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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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林間学校 朝風呂

 唐突に目が覚める。 今は何時頃だろうか? 窓から光がうっすらと射し込んでいるが恐らくまだ目が覚めるような時間ではないのだろう。 そう思い携帯で時計を確認すると「5:45」という数字が書かれており、先生達が指定した起床までの時間までかなり早かった。


 しかし二度寝をしようにも、僕の寝ていた場所では都合が悪く、陽の光を直に浴びる場所なので、眩しさの方が勝ってしまう。


「・・・・・・仕方ないな・・・・・・」


 みんなが寝ているのならむしろ好都合かもしれない。 僕はみんなを起こさないようにこっそりと部屋を出て、昨日ゆっくり入れなかった温泉に向かうことにした。



「・・・っあ~・・・ 気持ちがいい・・・」


 朝のまだ肌寒い風を浴びながら入る温泉は僕の体をゆっくりと温かさで包み込んでくれている。 休日の時はランニングを終えた後にシャワーを浴びることはあるが、これはまた別で気持ちがいいものだ。 昨日ゆっくり出来なかった分ここで挽回する勢いで入ろう。 そう思った。


「ガラガラッ」


 そんなときに僕の耳に入ってきた温泉と脱衣所とを繋ぐ扉が開かれる音。 しかし扉の方を見ても開けられた様子はない。 つまり男子風呂の方ではなく女子風呂の方に誰かが入ってきたようだ。


 向こうもこちら側に誰か入っているとは思ってないだろうし、このまま静かに入っていよう。


「ふぅ・・・目が覚めるようです。」


 こちらが音を立てないように配慮したせいだろうか、女子風呂から聞こえてくる声がはっきりと聞こえてしまった。 しかもとても聞き慣れた声が。


「その声・・・安見さん?」

「え!? あっ、館君ですか? びっくりさせないで下さいよ。」


 別に驚かせるつもりは無かったのだが・・・ まあ誰もいないと思ってお風呂に入ったら、仕切り越しとはいえ異性が入ってるなんて思わないだろうな。


「でも入っているのが館君で良かったです。 他の人だったらどうしようかと。」

「僕でも本来は駄目なんじゃないかな? 思ったよりも目が覚めちゃってさ、せっかくだと思って温泉に入りに来たんだ。 昨日は坂内君と小舞君に早めにあげられちゃって、ゆっくり出来なかったんだよね。 安見さんは?」

「私は・・・少し寝付けなかったですね。 目を覚ます為に入ったのですが、これは逆効果だったかもしれないですね。 余計に眠たくなってきました。」

「お願いだから寝ないでね? 僕は助けに行けないんだから。」


 そう、今回に限っては眠られてしまってはどうすることも出来ないのだ。

 なにより今の僕は一糸纏わぬ姿をしているのだ。 それは向こうも同じこと、そうなっている状態で(助けに行けるのかは分からないけれど)僕と安見さんが一緒にいる姿を誰かに見られたら僕の人生は終わりを迎えるのは明白だ。 それだけは避けたい。


「分かっていますよ。 昨日は少しお喋りをしてしまって、少し寝足りないのですよ。」


 そう言うと安見さんは小さく欠伸をした。 そこで僕は改めて気付かされる。


 今このタイル越しにいる安見さんは裸、恐らくタオルは巻いているだろうが、安見さんも僕と同じくなにも着けていない。 そう考え始めてしまったら、もう鼓動が収まらなくなってくる。 邪念を振り払おうとも、ボンヤリと浮かんできてしまう。 これでは昨日のタイルに聞きしていた彼らと同じだ。 多分今これ以上入っていると、僕の茹でダコが完成してしまう。 体を冷やすために、一度湯船から出ることにした。


「おや、もう出られるのですか?」


「ザパン」という音が聞こえたのだろう。 タイル越しに安見さんが訪ねてきた。


「ううん。 ちょっと体が熱くなってきたから、冷まそうと思って。」

「あんまり当てすぎると風邪を引いてしまいますよ? それにこの温泉、今はそんなに熱く感じないようですが・・・ なにか体温が上昇するようなことをしていたんですか? 駄目ですよ? 心臓に負担をかけては。」

「誰のせいさ、誰の。」

「別に誰のせいでも・・・」

 そう言い終わろうとしていたところで、安見さんが喋るのを止める。 なにかに気がついたようだ。


「・・・・・・余計なことは考えてないですよね?」

「むしろ他に何を考えるって言うのさ?」

「・・・エッチ・・・」


 自覚していたつもりではあったが、他人に言われると来るものがある。 それが考えていた人物になら尚更だ。


 僕はもう一度湯船に浸かり、気になっていたことを聞こうと思った。


「安見さん、さっきお喋りをしたって言ってたけど、聞いてもいいかな? あ、いや、話せない内容だったら話してくれなくても、全然いいから。」

「そうですね。 少し加奈実さんと、ある決断をしました。」

「円藤さんと?」


 というか円藤さんのことを名前で呼んでたっけ? 昨日の会話でなにかあったようだ。 昨日の円藤さんの様子も少し変だったし。


「私と加奈実さんは、同じ人を好きになったみたいで、その人をどちらが落とすのか、という話をしました。」

「それ本当? ははっ、その男子は大変だなぁ。 そんな二人からアタックされるんだから、気が気でならないかもね。」

「気にならないのですか? その対象が誰なのか?」

「うーん。 それは人の問題だし、あんまり口に出したりしたらいけないと思うんだ。 だけど・・・」

「だけど・・・なんですか?」


 安見さんと円藤さん、どっちにも好かれている男子がいることに関して、気にならないと言えば嘘になる。 でもそれに水を差すような事はしたくないし、彼女達がどうするのか、僕には分からない。 だけれどこれだけは言いたい。 安見さんだからなのか、自分の傲慢なのか、とにかく言わなければ手遅れになるかもしれない、そんな事を勝手に思いながら、こんなことを口にした。


「安見さんは、誰かに取られたくはない・・・かな?」

「え? そ、それって・・・・・・」


 そこで会話が途切れる。 どちらも声が発せられない。 気まずい空間が流れ始めた。


「あ、わ、私、そろそろ出ますね! た館君も早くでないと点呼に間に合わなくなりますよ?」

「そ、そうだね! 僕ももう暖まったし、いいかな!?」


 2人とも慌てて浴室から出る。 脱衣所でタオルを使って体を拭きながら、先程言った事を思い返す。 恥ずかしい事は言ったわけではないが、言っちゃいけないことを言ってしまった。 そんな気分になっていた。


 みんなに会うまでに平常心を持たないといけないと、少し別の場所に行く事にした。

温泉などではタオルを湯船につけないと言われています。

ほんとの一糸纏わぬ姿をご想像いただければと思います。

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