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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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家庭部の活動

「うんうん。 大分いい感じになってきたんじゃない?」


 八千代先輩のアドバイスもあり、熊のクッションが完成した。 ぬいぐるみを作れるようにはまだまだ技術が足りないらしく、とりあえずはクッションでキャラクターが作れるようになってから、徐々に小さいものを作っていき、最終的にはストラップサイズにまで小さいものを作るようになれるそうだ。


 逆の方が安定しませんか? と質問をしたことがあるが、八千代先輩曰く


「小さいものから大きいものを作るのは意外と簡単なんだけど、大きいものを小さくするのは、それだけ気力と労力がいるのよ。」


 とのこと。 確かに細かい作業の方が色々と手の込むことはある。


「ありがとうございます。 それにしてもクッションを何種類か作りましたけど、これを幼稚園の方に贈るんですか?」


 横目に見るのは色々なキャラクターで作ったクッションの山。 デザインは違えど全部僕が一から作った作品だ。 前に聞いた通りなら、これらを幼稚園に寄付するらしいのだが。


「今回は送り先が違うわ。 養護施設の方に今回は届けるの。 送り先はひとつじゃないのよ?」


 養護施設か。 お年寄りや障害者の人が暮らす施設・・・・・・って認識で合ってるかな? こういうのって下手に口に出来ないからなぁ。 何気無い一言でも、その人にとっては害になることがあるし。


「これをどうやって運ぶんです? 手運びですか?」

「そうよ・・・と言いたいところだけど、流石にそれはないわ。 施設自体が遠くに設立してる場合があるから運ぶためのワゴン車は用意してあるの。 一応この学校の備品扱いでね。」


 なるほど。 確かに編み物とはいえ、数が出るとかさばってしまうから持ちにくくなるよな。


「それに利用するのは私たちだけじゃないし。」

「私たちだけじゃない?」


 その疑問を打ち消したのはドアが開いた瞬間に、生徒の1人が持っていたお盆の上に乗っているものだった。


「裁縫部の方も準備は出来ているかしら?」


 お盆を持った茶髪で短くツインテールを作った女子生徒(恐らく先輩)が八千代先輩に声をかける。 僕はそんな声を差し置いて、お盆に乗っているものに目がいった。


「これは・・・桜餅ですか?」

「その通りです。 館君。」


 答えたのは後ろからひょっこりと顔を見せた安見さんだった。 家庭部は「裁縫部」と「調理部」で分けられているが、基本は一緒の活動なのだとは庭木島先輩の談だ。


「そちらも準備は出来ているようだね。」


 そんな庭木島先輩が後ろから合流する。 その両手には手提げ鞄を抱えていて、恐らく作られている編み物が沢山入っているのだろう。


「先程言っていた施設に行くのは誰なんですか?」

「今回は僕らで行くことになるね。 裁縫部は召集しなければ自由だから集まるか分からないし、調理部は簡単には外には出られないしね。」

「おっと、私たちだけじゃないわよ。 もう一人ついていくわ。」


 そう言って現れたのは先程ドアを開けた人物、髪が長いのか後ろをヘアゴムで留めていて、元々からなのかまぶたが落ちて目が半開きになっている男子生徒だった。


「紹介するわ。 彼は佐渡 陸斗(さわたり りくと)。 君と同じ一年生よ。 因みに私は3年の竜胆 穂香(りんどう ほのか)よ。 よろしくね。」

「はぁ・・・。 館 光輝です。 よろしくお願いします。」


 なんだかぎこちないような挨拶になってしまった。 なんというか、この人苦手な人かもしれない。 勘というかなんというか。 とにかく本能的にそう感じるのだ。


「では早速行こうか。 あまり遅くなってしまうと迷惑になってしまうからね。」


 そう言って庭木島先輩が足早に荷物を持って歩くとそれに合わせて他の人も歩いていく。


「佐渡 陸斗・・・・・・ なんか知ってるぞ? どこで知ったんだっけ?」


 僕は頭の中からその情報を絞り出す。 確か物凄く最近だったような・・・


「でも凄いよね佐渡君。 料理は出来るし、勉強もトップクラスなんて。 お姉さん憧れちゃうなぁ。」


 そう竜胆先輩か佐渡君のことを言っている。 勉強がトップクラス・・・・・・?


「あ、思い出した! 今回のテストで1位だった男子生徒の名前だ!」


 中間テストで755点という驚異の数字を叩き出して、2位と20点もの差をつけた、本当の学年トップ。 それが「佐渡 陸斗」という名前だった。 まさかそんな彼が調理部に来ているとはほとんど知られていないことだろう。


「よかった。 僕のことを知っていてくれて。 光栄に思うよ。 館 光輝君。」

「え? 僕のことを知っているの?」

「球技大会の時に表彰台に上がっていた時に初めて知った。 そして君の中間テストでの順位と点数も知っている。」

「学年トップ様からして、下の人ってどう見えるわけ?」


 何故だか少し嫌味にも捉えられるような言い方をしてしまう。 初めて顔合わせしたのに、何故印象を悪くするようなことをしているのか。 自分が今分からなくなった。


「どうとも思っていないと言えば嘘になるけれど、あまりにも下の人とは、絡みたくないっていうのは本音かな。 実際僕は、次の林間学校に来る人間との交流は極力していくつもりだ。 別に孤立したいわけではないけれど、集団というのもあまり好きではないから。」


 その言葉を聞いて、なんだか取っ付きにくい性格をしているなと感じた。 でも友好関係を築くのにこれ程圧倒的な人材もいないだろう。 損得勘定で友達を作っているようで悪いけど、佐渡君とは話のレベルが違うのかもしれない。 そう感じた。



「今回もありがとうございます。 家庭部の作ってくれた桜餅がお年寄りには大人気でね。 やっぱり作ってもらわないと夏にならないってよく言われるんですよの。 子供たちにはこっちの編み物がよく取り合いになったりするのよ。 手作りだから余計にそう感じるんですかね。」


 養護施設に着いて、職員の方々に今日作ったものを渡すとそんな感想が聞けた。

 それを聞いただけでも嬉しい気持ちになる。 作って良かったと思えるようになるのだ。


 顧問の先生に乗せられたワゴン車の中で僕と佐渡君が隣同士に座ることになった。 他の人達は色んな事を話しているのに、僕の方はなんだか気まずくなってしまっている。 僕から喋りかけるべきなのだろうか? でもなにを話題にすれば・・・


「館 光輝君。」

「へぇ!? ど、どうしたの? 佐渡君?」


 まさか向こうから来るとは思ってなかったから変な声出ちゃったよ。


「この後、2人で話せないか? 夕飯もご馳走しよう。」


 まさかのお誘いに戸惑いそうになったけれど、そこはOKを出して、まだ帰ってきてないであろう母さんにNILEで連絡を入れておく。


 2人で話すことってなんだろう? 僕はドキドキしながらワゴン車の中で揺られるのだった。

男子の新キャラが登場しましたが、別に主人公とライバル関係になるわけではありません。

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