それを聞いて、私は
館君の唐突な告白に私は思考が止まってしまいました。
「安見さんの事が好き」 「1人の女の子として」
そんな言葉が反復してくる。 館君の言葉が、館君の声で、頭の中で反復を繰り返す。
館君と初めてあってから色々な事を彼と体験してしました。 時には怖い思いもしたけれど、それでも彼といれば、安心できました。
そう感じていた。 それだけだった。 なのに、彼は「安見さんの事が好き」という一言が私を揺るがした。 もちろん驚きもありましたが、彼が私の事を想っているなど思いもしなかったからです。
館君がなにかを喋っているのは分かるけれど、それがどんな内容なのかさっぱり耳に入ってこない。 それだけ衝撃的な発言だったからだ。
受け答えに困っていると、
「だけど、これを伝えるのは、まだ早いんだ。 僕の気持ちに、しっかりとした整理が出来ていないから。 その時になったらちゃんと言うよ。 だから待ってて欲しい。 それだけが僕の願い。」
そこで館君の話は終わる。 私は絞り終わったタオルを彼の額に乗せる。 そうすると彼は目を閉じ始めました。 私はそんな彼の・・・頬に・・・自分の唇を当てました。 とても熱い感触が、自分の気持ちと呼応するように伝わってきた気分でした。
「あ、光輝は元気になったかしら?」
「今は眠ってしまっています。 でも来たときよりは大分落ち着いている様子でしたので、大丈夫だと思います。」
「そう。 ありがとうね安見ちゃん。 ・・・? 顔が赤いけど、大丈夫?」
「私は大丈夫です。 では私は帰ります。」
「あら? 夕飯良かったら食べていってもいいのよ?」
「いえ、家族が心配しますので。 失礼します。」
「また来てね。 歓迎するわ。」
そう言われてから、館君の家の玄関を出る。 ここから自分の家まではそんなに大した距離ではなかったので、街灯の照らす道を歩く。 だんだんと歩く速度が速くなる。 そして走り出す。 体が火照っているようで、かなり暑い。 心臓の鼓動が速くなる。 でも止まってしまったら、この鼓動も止まってしまいそうで。 気が付けば自分の家の目の前まで着いていた。
荒げている呼吸を整えようと、玄関先で深呼吸を何度も、何度もする。 そして落ち着いたところで、先程のやり取りを思い出す。
「・・・・・・・・館君・・・」
弱っていたから発してしまった虚言なのか、本音なのか分からない。 分からないけれど、はっきりと聞いていた。
「安見さんの事が、好きになったみたい」
そんな何気ない一言。 だけれど、私の胸には深く、深く残った。
館君の事は、初めて会ったときは「私の事をどう思ってるのだろう? 迷惑ではないか」と不安の連続だったりもした。 だけれど、彼はそんな素振りを一切せずに、ただただ私に寄り添っていました。 ゴールデンウィークでの思い出は彼との思い出でもあり、心のどこかで彼の事を想い始めていたのかもしれないと感じる程に。
だからこそなのか、他の女子の事を話されるとどこかモヤモヤしたし、加奈実さんと一緒にいるときは、ムッとした感じになったのかもしれないです。
加奈実さんも館君の事を想っているとは、どこかで勘づいてはいました。 ですがまさかその本人から「好きなんだね」と言われたときは心底驚きました。
館君がどこまで覚えているのか・・・いや、いっそのこと忘れててくれていた方が、私も恥ずかしい想いをせずに済むかもしれない。 特に最後の「キス」に関しては、終わったあとに何をしているのかと、自問自答したくらいだから。
呼吸を整えたのにまだ息苦しい。 走ったせいなのか体が火照っている。 そう、これはそれだけのこと。 でもそうじゃないなら、この想いは・・・・
「お姉、帰ってきてたの・・・ お姉! どうしたの!?」
玄関が開けられたと思ったら、味柑がそこにいた。 どうやら私が胸を当てながら蹲っていることに驚いてしまったようだ。
「あ、ごめんなさい味柑。 大丈夫です。 心配を掛けました。」
「え? う、うん。 大丈夫ならいいんだけど。」
そう言って玄関を抜けて、リビングへと入る。 そこには姉さんとお母さんが座ってなにかを話していた。 今後の事の相談だろうか?
「お帰り安見。 今日は遅かったのね。」
「一応連絡は入れましたよ? 確認してないのですか?」
「確認はしっかりしてあるよ。 でも内容くらいは書いてくれないと分からないから。」
そう言えば遅くなる理由を書いていなかったのを思い出しました。 それは心配をさせてしまいますね。
「ごめんなさい。 それとご飯を食べてきてないので、なにかあると嬉しいのですが。」
「そういうと思って、今日はカレーにしといたよ。 全く、館君の家に行くなら行くって言いなさいよね。」
それなら良かった。 早速台所に・・・
「・・・なんで館君の家に行ったことを知ってるんですか?」
「陽子さんから連絡があったの。 「光輝の看病をしてます」って。 そうならそうと言ってくれれば良かったのに。」
忘れかけていた、いや、胸の中にしまっておきたかった事が再度甦る。 頭が沸騰しそうなくらいに熱くなっていた。
「うわ! お姉の顔が真っ赤になってる!」
「それは大変! ご飯は私たちが用意するから、安見は座ってて。」
そういって無理矢理席に座らされ、頭を冷やした。
「私は、どうしてしまったのでしょうか?」
「ま、その気持ちに気づくのは、もう少し彼と話し合ってからかな?」
母さんの謎の言動を聞いて、ご飯を食べて、お風呂に入り、そのまま寝ることにしました。 館君。 明日しっかりと治ってればいいなと願いながら、私は目を瞑り、夢の中に誘われました。
どこまで気が付いているかは皆様の想像にお任せします。




