17・一方その頃……
一方その頃、朱里は……。
「縁を切るってどういうこと?」
放課後。
朱里は池丸達に呼び出され、絶縁を宣言されていた。
「そのままの話だ」
「どういうこと? わたし、変なことした?」
内心朱里は動揺していた。
先日、池丸達をけしかけて優先輩の足止めを敢行した。
しかし結果は散々なものであった。
文句を言いたいのはこちらである。あのせいで、喫茶店で自分は酷い目に遭ったのだ。
それなのに……絶縁宣言とはどういうつもりだろうか。
「もうお前には付き合いきれん」
「だからどうして!」
「正直土曜日の一件も、オレはノリ気じゃなかったんだ。いくらなんでもやり過ぎだって。それなのに朱里が『やってくれなきゃ、もう一緒に遊ばなーい』と言ったから、オレ達は渋々やった」
池丸の取り巻き連中も全面的に賛同しているのか、うんうんと何度か頷いている。
「でも池っちは失敗した」
「仕方ないんだ。まさかあの牧田? 先輩のバックに田中先輩がいるとは思ってなかったんだ」
池丸達は一様にブルブルと震え出す。
「あのバスケ部の冴えない男よね? あれのなにがそんなに怖い……」
「お前は田中先輩の恐ろしさを知らないんだ!」
朱里の言葉を遮り、池丸が語気を強める。
「あの人はオレ達みたいなのにも容赦しない……高校ではマシになったみたいだが、あの人の中にはまだ『狼』が隠れている……!」
「なに中二病みたいなことを言ってんの」
「あの日も!」
朱里の言葉を無視して、池丸が話を続ける。
「……殴られはしなかったが、それはそれは筆舌し難い恐ろしい目に遭った。『オレの大切な友達に今度酷いことをしたら、どうなるか分かってるよな?』……と。田中先輩に目を付けられたんだ。もう二度とあんなことはできねえよ」
その田中先輩とやらがどれだけの人かは知らないが、池丸達の表情から察するに、かなり怖そうだ。
また同じようなことがあっても、同様の手段は使えないだろう。
しかし朱里は一度失敗した手は二度とやらない。
だからどうでもよかったが……。
「じゃあ、田中先輩にもう近付かなかったらいいじゃん。優せんぱーいの邪魔をしろっていうのも、もう言わないから。だから……」
「いや、元々オレ達はお前のワガママさっぷりにも呆れてたんだ」
「はあ?」
「見てくれは良かったから、しばらく一緒にいたが……お前といても楽しくない。田中先輩のこともあるし、もうお前と付き合う理由もないんだ。我慢して付き合うだけのメリットもないしな」
池丸達は背を向け、手をヒラヒラと振る。
「じゃあな」
「ちょ、ちょっと!」
「一つ言っておくが、そのワガママを直さないといつかもっと酷い目に遭うと思うぜ」
朱里がいくら止めても、池丸達は歩みを止めようとしなかった。
池丸達の姿が見えなくなってから、
「ちくしょう!」
朱里は持っていたスマホを床に叩きつけた。
「なんでわたしだけ、こんな目に!」
何度も地団駄を踏む。
そもそも池丸達と遊ぶのも、そんなに楽しくなかったのだ。
池丸達と一緒にいたのは、優先輩を嫉妬させたかったから。
だからこそ、この一年生の中でも最も陽キャグループであった池丸達と一緒にいた。
とはいえ、身体の関係を許すつもりはなかったし、実際そんなことは一切なかった。
ただ先輩を振り向かせるために無理矢理一緒にいただけ。
しかしその作戦も水泡に帰した。
「先輩はあんなに楽しそうなのにっ!」
元々先輩はカッコよかった。
このまま放っておけば、先輩に悪い女が寄りついてくるだろう。
だからわたしはあくまで親切心で、先輩に女が近付いてこないようにしていたのに……彼はその良心を踏みにじった。
「まあ……男は池丸だけじゃないんだし〜。また別の男と仲良くしておけばいっか。いつか池丸達にも償いをさせてやる」
あいつ等は朱里のことを『ワガママ』と言った。
しかし朱里から言わせれば、池丸達もどっこいどっこいである。
池丸は朱里のことを見ていなかった。あくまで『美少女の朱里と一緒に遊んでいる』というステータスが欲しかっただけだ。
それなのに……一方的に縁を切るなんて、自分勝手すぎる。
そのことがさらに朱里をイラつかせた。
「先輩、もう帰っているかな……」
こんな時にも思い浮かぶのは先輩の優しそうな顔だ。
だが、池丸達が離れていった以上、今日は一人寂しく帰るしかないんだろう。
いつでも自分の隣には先輩がいた。
でも……今はもういない。
「……そう! 今は倦怠期! すぐに先輩もわたしに戻ってくるはずだ。もう少ししたら、先輩もわたしのところに戻ってくるはずですよね?」
そんなこと、絶対あるはずないのに。
朱里は見当違いなことを思っていた。
このことが朱里が落ちぶれていく序章となった。
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