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17/42

17・一方その頃……

 一方その頃、朱里は……。



「縁を切るってどういうこと?」



 放課後。

 朱里は池丸達に呼び出され、絶縁を宣言されていた。


「そのままの話だ」

「どういうこと? わたし、変なことした?」


 内心朱里は動揺していた。


 先日、池丸達をけしかけて優先輩の足止めを敢行した。


 しかし結果は散々なものであった。

 文句を言いたいのはこちらである。あのせいで、喫茶店で自分は酷い目に遭ったのだ。

 それなのに……絶縁宣言とはどういうつもりだろうか。


「もうお前には付き合いきれん」

「だからどうして!」

「正直土曜日の一件も、オレはノリ気じゃなかったんだ。いくらなんでもやり過ぎだって。それなのに朱里が『やってくれなきゃ、もう一緒に遊ばなーい』と言ったから、オレ達は渋々やった」


 池丸の取り巻き連中も全面的に賛同しているのか、うんうんと何度か頷いている。


「でも池っちは失敗した」

「仕方ないんだ。まさかあの牧田? 先輩のバックに田中先輩がいるとは思ってなかったんだ」


 池丸達は一様にブルブルと震え出す。


「あのバスケ部の冴えない男よね? あれのなにがそんなに怖い……」

「お前は田中先輩の恐ろしさを知らないんだ!」


 朱里の言葉を遮り、池丸が語気を強める。


「あの人はオレ達みたいなのにも容赦しない……高校ではマシになったみたいだが、あの人の中にはまだ『狼』が隠れている……!」

「なに中二病みたいなことを言ってんの」

「あの日も!」


 朱里の言葉を無視して、池丸が話を続ける。


「……殴られはしなかったが、それはそれは筆舌し難い恐ろしい目に遭った。『オレの大切な友達に今度酷いことをしたら、どうなるか分かってるよな?』……と。田中先輩に目を付けられたんだ。もう二度とあんなことはできねえよ」


 その田中先輩とやらがどれだけの人かは知らないが、池丸達の表情から察するに、かなり怖そうだ。

 また同じようなことがあっても、同様の手段は使えないだろう。


 しかし朱里は一度失敗した手は二度とやらない。

 だからどうでもよかったが……。


「じゃあ、田中先輩にもう近付かなかったらいいじゃん。優せんぱーいの邪魔をしろっていうのも、もう言わないから。だから……」

「いや、元々オレ達はお前のワガママさっぷりにも呆れてたんだ」

「はあ?」

「見てくれは良かったから、しばらく一緒にいたが……お前といても楽しくない。田中先輩のこともあるし、もうお前と付き合う理由もないんだ。我慢して付き合うだけのメリットもないしな」


 池丸達は背を向け、手をヒラヒラと振る。


「じゃあな」

「ちょ、ちょっと!」

「一つ言っておくが、そのワガママを直さないといつかもっと酷い目に遭うと思うぜ」


 朱里がいくら止めても、池丸達は歩みを止めようとしなかった。

 池丸達の姿が見えなくなってから、


「ちくしょう!」


 朱里は持っていたスマホを床に叩きつけた。


「なんでわたしだけ、こんな目に!」


 何度も地団駄じだんだを踏む。


 そもそも池丸達と遊ぶのも、そんなに楽しくなかったのだ。

 池丸達と一緒にいたのは、優先輩を嫉妬させたかったから。

 だからこそ、この一年生の中でも最も陽キャグループであった池丸達と一緒にいた。


 とはいえ、身体の関係を許すつもりはなかったし、実際そんなことは一切なかった。

 ただ先輩を振り向かせるために無理矢理一緒にいただけ。


 しかしその作戦も水泡に帰した。


「先輩はあんなに楽しそうなのにっ!」


 元々先輩はカッコよかった。

 このまま放っておけば、先輩に悪い女が寄りついてくるだろう。

 だからわたしは()()()()親切心で、先輩に女が近付いてこないようにしていたのに……彼はその良心を踏みにじった。


「まあ……男は池丸だけじゃないんだし〜。また別の男と仲良くしておけばいっか。いつか池丸達にも償いをさせてやる」


 あいつ等は朱里のことを『ワガママ』と言った。

 しかし朱里から言わせれば、池丸達もどっこいどっこいである。

 池丸は朱里のことを見ていなかった。あくまで『美少女の朱里と一緒に遊んでいる』というステータスが欲しかっただけだ。

 それなのに……一方的に縁を切るなんて、自分勝手すぎる。

 そのことがさらに朱里をイラつかせた。


「先輩、もう帰っているかな……」


 こんな時にも思い浮かぶのは先輩の優しそうな顔だ。

 だが、池丸達が離れていった以上、今日は一人寂しく帰るしかないんだろう。


 いつでも自分の隣には先輩がいた。

 でも……今はもういない。


「……そう! 今は倦怠期けんたいき! すぐに先輩もわたしに戻ってくるはずだ。もう少ししたら、先輩もわたしのところに戻ってくるはずですよね?」


 そんなこと、絶対あるはずないのに。

 朱里は見当違いなことを思っていた。



 このことが朱里が落ちぶれていく序章となった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何はともあれ、もう終わりを迎えるだろうがな……。俺は知らんが
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