節分の日の朝
働いてる会社の定休日は水曜日、水曜日を挟んで火曜日と木曜日の何方か一方も交代で休める。
だから今週は明日の火曜日も休み。
なので、子供が生まれてからは自重してたけど偶には良いだろと、ちょっと一杯ひっかけてから帰ろうと飲み屋に立ち寄る。
お銚子1本だけ飲んだら帰ろうって思ってたのに、1本が2本になり2本が3本になって行き、気がついたら日本酒だけで無くウィスキーをグビグビと飲んでた。
トイレに行くついてに腕時計に目をやると、何時の間にか火曜日になっている。
ヤバい。
妻にぶっ飛ばされる。
慌てて会計を頼み家路に就く。
フラフラと歩き道沿いにあるコンビニの前を通っていたとき店のショーウィンドウに、鬼の面や節分の文字が貼られているのに気が付いた。
そのショーウィンドウの文字を凝視して足が止まる。
ヤバい、午前様になった事よりもっとヤバい事を思い出した。
節分の前の日は子供の誕生日、昨日の朝、母と妻に、今日は子供の誕生日だから早く帰って来るようにって言われた事が頭に蘇る。
ヤバい、ヤバい、アルコールが自分の身体から抜けて行く。
家に向けて駆け出す。
家の前で一度立ち止まり中の様子を伺う。
家の中は真っ暗、皆んな寝ているのだろう。
足音を忍ばせてドアを開け玄関の中に入った途端、明かりが灯された。
恐る恐る顔を上げる。
鬼の形相ですりこぎ棒を持った母とゴルフクラブを持った妻が、仁王立ちしていた。
「智樹の誕生日だから早く帰って来なさいと、あれほど念を押したのに午前様での帰宅ですか?」と、母が言い。
「帰って来るときに小さな物で良いから、ぬいぐるみを買って来てあげてねって言っといたのに何で、 手ぶらなの?」と、妻が言う。
母と妻だけで無く騒ぎに気が付いて起き出して来た智樹が、私の顔を見ると台所から待って来た豆を投げつけて来た。
「オニはそと! オニはそと! オニはそと!」と言いながら、バシバシ豆を投げつけて来る。
私は玄関土間に頭を擦り付けて土下座し、妻と母と智樹の怒りが静まるのを待ち続けた。
こうして今年の節分の日の朝を私たちの家族は、迎えたのである。




