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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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父と二人

「どうだった? そっちは・・・って表情を見れば分かるわ。 楽しかったのね。」


 ジェットコースターを乗り終えた僕たちに逆サイド側から歩いてきていた天祭さんを含めた須今ファミリーと合流する。 表情に出ていると言っていたが、そこまで分かりやすかっただろうか?


「あぁ、十分に楽しめたよ。 ところで次なのだが、僕と光輝の二人で回りたい場所があるから」

「お? そうなの? 了解。 私達は私達で楽しんでくるよ。 男同士、気楽に話し合って来てね。」


 そう言って須今ファミリープラス僕の母さんは行ってしまった。


「それで父さん。 回りたい場所って?」

「ああ、こっちだ。」


 歩くこと5分、父さんと共に着いたのは


「錯覚迷宮?」


 遊園地では見かけることの多い、錯覚を利用した室内アトラクションだった。 こう言った場所は父さんの設計士魂がくすぐるのだろうか?


「まあ、回りたい場所があると言ったのは半分は口実なんだ。 お前と二人で話すための。」

「え?」

「では錯覚の世界へと、行ってらっしゃい!」


 並んですぐに入れたので、そのまま流れるままに入っていく。 最初に目に入ったのはチェック調の道だった。 しかも均等ではなく、所々で斜線が入っているため見ているだけでもその模様が動いているように見える。


「先程光輝はこう言ったね。 「色んな事をすると、胸の奥が少し熱くなる」つて。」

「そ、そうは言ったけど・・・歩くのが速いよ・・・」


 話をしながらもどんどん進んでいく父さん。 気持ち悪くないのかな?


「光輝、お前は気付いているのか気づかないフリをしているのか分からないけれど、本当は分かってるんじゃないのかい?」

「な、何にさ。」


 チェック調の道を抜けると、今度は少し広めの部屋だった。 先を進む父さんと、さっき入ってきた僕の姿を捉えている鏡を見ると、僕が小さくなって、父さんは逆に大きくなっていた。

 どうやらここはだまし絵トリックを利用したトリックルームのようだ。


「光輝は安見って娘に気を惹かれている。 そして一緒にいるだけで、心が暖まってくる。」


 先程僕が言ったことを反復するように父さんは言う。 父さんの後ろを追いかけて、またもチェック調の、今度は床に描かれている廊下を進む。 所々歪んでいるが、恐らくはトリックアートの一種でデコボコしているように見えるだけだろう。


「つまり光輝は今、その子に恋をしているんだよ。 友達としてではなく、1人の女の子としてね。」

「こ、恋? 僕が・・・? うわ!」


 唐突な言葉だったのに気をとられて足を奪われる。 どうやら本当に歪みがある部分に足をおいてしまったようだ。


「珍しいね。 光輝はこういうことでは動揺しないと思っていたんだけどね。」

「急に恋なんて言われたら動揺するよ。 そりゃ高校生だし、好きになるって言う感情が出てくるのは当然だとは思うけれど。 ま、まだ早いんじゃないかな? まだお互いの事を知らないわけだし。」


 廊下を歩き終えると、四方八方を鏡で覆われた迷路にたどり着いた。 全て鏡と言うわけではなく、所々に鏡ではない場所があり、そこが道となっている。


「そう、だから順序がいるわけだ。 いきなり「付き合って下さい」何て言うのはナンパ男の考えだ。 そう言った輩は基本的には後の事を考えていない。」

「でもそんなのは一般論だし、そこから始まる人生だってあるでしょ?」

「父さんは光輝にはそうなって欲しくないとも思ってる。 お互いの事を知るのには時間がかかるが、それも含めての「付き合う」だと父さんは考えている。 実際、陽子さんとの時間も決して短くはなかったよ。」


 自分の顔を鏡で見ながら、父さんの話を聞く。 今の僕に安見さんに想ってもらえることは出来ているだろうか?


「時間が長いからこそ、しっかりと見定めるんだ。 本当に彼女でいいのかと、彼女と一緒にいたいかと。 考えることは学生の性分だ。 僕も陽子さんも、お前を最初から拒んだりはしないから。」

「父さん・・・・・・」


 話が終わるといつの間にかアトラクションから出ていた。 あっという間だったのでどんな無いようだったか半分くらいは抜き飛んでしまった。


「そろそろ向こうも終わったかな?」


 そう言って最初の場所に戻る。


「あ、帰ってきた。 お帰り。 どうだった?」

「うん。 なかなか興味深いアトラクションだったよ。」


 父さんはちゃんと覚えているようで、しっかりと感想を述べていた。


「どうでしたか? 行ってきた場所について私も知りたいです。」


 安見さんからそう質問してくる。


「うん。 僕らが行ってきたのは「錯覚迷宮」に行ってきたんだけど、色んなトリックルームがあったよ。 でもあれを連続してみていると目が悪くなりそうだよ。」

「目の錯覚というのは人間の科学ではまだまだ解消されていないそうですよ?」


 そんな会話で心を落ち着かせる。 会話をしている間も安見さんの様子を伺いながら、彼女を見る。 恋と言うものはまだ分からない。 僕も安見さんもその事に関してはまだ無頓着だし、意味だって理解は出来ない。


 だけれど一緒にいて、表情が柔らかくなる感覚は決して嘘ではない。 その想いが届く日はいつか来るのか。 それはまだ分からない。



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