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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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雨の日には

 安見さんとの事で色々と悩んだ日から数日経った。 僕の結論としては「まずは変に安見さんの事を意識しすぎない事」という、根本的な解決になってない答えを出した。


 その結果、安見さんとの距離はとりあえずは一定に保ててる。 多分安見さん自身も何かしらの考えを持って僕と接しているのだろうと感じたからだ。 僕の考えと似ているようで違う考えで。


 そんな距離関係を築けたある日の放課後。


「うわー、まじかよー。 こんなにどしゃ降りになるなんて聞いてないんだけど。」

「やべぇ、折りたたみ傘持ってるけど、こんな雨じゃ防ぎきれねぇよ。」

「お前はそれでまだ帰れるからいいじゃねぇか。 俺なんか止むまで学校から出られないんだぞ?」


 そんな会話を昇降口の片隅から聞き耳を立てたわけでもなく聞こえてきた。 しかし僕には関係のない話だ。 なぜならば、これを見越した上で今日は傘をしっかりと持参していたからだ。 しかも折りたたみではなく、普通の大きさの傘をだ。


「天気予報だけで判断しちゃ駄目って事だね。」


 昇降口でじゃれあっている男子生徒を差し置いて、僕は帰ろう・・・と思ったとき、先に教室を出たのでもう帰ったと思っていた安見さんの姿があった。 その表情はかなり気難しいものだった。 どんな心境なの? それ。


「安見さん。」


 さすがに放っておくわけにもいかないので、声をかけることにした。


「館君、この雨はヤバイです。 通り雨かもしれないですが、この降水量は想定外です。」

「安見さん、傘は?」

「予報では帰る頃に、とのことだったので所持していません。」


 困ったような表情をしている安見さんがこちらを向いていた。 さて、この場合どうするのが正しいのか。


「使う?」

「館君、さすがに人のは使えないですし、それでは館君が帰れないじゃないですか。」


 うん、完全に見抜かれてたね。 さてと、どうしたものやら。 いや、方法はあるにはあるんだけど・・・


「安見さん。」

「私は館君なら問題はありませんよ?」


 あ、もう何をするのか分かってたのね。 というか最初からその方法しか無かったのね。 ならもう迷う必要は無いよね。



「傘、一緒に使う?」


 学校からの最寄りの駅まではそこそこ距離がある。 その間駅方面に向かう僕らと同じ高校の生徒達が、チラチラと視線を送ってくる。 正直半分気まずい。


「改めて恥ずかしいですね。」

「言わないで、気にしないようにしてるんだから。」


 こっちだって意識しないように必死に頭を回転させてるんだから。 チラチラと視線の方を見ると、羨ましく思う視線、妬む視線、どうなるかと期待している視線。 様々な視線を受けながら歩くのはやっぱり微妙な気分になってくる。

 そんなことを思っていると、急に安見さんが僕の体に引っ付いてくる。


「え!? あ、安見さん!?」

「館君。 私を濡らさないようにするために、館君が濡れる必要はありませんよ?」


 そう言われて、ばれてしまったかと思ってしまう。 実は安見さんを濡らさないようにと安見さんよりに傘を傾けていたのだ。 僕の身長がすっぽりと入るくらい大きな傘なので、安見さんを入れることは訳ないのだ。 だから僕が濡れようと関係は無かったのだが、安見さんはそうは思ってはくれなかったようだ。


「私が内側に入れば館君も濡れることなく歩けます。 ええ、これで2人とも濡れることはありません。」

「分かった。 分かったから安見さん。 もう少し離れてくれるかな? ・・・その・・・近い・・・」


 僕の言葉に「はっ!?」としたように安見さんは少し離れる。 しかし濡れないように距離を保っている。

「・・・・・・腕、組んでもいい・・・ですか?」


 なにかを意識してしまったのだろうか、先ほどの勢いが嘘のようにしおらしくなっていた。


「・・・いいよ。 濡れちゃうから。」


 そういって、ゆっくりと安見さんは僕の腕に自分の腕と体を寄せてくる。 これで2人とも濡れることはないのだが、僕は理性を保つので必死だった。 少し横を見れば、安見さんの顔があるし、シャンプーのいい香りもする。


 なによりも一番僕の理性を奪っているのは、腕に当たっている柔らかい()()。 理解しているがゆえに必死になって理性を保っている。


 駅までの辛抱だ・・・ 意識を持っていかれるな・・・ 頭をスッキリさせるためには何がいいんだっけ? 素数を数えるのか?


「館君。」


 その声に我に返る。 あれ? 僕どれぐらい自分の世界に入ってた?


「館君はたまに人に優しすぎるところがあると思うんです。」

「そ、そうかな?」

「自分のことを顧みないことってないですか?」


 そんなことあったかなぁ? 自分が気が付いてないだけでそういう場面があるのかもしれない。


「館君はまだ病み上がりなんですから、もう少し体を労ってください。」

「安見さん、それはブーメランとなってるよ。 安見さんだって熱が出たじゃないか。」


 その答えに安見さんは、むっすりとした表情をしていた。 そんな顔をされても事実だからしょうがないじゃないか。


「館君は意地がわるいですね。」

「それもブーメランとして受け止めておくよ。」


 こうして普通に会話が出来るのもお互いが意識しあっているからだろう。 だからこそ、この関係は()()崩したくはない。 少なくとも僕はそう思っていた。

一応時期は梅雨時期という話です。

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