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安価で俺は変わろうと思う  作者: aaa168(スリーエー)
一人っきりのダンスフロア
108/166

「わたしだって」


時刻は19時前。

一時間前と打って変わって。



「かくごー!」

「ガゴゴ……(激キモ陰キャサイボーグ)」


「やー!!」

「ギガギガフンフン(耐久全振り)」



そこには元気に俺を攻撃するかのんちゃんが(悪化)。



「こうげきできないのかー!」

「ァ……(困惑)」



そして、もはやただのやられ役じゃ満足出来ないらしい。

考えてみよう。五才児に攻撃を与えるなんて出来る訳がない。


……詰んだ? いや――



「――ひ、必殺ムーンウォーク(意味不明)」


「わーー!!」


「え」


「きゃっきゃっ」



ちょっとした威嚇のつもりでステップ踏んだんだけど。


めっちゃ喜んでんだけど。

まさかここまで受けるとは。



「そういえば――」



元来、ダンスというものは人間だけのものじゃない。

例えば小鳥は、さえずりと共に身体を上下に揺らし異性にアピールする。


そう――我々生物には、脈打つダンスの血が流れている。踊るという事は生きるという事なのだ(俺のバイブル:『ダンスの心得』より│抜擢ばっすい)。

いやちょっと待て。それじゃ俺が彼女にアピールしてるみたいじゃ(犯罪)。


おまわりさーん!!



「もっとやって!」

「承知いたしました……(敬服)」



まあ、ともかく。

かのんちゃんが楽しそうで何よりです。


彼女に文字通り踊らされている気がするけどね(爆笑)。



「……いちにー、なにかおもしろい?」

「あっすいません」



ダンスタイムだ!(ヤケクソ)。








「――こんばんは~!」


「いらっしゃい。遅かったわね」

「うん~。ちょっとお母さんと話してて」



20時。

家族とご飯を食べて、あやのんの家へ。

ちょっと遅くなってしまった。

いっちまだ居るかな――あ、彼の靴発見。まだいる。



「ご飯は食べちゃったけれど……」

「大丈夫大丈夫! 家で食べてきたから〜」

「そう。なら良いのだけど」

「うん! 宿題はやってないけどね〜!」

「ふふ、それは知ってるわよ」

「え〜? あとで一緒にやろうね〜」



二人で玄関からリビングに歩きながら、慣れ親しんだ如月家の香りで落ち着く。

中学の時から、ずっと来てるもん。


その間、あやのんの友達でわたし以外来たことあったっけ? 

そう考えると、いっちって凄い——


「——って!」

「な、なによ急に」

「いっちは!」

「ああ、東町君は寝室にいるわよ」

「え」


リビングにもその影は無い。

だからどこに行ったのかと思えば、二階だった。


「二人だけで?」

「当たり前よ。ママはもっと遅いわ」

「……だ、大丈夫?」


そりゃ、いっちはロリコンじゃないと思うけれど。

あの可愛さの暴力を前に、理性を保っていられるんだろうか。

わたしは無理だった。


「もう、ドタドタ言わさないの」

「だっ、だって〜」


ちょっと急な階段を急いで上り、その部屋へ。


「え!?」


畳が広がる和室、ひとつだけ布団が並ぶそこに、二人が居た。

静かに寝息を立てながら。


「かのんちゃんと……いっち?」

「一緒に寝てるわよ。時間も時間だし……彼、大分疲れてたみたいだから」

「ね、寝てるって。いやいや……でもあの体勢は」


いっちは普通に寝てるけれど。

かのんちゃん、彼の頭を手でがっしり抱きかかえて寝てる。

その虹色が相まって、まるで宝石を身体全体で包む様。


「オ……ア……」


対する彼の寝息? は苦しそうだけど……。

それでも。



「だめでしょあれ!」

「え?」

「お、お腹が。いっちの顔がかのんちゃんの柔らかいお腹に当たってる!」

「ふふ、彼が“そういう”人じゃないのは分かってるから大丈夫よ」

「……だけど」

「仲いいのね、二人とも」

「……うん」



嫌だな、わたし。

目の前のかのんちゃんを見ていると、少しもやもやしてしまう。


五歳の女の子に……何を思ってるんだろう。


……わたしだって。

いっちを、そんな風に出来るのなら——



「ちょ、ちょっと桃?」



これは、別にやましい気持ちなんかじゃない。

いっちを、こんな状況に居る彼を起こすだけだから。


それに触れたいだなんて、思ってない。



「……」



音を立てずに、ゆっくり彼の元に近付きしゃがむ。

慣れた家とは異なる香り。

寝息を立てる、彼の顔。



「お、起きて〜……」



出来るだけ優しく、そっと。

“起きないで”——そう願いながら。



「……っ」



少しごつっとした背中、肩を掴む。

暖かいそれに触れるだけで、ばくばく心臓がうるさくなる。


「お、おきろ〜……」


それを分かっていても止められない。

もっと近くで彼を見たい。自分の吐息で、起こしてしまうかもしれないのに。


出来るだけ小さい声を発しながら、彼の顔、耳の近くに口を持っていく。



「っ」



虹色の髪。

耳だけじゃなく、閉じた目も、鼻も、唇も――今、彼のそれが近くにある。


それが、どうしようもなく恥ずかしくて。



「……にじ、いろ……!」

「オフッ」


「!」



その時。

眠っているかのんちゃんが、さらに強くいっちを抱き寄せる。


離れていく彼の頭。

こんなに近くに居るのに、どこか遠くへ行ってしまう様な感覚。



「……っ」

「ちょっと桃?」


「な、なんでもない。しばらく起きなさそうだし宿題やろ~」

「? ええ。ずっと二人で遊んでたし疲れてるのよ」


「……そっか」



湧き上がる何かを抑えながら階段を下る。

ああ、もうやだ。


相手は――あのかのんちゃんなのに。

なんで、こんなにむかむかするの。

大人げないなんてものじゃない。


そもそもの話……いっちは友達でしょ。

こんな気持ち、おかしいのに――



「あ~! わたしちょっとスマホさっきの部屋に落としたかも」

「え?」

「先リビング戻ってて!」

「もう、何やってるのよ……」

「あ、あはは~」



そのまま踵を返し――先ほどの寝室へ向かう。

平静を保とうとするけれど、手足は震えている。


「っ」


思わず嘘を付いてしまった。

最低だ、わたし。

でも、止められない。



「わたしだって……」



かのんちゃんが、彼をそうするのなら。

自分も。この腕でいっちを抱き締める事も……きっと、許されるはずだから。


……これは、友達同士の軽いハグだ。友情表現だ。だから、きっと――




「――っ!?」


「……もも? きてた」

「え、あ。うん……」


「おはよう!」

「お、おはよ……」



こっそり向かった寝室。

到着、その部屋。掛かる彼女の声。

思考が、一気に冷静になるけれど。



「いちにー、おやすみしてるから。しー、だよ!」


「う、うん。ごめん……」



そこに入った時。

座るかのんちゃんのふとももに、虹色の頭を載せる彼の姿。


「あっ……ポロ……っていうのは……過去とは違って……今は上流階級の……」


さっきとは違う。

心地良さそうに、寝言まで言っちゃって。


「にじいろ……いちにー♪」


更に、目の前。

それを撫でるかのんちゃんを見てられなくて。



「……いっちのばか……」



眠る彼には聞こえぬ様に。

溢れる嫌な感情を、そっと吐き出した。


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― 新着の感想 ―
果たして感想では情報過多といわれている状況にいる彼は本当に陰キャ···俺には敵にしか見えない(←努力しない陰キャ)
情報過多は今に始まったことじゃないけど、自分に好意を抱いている女子の前で別の合コンの寝言を言うって……
良く考えてみると、王道清楚系美少女の家でわんぱく元気っ子美ロリに顔を抱き締められながら、ワンコ系長身スタイル抜群美少女に耳元で囁かれた後に、ロリに膝枕されるっていう言葉で表すと情報過多な感じなんよなぁ…
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