93:完全に引きこもりの日々
今日の午前中は、スチュワートと共に、久々に乗馬をする予定だ。
いつもなら部屋でパズルをしていたが。
スチュワートの方から乗馬に誘ってくれた。
「なんだかんだで、私達はクリスタル・パレス以外の場所にも行けます。でも聖女アメリアは、ここから動けません。クリスタル・パレスの敷地は広大でも、閉じ込められていることに変わりはないですよね。しかもあの書庫の事件があったから、もっぱら屋内で過ごすことが増えていませんか? それでは気が滅入ってしまいます。気分転換をしましょう。馬でも走らせて」
こんな提案をスチュワートがしてくれるなんて……意外だった。でも確かに、スチュワートが言う通りで、完全に引きこもりをしていた。
外で過ごすことが多かったジェームズ副団長とは、この前見ることができなかったポップアップブックを私の部屋に運び、二人で見ることになった。
ロバートとは、書庫に現れた不審者事件の話をしたかったので、必然的に部屋で過ごした。
メリトゥス副神官長は、部屋に香本を持ってきてくれて、それを二人で眺め、香りを楽しむことになった。
ディオンとは複合映写機の上映を室内で楽しんだ。つまり、外出ゼロで過ごしている。だからこの乗馬のお誘いは……何気に嬉しかった。
ということで乗馬にあわせ、ドレスから丈が短いワンピースに着替えた。
ミルキーピンクにライラック色のグラデーションで、スカートの裾に向け、小花が可愛らしく刺繍されている。少し涼しくなってきたので、レースのボレロを羽織り、足元はショートブーツだ。
スチュワートは、白シャツにフォレストグリーンのズボン、焦げ茶色のブーツ、そして緑がかったグレーのマントを羽織っていた。
久々に私が外へ出るということで、ルイ王太子がつけてくれた近衛騎士、私専属の女性騎士、警護の騎士達は騒然としている。そんな彼らを尻目にスチュワートは厩舎へ向かう。
「スチュワート様、まだみんな追いついていませんよ?」
「大丈夫ですよ。こちらも馬具をつけるのに、時間がかかりますから」
そんなこんなで久々に外に出て、思いっきり新鮮な空気を吸い、森へと向かった。
森では川沿いに馬を走らせ、途中の浅瀬で川を渡り、山の麓までやってきた。後ろに続く騎士達は思わぬ遠出に驚きながらも、楽しそうにしている。
私が引きこもれば、私を警備する騎士も同じく引きこもりになるわけで。こうやって外に出て気分がいいのは、彼らもまた、同じはずだ。
「スチュワート様、今日は本当に外へ連れ出してくださり、ありがとうございます!」
「喜んでもらえて良かったです。やっぱり聖女アメリアには、笑顔が似合いますからね。さて。ここらで馬を休ませ、もう少ししたら、戻りましょうか。さすがに今日はお昼を用意してきていないので。クリスタル・パレスに戻ってから昼食にしましょう」
「はい!」
馬から降りると。まずは馬に川の水を飲ませる。そして木に馬をつなぐ。馬はそばに生えている草を食べ始めた。少し離れた場所でも、騎士が同じように馬の世話をしている。
「聖女アメリア、ここに座りましょう」
スチュワートはつけていたマントをはずし、川のそばに広げ、そこに座るように声をかけてくれた。
珍しくマントをつけていると思ったら、このためだったのね。
こういうところの気遣いは、さすが公爵家の嫡男、と思ってしまう。
ありがたくマントに腰を下ろす。
するとスチュワートは持参していた水筒の水を飲ませてくれた。
「あー、美味しいわ。ありがとうございます、スチュワート様」
ものすごく冷えているわけでもない。本当にただの水だが、とても美味しく感じていた。それは清々しい気分の影響も大きいと思う。
「クリスタル・パレスで過ごすようになって、間もなく2カ月ですよね、聖女アメリア」
自身も水を飲みながら、スチュワートが私を見た。
目元のほくろが色っぽいスチュワートは、本当に普通にイケメンだ。
「そうですね。……なんだかあっという間です」
「ロバートに気を遣う期間は、過ぎたのではないですか?」
「え……?」
なんのことかと思い、隣に座るスチュワートを見ると。
吹く風を受け、スチュワートは気持ちよさそうに目を閉じている。そして静かに話し出した。
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お昼、もう1話更新します。
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