表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/42

15・ラブラブ(に見える)二人

 朝。


「土曜日は色々あったな……」


 土曜日のことを振り返っていた。


 北沢と待ち合わせをして喫茶店に向かおうとしたら、邪魔者が俺達の前に現れた。

 かと思えば田中が助けに来てくれて……最終的には喫茶店で朱里に水をぶっかけることになったのだ。


 少しやりすぎか?


 そう思いかけるが、すぐに首をぶんぶんと横に振る。


 あいつのことだ。



『先輩がわたしの言うことを聞かないなんて、生意気ですよ!』



 と全く懲りていないに違いない。


「とはいえ逆恨みしてこないとは限らない……なるべくあいつに会わないようにしないとな」


 そんなことを呟きながら、制服に袖を通す。


「じゃあ行ってくるよ、母さん」

「行ってらっしゃい」


 いつものように家から出る。


 すると……。



「「あ」」



 隣の家から幼馴染の朱里も出てくるところであった。


 うわっ……最悪のタイミング。

 会おうとしなくても、朱里はお隣さんだ。こうして鉢合わせになることは十分予想できたんだが。


「せ、せんぱ……っ」


 朱里がなにかを言いかける。

 しかしそれに俺は答えず、背中を向けた。


 追いかけてくるだろうか?


 いや。


「……先輩、ご、ごっ、め……」


 振り返ると、朱里は伸ばしかけた手を引っ込められずにいた。

 その場から動かない。


 さすがに土曜日のことで気がくじけたのだろうか。

 いつもの朱里より、何倍もしょぼんとしているように見えた。


「……謝っても許さねえからな」


 朱里には聞こえないくらいの声量でぼそっと呟く。


 こいつは土曜日、北沢に酷いことを言った。

 あの後、俺がどれだけ大変だったかこいつは分かっていないだろう。



『すまん、北沢! 不快な気分にさせたよな?』

『なに気にしなくていい。君が怒ってくれたしな。私はそれで十分だ』



 あれから俺は何度も北沢に謝った。

 しかし彼女は天使のように微笑み、許してくれたのだった。

 とはいえいつか北沢にも恩を返さないとな。


 そんなことを思いながら、俺は学校へと向かった。



 ◆ ◆



 教室に着き、自分の席に座っていると。



「ねえ、聞いた? 牧田君。バスケの大会で大活躍だったらしいよ」

「バスケって……牧田君、バスケ部だったっけ?」

「ううん、違うよ。ただ出場するための人数が足りなかったら、急遽出てくれたらしい」

「マジ? 牧田君、めっちゃ優しいじゃん! マジエンジェル!」

「しかも牧田君が活躍したおかげで、なんとうちのバスケ部……県大会にも出場するらしいよ!」

「え……すごっ。この高校のバスケ部って弱かったはずだよね?」

「それをたった一人で県大会まで導くなんてすごすぎだよ。他校の友達にバスケ部のマネージャーがいるんだけど『吾妻高校のあのカッコいい男子って誰!?』って評判になってるらしい」

「まあ当たり前だよね。牧田君、カッコいいもん」



 どうやら俺のことで話題になっているらしい。

 あの時の目撃者はたくさんいたからな。少し時間差でクラスにもとうとう伝わってしまったらしい。


「よっ、牧田」

「田中」


 バスケ部の田中が近寄ってきた。


「土曜日はすまなかったな。あれから大丈夫だったか?」

「なあに、ちょっと話し合いをしただけだ。平和的に解決した」

「はは。具体的になにをしたかは聞かないことにする」

「それが良い。あっ、あいつ等はもうお前に近付かねえと思うぞ。オレが教育してやったからもう安心しろ」


 やはり……()()の話し合いではないらしいな。


「優」


 田中と楽しく話していると、今度は北沢が来た。


「北沢も土曜日はありがとう」

「いや、礼を言うのは私の方だ。私の方こそ楽しかった」


 むっ……生温かい目線を感じる。


 隣で田中が俺達のことをジロジロ見ていた。


「お前等、ほんとにラブラブだな」

「田中にはまだ説明してなかったな。別に俺と北沢は……」


 一瞬躊躇(ちゅうちょ)する。

 疑似とはいえ、一応北沢は『彼女』という設定だ。

 あまり激しく否定するのも、北沢の気分を害してしまうのでは?


「まあまあ、気にするな」


 その沈黙を『照れている』と勘違いしたのか、田中がぽんぽんと俺の肩を叩いた。


「オレは空気の読める男だ」

「この場合は適切に読んでいないと思うんだがな」

「そして……口の固い男でもある。お前等がそういうつもりなら、わざわざみんなにバラしたりしねえよ」


 ……ダメだ。

 今更否定しても、こいつの中で既成事実が作られつつある。

 まあ休日に、しかも私服で駅前なんかふらついてたら、本当に付き合っていると勘違いされても仕方ないよなあ。


 心配になって北沢の方を見ると、


「わ、私は問題ないぞ……! この関係のままでも……また優と遊びに行けたら嬉しいしな……!」


 耳たぶまで顔を真っ赤にして言った。


 この関係のままでも……か。


 朱里の一件も終わったことだから『疑似彼女』を解消しても良いと思っていた。

 しかしどうやら、北沢はまだこの関係性を続けたいみたいだ。

 俺としても北沢と一緒にいることは楽しい。それにすぐに解消して、朱里になにか勘ぐられても面倒だ。


「……しばらくこのままでもいっか」


 まあこのことはまた後で北沢とちゃんと話し合うか。


 なんとも言えないむずむずするような感覚。

 しかし不思議と嫌な気持ちにならなかった。

「面白かった!」「続きも読む!」と思っていただいたら、下記にある広告下の☆で評価してくれたら更新する励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ