二人だけのユートピアを探しに
フレアの言うとおり、六十年とは何とも儚い時のように思えた。
そして俺はリサの墓の前で思いで話を俺が勝手にしていた。
子供の頃、俺とリサは冒険者ごっごをしていて、いつか最強の冒険者になろうと思っていたのだ。
その夢は叶い、そして平和をもたらして、俺とリサは伝説の冒険者になれた。
そして俺とリサは結婚して、子供も作り、リサは年終えて亡くなってしまった。
もう俺が愛するリサはどこにもいない。
いるとすれば墓を掘り返せばリサの骨が残っているだけだ。
そうして六十年とは俺は儚いと思ったが、時代が変わり、モンスターの姿も無くなってきた。
鉱山を荒らすミノタウロスも絶滅してしまい、農作物を荒らすスライムも今はスライムが農作物を荒そうとすると、スライムは殺されてしまう仕掛けが出来たらしい。
本当に六十年とは儚い時だが、人間にとっては長い年月が経ったと思える。
それに伝説の勇者ダイン事、俺はもう用済みの様になり、街の人から白い目で見られるようになってしまった。
俺はその時思ったんだ。人間とは勝手な生き物だと。
俺がルシファーを倒さなければ、人々は生きる事が出来なかったのに、それで不要になったら俺達の様な冒険者はいらない存在になってしまった。
そして俺は一人ぼっちになってしまった。
俺はリサの墓の前で涙を流していた。
リサに蘇って貰いたいと思ったが、リサにフェニックスの尾を振りかざしても、リサは生き返る事は出来ない。フェニックスの尾は人を蘇らせる道具だが、寿命が来たら生き返らせる事は出来ないのだ。
だったらリサを俺の様に吸血鬼として蘇ってはくれないかと思ったがそれも無理な話だった。
そうしてリサの墓の前で俺が涙を流していると、フレアが現れた。
「フレア、お前・・・」
「人間の寿命など儚い物じゃろう。それにお主達が平和をもたらしたこの町もお主にとって肩身の狭い思いをしておるのじゃろう」
「確かにそうだ。俺達は街に平和をもたらした。でも人々は俺達の事を厄介払いをする輩ばかりだ。本当にこんな人々に対して命や魂までかけて助ける価値なんてあるのだろうか?」
「ダインよ、お主の言うとおりだ。この世界はお主の言うとおり、人々は救うに値しない奴らばかりじゃ。お主も身をもって知ったことだろう。確かにお主達は伝説となったが、そんな事人々に対して関係など無いと思っている」
「俺はこれからどうすれば良いのだ」
「ダインよ。我はこの六十年間ずっと待っていた。汝は我、我は汝、今こそお主と我で共に生きるときが来たのだ」
「俺はその気は無い。俺が愛した者はリサ以外にいない」
「そのリサはもうこの世にはおらぬのじゃ。それにお主の子供もそろそろ無くなり、その子孫もお主の事を邪魔者扱いするだろう」
フレアとは六十年ぶりに会ったのだが、不思議と懐かしい思いはしなかった。
「我はこの日を待っていた。お主は我と共に来るのじゃ。そうしてお主と我で幸せな居場所を探しに行こう」
「幸せな居場所?そんな所がどこにあるの?」
「それはお主と我で探しに行くのじゃ。だから言っておるじゃろう。我は汝、汝は我と」
俺は迷った。もう俺とリサは相思相愛だったが、もうこの世にはいない。
俺は渋々だが、フレアと行くしかないのではないかと思ってしまう。
「じゃあ、フレア、俺はお前と共に行くよ。もう俺に残されている者は何も無い」
「それで良いのじゃ、我とお主で幸せのありかを永遠に探し求める旅に出かけようじゃないか」
そうして俺とフレアの旅が始まったのだった。
フレアは言う。また大魔王が復活しようとしていると。
その原因は人々の憎しみや嫌らしさに満ち満ちているからだ。
でも俺はもう人々の為に大魔王ルシファーをやっつける事はしないと思った。
フレアと旅の途中で、ゴブリンに襲われそうになったエルフがいた。
俺が助けに行こうとするとフレアが助けに行き、ゴブリンをホーリーセイバーでやっつけたのだった。
「ありがとうございます。あなたは私の恩人です」
するとフレアはそのエルフの女性の胸元を掴んで、
「お主はお礼だけで済まそうとするのか?」
エルフは怯えていて言葉も出ない様子だった。
「さあ、今持っている有り金すべてを我に献上しろ」
「このお金は今月の生活費に当てているのでそれだけは勘弁して下さい」
「今、お主を助けたのは誰じゃ」
「あなた様です」
「だったら、我の言うとおりそこに我に有り金すべてを献上しろ。さもなければお主も殺すぞ」
「分かりました」
そう言ってエルフの女性は有り金すべてをフレアに渡したのだった。
「おい、フレア、今のはやり過ぎなんじゃないのか?」
「何を言っておる。人々は勝手な生き物だ。礼だけで済まそうなんておこがましい。お主も人間の愚かさを見てきたのだろう。じゃからこれぐらいの事はしないとお主も生きては行けぬぞ」
そうだ。人々は愚かな生き物だ。都合の良いときにだけ、いい顔をして俺達をあがめて来たが、その必要が無くなったら、手のひらを返すように俺達を邪魔者扱いをしてきた。
確かにフレアの言うことは正しいのかもしれない。いや正しい。俺はそう思っている。
俺とフレアは互いに旅立つ事にした。
この大都市にも別れを告げて俺はフレアと旅立つ事にした。
旅立つって言っても俺はどこに行けば良いのか分からないが、フレアは俺とフレアとのユートピアを探しに行くことにしているのだ。
そして夜が更けて、森の中で野宿をする事になった。
俺とフレアは吸血鬼なので空腹をしのげる体になっている。
何かを食べようとすれば食べれるのだが、久しぶりに晩ご飯を食べない自分に何だか不思議に思ってしまった。
俺はリサが作ってくれたカレーライスが食べたいと思った。
でも食料はある。
先ほどのエルフからぶんどった金でイノシシの肉を手に入れる事が出来たのだ。
早速たき火を焼いて、そのイノシシの肉を食べる事にした。
そろそろ肉が焼ける、俺は肉に手を伸ばして食べてみるととっても美味だった。
「フレア、これはおいしいよ」
「じゃろう、お主は我に感謝をするのだ」
「ありがとうフレア」
フレアも肉にかじりつく。
フレアは少女で赤い赤い目をしていて、赤いワンピースを着てそれに体は小さいのに胸が凄く大きい。
俺はそんなフレアに欲情をいてしまいそうだった。
でも俺はリサと言う、幼なじみの女の子がいたのでそう言った事はしてはいけないだろうと必死に欲情を抑えた。
「何じゃ、お主よ、我に欲情をしたのか?」
「いや、してないしてない」
「嘘をついても分かるぞ、お主だったら我を抱いても良いのだぞ」
するとフレアはその長いスカートをまくし上げて、パンツが丸見えになってしまった。
「ちょっとフレア、女の子がそんなはしたない事はしてはいけないよ」
「お主は我に欲情はせぬのか?」
「するけれども、女の子がそんなはしたない事をしてはいけないってだけ」
「ならば、お主はどのような女が好みなのじゃ」
フレアからの質問にリサが頭の中によぎった。
でもリサは人間で八十と言う吸血鬼としては、儚い一生を遂げてしまった。
「我はお主の伴侶じゃったリサとは違う。でもお主はいつかお主の頭の中を我で染めてやる」
本当に染まるのだろうな。
だから俺はフレアのパンツに手を付けた。
「何じゃ、お主よたわいもなく我の魅力に落ちて行ったな」
俺はフレアを抱いてフレアと禁断の愛を二人で育んだ。
「何年ぶりじゃろうか、前世でお主を亡くして、それで良くお主に良くこの様な事をやったけれども、子供を作る事は出来なかった。吸血鬼同士でこの様な事をしても、なかなか子供は生まれぬのじゃ」
俺の頭はリサではなくフレアに染まっていってしまった。
こうしてリサには悪いが、これも生きるためと思って頭の中をフレアに染めなければならないと思った。
そう、これからは自分の都合しか考えない人々の為に生きるのではなく、俺にはフレアがいてフレアには俺がいる。
その互いの為に生きて行ければ良いと思っている。
これからが俺の吸血鬼としての人生が始まる。
森の中で野宿するのは初めての事だが、何か新鮮で何か良い。
以前は俺は勇者ダインと名乗っていたが、その名前も人々の心の中には残っていないだろう。
大魔王ルシファーは千年に一度蘇ると聞いている。
でもそんなことは俺達には関係ない。
俺達だけで生きられる場所を探しにフレアと旅に出るのだ。
そうして森の中でも光りが差し込み、朝がやってきた。
俺は軽く伸びをして、フレアはまだ眠っている。
「おい、フレア、朝だよ」
「ふむ、朝か、そろそろ起きようとするか」
そう言ってたき火を焼き昨日残ったイノシシの肉を食べて当てもない、俺達のユートピアを探しに行くことにした。
「俺達のユートピアはどこにあるのだろうか?」
「それを探す旅に出るのじゃ。旅は面白いぞ。我は六十年間お主とリサと言う娘と暮らしている間にずっとこの日を待ち望んでいたんだぞ」
本当にフレアは暇人なのだろうか。でも吸血鬼にとって六十年と言うのはアッという間の出来事に過ぎないからな、俺もリサと六十年間生きてきたが、それもアッと言う間な感じがした。
俺達は外に出て、草原に出ると、魔物が何匹かはいたが、俺達を恐れて逃げ出してしまった。
そう言えば俺にはアルが作ってくれたエクスカリバーと不屈のダンジョンで手に入れたラグナロクを持っている。
こんな物もう必要ないと思っていたが、いつか役に立つのではないかと思ってずっと所持している。
エクスカリバーとラグナロクを見ていると何かリサとアルとリディアの事を思い出す。
でももうリサもリディアもアルもいないのだ。
三人も人々と共に時代の移り変わりとしていなくなった。
だから俺はそんな人々よりも長く生きられる吸血鬼としてこれからは生きるしかないと思っている。
俺は二つの剣をしまい、想い出に浸っていると、フレアが、
「何をしておる。行くぞ」
「ああ!」
そう言って俺達は二人だけのユートピアを探しに行くことになった。




