6・幼馴染の嫌がらせ
そのまま無事に家に帰り、購入したラノベを読もうとした時だ。
ぴろん。
「トークアプリの通知……」
この音を聞くと、俺はぎくっとした気分になる。
何故ならこういう時は十中八九、朱里からメッセージがきているからだ。
『今すぐわたしの家に来てください。もちろんお菓子パーティーしますから、コンビニで買ってきてくださいね。先輩持ちで!(笑)』
どれだけくつろいでいても、朱里からそういうメッセージが来たら、暗澹とした気分になった。
今日はどんな無茶ぶりがくるんだ……。
身構えながらスマホを手に取ると、
「ん……市川からか?」
朱里ではなく、さっき本屋でIDを交換した市川であった。
『市川:こんばんは。試しに送ってみました。届いていますか?』
俺は自分でもたどたどしいと思うような手つきで、すぐに市川に返信した。
『牧田:届いてるぞ』
『市川:よかったあ。あっ、迷惑でしたか? 牧田君とトークしたいなと思って!』
『牧田:迷惑じゃない。ちょうど暇だったからな』
『市川:やったーw じゃあ早速聞きますけど、牧田君の最近のオススメの本はなんですか!』
こんな感じで取り留めのないメッセージのやり取りを、しばらく市川としていた。
『市川:あの、牧田君。一つ聞いてもいいですか?』
『牧田:なんだ?』
『市川:どうして牧田君のトークのアイコンって……今のやつにしているんですか?』
俺達が使っているトークアプリには、一人一人に画像アイコンを設定するようになっている。
俺は朱里に言われるがままのアイコンにしているが……それがなにか気にかかるのだろうか?
『牧田:朱里に言われてな。なんかおかしいか?』
『市川:気付いてなかったんですね。いや……だってそのアイコンって……』
俺はその後に続いた市川のメッセージに、思わず目を疑ってしまった。
『市川:女の子の生○用品ですから』
……はあ!?
マジかよ!
なんかお洒落な包装に包まれているとは思っていた。画像だけなので、お菓子かなにかだと思っていた。
ピントもぼけていて、一見なにか分からないしな。
男連中ならまだしも、女の子は普段見慣れているもののはずだ。
これだけでも画像の正体が分かるのだろう。
朱里に聞いても、
『せーんぱいはこの画像がお似合いですよ。女の子からモテモテになりますよ。きゃはは』
と答えをはぐらかされていた。
気付かなかった俺にも否があるが……あいつ。こんな小癪な手を使ってまで、俺に嫌がらせをしたかったということか。
『牧田:ごめん! すぐに変えるから!』
『市川:いえいえ! 牧田君から幼馴染さんの話は聞いてましたし、きっとその人に嫌がらせされていると思っていましたから。私は怒っていませんから!』
すぐにアイコンを変えようとする。
しかし……なににすればいいだろう?
『牧田:アイコンってなにがいいのかな?』
『市川:なにかの背景とかでいいんじゃないでしょうか。男の子はそれが無難だと思います』
市川のアドバイス通り、昔家族旅行で行った際に観光地で撮った写真をアイコンに変えた。
『牧田:変わってる?』
『市川:変わってます! それが良いと思います! 牧田君らしくて安心します!』
ふう……それにしても、被害が広がらないうちに、市川に教えてもらえてよかった。
今まではどちらにせよ朱里しかIDを知らなかったからな。
それから一分も経たなかっただろう。
『朱里:先輩! なんで勝手にアイコン変えるんですか!』
と朱里からメッセージがきた。
一分で気付くなんて……こいつ、キモッ。どんだけスマホ中毒なんだよ。
もうお前の言いなりになるものか。
朱里からのメッセージを『未読スルー』し、それからも市川とメッセージのやり取りを続けるのであった。
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