)」
やっべぇコレ気持ち良すぎるんだけど(変態)。
まさか俺が人に教えて――あまつさえソレを理解してくれるとは。
二人共、地頭が良さそうなのもあるだろうけど。
特に如月さんは吸収が早い。なんでこれで赤点ギリギリなんだ?
「……いっち! ここも教えて!」
「い、良いよ」
その声にまた俺は向かう。
ああ、見ているか過去の俺。
勉強頑張ってよかった(昇天)。
「――かのんもべんきょうする!」
「え」
と思ったら、隣に小さい如月さん(かのんさん)が来た。
いつの間に起きてたんだ……。
あとそれお絵かき帳って書いてあるんだけど。
ツッコミはダメだね(大人の対応)。
☆
「……っ、あ、あぶな」
「……(如月さんうたた寝中)」
「二人とも大丈夫?」
「勉強してると眠たくなっちゃって……」
「……! ご、ごめんなさい」
あえて言っておこう。
如月さんの寝顔はヤバい(昇天)。
まるでギリシャ彫刻の様なソレ。
俺は地上に舞い降りた天使を見ているのか?
ってそれだと堕天してるじゃないか。
「つぎはロケット作ってー!」
「良いよ(食い気味)」
そして机に積まれていく作品達(俺製)――って。
今誰一人勉強してない(今更)。
「休憩しようか。疲れたよね」
「はーい!」
「そうしましょう」
――さて。
ココで俺の趣味を活かす時が来た(ドヤ顔)。
休憩といえば何か?
そう、コーヒーである。
この日の為に取っておいた未開封の豆。
ソレを今、解き放つ――!
「ブレイクタイムにコーヒーでも如何ですか(誰)」
「あっわたしメロンソーダ買ってきたー!」
「!!」
「!!」
その言葉と同時に、如月姉妹が目を見開き釘付けになる。
1.5Lの緑色の液体に。
「えへへ、二人とも大好きだもんね~これ」
……おれもメロンソーダだいすき!(鞍替え)。
☆
プラスチックコップ(使い捨て)に入れたメロンソーダ。
そしてチョコレート、ビスケット。
ポップコーン(俺の大好物)。
そんな風景は、写真にとって残しておきたい……が叶わず。かのんちゃんが喰らい尽くしました(当然)。
《――「いっちってカレー以外も食べてるんだ」――》
《――「失礼よ桃」――》
《――「主食はナンです」――》
《――「カレーは?」――》
《――「““कूशी” ” (憑依)」――」
そんな雑談も経て、また勉強に戻って。
教えて、教えて、教えて。
結構な時間が経った気がする。
時計を見れば――11時から5時間経過。
夕方が近付いている。
「……すー……(初音さん熟睡中)」
「……(如月さん熟睡中)」
「つぎはスペースシャトルおしえてー!!」
「良いよ(食い気味)」
「んー♪」
「!? 膝はくすぐったいんだけど……まあ良いか」
結果。
目の前の二人は熟睡。
膝に座り始めたかのんちゃんに、ひたすら俺が折り紙を教えている状況である。
勉強してねぇ!(本日二度目)。
一応英単語を復習しながら折っている。折り紙しながらだと脳が動いて良い感じ。
流石かのんさんや……。
「……ふわぁ……」
「っと!」
と思ったらかのんちゃんも撃沈。
机に頭を打ち付ける前に支えてあげた。
……おいおい俺以外全員寝ちゃったよ。
みんな結構疲れてるんだな。
緊張で俺は全然起きてます(陰キャ)。
「よいしょ……」
とりあえず、かのんちゃんは布団に寝かせよう。
小さい身体を抱っこして、敷き布団に転がして――
「……すー……んっ!」
「えっ」
と思ったら、まるで俺を引き留める様に。
小さい手が、己の手のひらを掴んでいたのだ。
「……♪」
「……や、ば……」
子供の手ってのは、本当に暖かい。
そして、その寝顔は副交感神経をかなり刺激する要で。
いうなれば彼女は“堕天使”。
抗えない。
その白い世界に吸い込まれていく。
「……っ」
迫る寝床。
頭ではわかっていても身体は正直。
ああ駄目だ。
ずっと、どこかで眠っていた睡眠欲が。
今になって――




