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須今 安見は常に眠たげ  作者: 風祭 風利
第1章 入学~一学期
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GWに向けての準備

<光輝視点>


「母さん。 なにか手伝えることある?」


 休日日課である朝のジョギングを終えて、シャワーを浴びてすぐに朝食の準備をしていた母さんに声をかける。


「別にこれといってはないわよ?」

「そっか。 なにかやってほしいことがあったら言ってくれない? 出来ることならやるよ。 今日と明日はどこにも出掛けないし。」


 そういって僕はリビングの椅子に座る。


「別に無理してやることなんてないわよ? あんたの手を借りるようなこともないし。」

「それでもいいんだよ。 母さんの役に立てるか分からないけれど。」

「・・・・・・ふーん。」


 母さんが目玉焼きとベーコンの乗ったお皿を僕の前に置いた後、なにかを察したかのように声をあげる。


「・・・なに?」

「そうまでして資金が欲しい理由はなんなのかなって思ったけれど。 そっかそっか。 そういうことなのね。」


 僕のうちのルールで親の手伝い、主に家事を全般に手伝いをすることでお金を貰える事になっていて、物心ついた時から何かしら欲しいものがあるとおねだりではなく、お手伝いでお金を稼いだものだ。 ちなみに1時間で1000円のお給金となる。 昔はもう少し安かったが、高校生になって給料が上がったのだ。


 それは嬉しいのだが、なにか勝手に納得している様子。 一体何が分かったのだろうか?


「光輝、ゴールデンウィークの半ばから最終日まであの人が帰ってくることは知ってるわよね?」

「うん。 電話で話してるのは聞いたよ。」


 あの人とは単身赴任中の僕の父さんの事である。 彼がこのゴールデンウィークに帰ってくるとの事だ。


「あなたも知ってるとは思うけれど、家族水入らずで過ごしたいのも知ってるわよね?」

「それは昔からそうだったから、それは守りたいと思ってるよ?」

「・・・・・・まああなたのやりたい事だし、あの人もその辺りは理解してくれるわよ。」


 僕の両親はお互いに穏和な性格で、よっぽどなことがない限りは僕のことを叱ってくれたとこは無い。


 そう言うと母さんは少し席を外して、数分後にリビングに戻ってくる。 そしてその手には数枚のお札・・・・・・


「いや! それは貰えないよ! なにもしてないのに!」


 母さんが手に持っていたのは一万円札が3枚と5千円札が1枚。 それをポンと出してきたのだ。


 母さんも父さんも、収入に関しては一般的なサラリーマンよりも上回っているので、こうして息子にこれだけの金額を渡せれる事は出来るのだが、いきなりこんなにお金を渡されても困ってしまう。


「別に必ず会って欲しい訳じゃないのよ。 1日位あなたがいなくったってあの人は怒らないわよ。 まずは高校で出来た友達を優先しなさい。 中学の時はあんまり友達と遊んでなかったからね。 母さんは嬉しいのよ。」

「母さ・・・」

「だけど今度その須今さんって子、紹介してね。」


 その一言に感動が冷める。 こ、この人は・・・本当にこういう性格が自分の遺伝子に入ってるって考えると不思議に思えてしまう。


「ねぇ、それって父さんにも紹介しなきゃ駄目?」

「別に今じゃなくてもいいわよ。 紹介したいって思ったときにいないかもしれないけどね。」


 それならまだ大丈夫かな? しかし安見さんの説明をなんだか近々しそうかもなと、直感的に思ってしまった。


<安見視点>


「お母さん。 無理を承知でお話があります。」


 日曜日の夜、夕飯を食べ終えた私たち家族はそれぞれの場所に行き、私は洗い物をしているお母さんに声をかける。


「どうしたの? 安見。」


 お母さんは聞き返してくる。 私は一度深呼吸をして、意を決して言葉を発する。


「来週に控えたゴールデンウィークの為の軍資金を私に下さい!」


 そういって私は頭を下げる。 お母さんが振り返る前に頭を下げたのでどのような表情をしているのか分からない。 最初に言ったように無理ならば諦める事のだけである。


「うわ、凄い・・・お姉、堂々としてるわ。」


 リビングにいた味柑からそんな言葉が聞こえてくる。 確かに今の今までこんなことをした記憶はあまりない。 それだけ自分の中で決めていたことなのかもしれない。


「・・・珍しいわね。 どういう風の吹き回し?」


 お母さんもさすがに疑問を問いただしてくる。 声色的には怒っているわけでは無さそうなので良いのだが、ただ「友人と遊ぶため」という理由で資金を出してくれるとは限らない。 生活は厳しくはないものの、年頃の娘が3人にもなれば、それだけ出費も出てくる。 その事も踏まえて理由を捻り出そうとしていたら両肩を捕まれた。 前からではなく、後ろから。


「安見ったら、高校に入ってボーイフレンドが出来たんだって。 それで、その子と出掛けるためにお金が欲しいって訳。」

「ね、姉さん! そんな風に言わなくても・・・!」


 肩を掴んだ人物、我が姉の考え無しの発言に驚きを隠せなかった。 確かに館君と出掛けることには間違いないが、なにも二人きりという訳ではない。 そして館君は友達である。 そんな関係ではない。 故に誤解をされないように何かを言おうとしたら、「カシャン」という音がした。 見るとお皿が綺麗に洗い終わっていた。


「・・・なるほどね。」

「お母さん待ってください。 確かに友達と一緒なのは認めますが、さすがにボ、ボーイフレンドって事はないので、あの、その・・・」

「安見、顔赤くなってるわよ。」


 姉さんに指摘されて手を顔に当てると確かに顔が熱くなっていた。 館君をそのように意識していなかっただけに、顔が熱くなる理由が分からなかった。


「ふふっ、いいのよ。 音理亜や味柑と違ってどこか遠慮がちだったし、なにより高校でそんな友達が出来て、お母さん安心したわ。」

「いいなぁ。 お姉はそんなあっさり貰えて。」

「味柑。 あなたは少しは自重なさい。 それと宿題がまだ途中でしょ? 早く終わらせちゃいなさい。」

「はーい。」


 母さんに唆されて、味柑は部屋に向かっていった。 世話の焼ける妹である。 人の事は言えないが。


「ゴールデンウィークまでには用意するわ。 貴女たちも、お風呂なりなんなりして、寝る準備しなさいな。 ゴールデンウィークとは言え平日は学校なんですから。」

「はいはい。 安見、一緒にお風呂に行きましょ?」

「分かりました姉さん。 お母さんもありがとうございます。」

「なかなか聞けない貴重な娘の感謝の気持ち。 ありがたく受け取っておくわ。」


 お母さんはそう優しく微笑んでいた。 そして私と姉さんはお風呂場へと向かっていくのだった。

GW編への第一歩

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