虚しく
俺は冬の使者、木枯らし。
ビューゥゥゥゥー! と吹きすさぶ冷たい風。
だけどここ10数年は地球温暖化の影響で吹きすさぶ機会が無かった。
それが久々ぶりに気温が下がり俺の出番がまた来たんだ。
ビューゥゥゥゥー!
ビューゥゥゥゥー!
俺は南南東微南の方向に向けて駆け抜ける。
『冬が来たぞー! 寒い、寒い、冬が来たぞー!』
ビューゥゥゥゥー!
ビューゥゥゥゥー!
冬の使者としての仕事に精を出す。
ビューゥゥゥゥー!
ビューゥゥゥ……?
『アレ? おかしいな』
何時もなら俺が来た事に気がついた生き物たちが慌てふためきながら、餌集めを早めたり冬眠する為の穴探しを始めたりするのに、大地に生き物の気配が無い。
そういえば植物も枯れている。
2000年以上生きている屋久杉の爺さんに声を掛けた。
「爺さん、爺さん、なんで生き物の気配が皆無なんだ?」
屋久杉の爺さんはノロノロと顔を上げ俺を認めると、返事を返して来る。
「あぁ、お前さんか、皆んな、皆んな、死んだよ」
「どういう事だ?」
「地球温暖化が進み、海面が上昇した所為で食料を生産できる土地が減り、その少なくなった土地を巡って争いが起こり、最悪の兵器の投げ合いを行って人間は絶滅、生き物たちはそのトバッチリを受けて同じように絶滅したんだよ。
儂ももう駄目だ……」
爺さんはそう言ったきり黙り込んだ。
ビューゥゥゥゥー……
ビューゥゥゥゥー……
俺は生き物がいなくなった大地の上を、虚しく駆け続けるのだった。




