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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第6章 だから俺はお前を支える
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部屋、二人で集合

 五限が終わったら部室前で待ち合わせることになった。

 音琶も五限があるらしく、タイミングも丁度いいしな。


 後で分かったことなのだが、俺と音琶はクラスは違えど学部は同じだったから、わりかしお互い近い場所で授業を受けているとのことだった。

 それでもなかなかすれ違ったりしないのは、一つの学部でクラスの数が非常に多いのが原因だろう。


「滝上、この後みんなで飯行こうかなんて思ってるんだけど......」

「悪いこれから用事ある」


 三限時のやらかしを引きずっているとかいうわけではなく、本当に用事があるから日高の誘いを断るのは仕方のないことだった。


「なあ結羽歌、お前この後滝上と練習でもすんの?」

「いや......、しないけど......」


 日高が結羽歌に何か聞いてるけど、余計なことは聞かなくていいからな。


「もしかしてこれから意中の女と待ち合わせとかじゃない?」


 部室に向かう俺の後ろで立川の野郎がわざと聞こえるかのように囁いているけど、気づいていない振りをしてその場を後にした。

 女と待ち合わせてるのは決して間違いじゃないけど、言い方ってもんがあるだろ。

 大体意中ってなんだよ意中って。

 

 ・・・・・・・・・


「待たせたな」


 部室に着くとギターケースを抱えた音琶が先に来ていた。

 6月になってだんだん暖かくなってきたからか、音琶は白い生地のブラウスに身を包んでいて、どこか涼しげな雰囲気を醸し出している。

 見えそうで見えない二の腕とウエストのラインが色っぽく、目のやり場に困ったけど気にしてない振りをしないといけないのがまた難しかった。


「お疲れ。あのさ、練習のことなんだけど......」

「何かあったのかよ」

「それが......」


 どうやらこの時間から部室はバンド練習で埋まっているらしい、別にバンド練習中部室に入ってはいけないというルールは掟に書いてないけど、流石に集まって練習している人達の前で個人の練習をするわけにもいかない。


「どうしたらいいかな?」

「お前はどうしたいんだよ」


 音琶の問いかけに俺が逆質問する感じになったけど、これは別に冷たい接し方とかいうのではないよな?


「うん、今から夏音の部屋行ってもいいかな? そこで練習できたらって思ってるんだけど......」

「......」


 昨日の昼、部屋で飯を作ってあげたばっかりなのに、また今日も音琶を部屋に入れることになってしまった。


 それにしても、ボーカルの練習って何を教えればいいんだか、大津からはサポートするだけでいいとしか言われてないけど、最低でも何かしらの指導はしてあげたいものなんだが。

 



「え? 今なんて?」


 部屋に入り、折角人を入れておいて何もしないというわけにはいかないから、夕飯を共に取ることにした。

 次の夜勤で給料明細をもらい、それに同意したら通帳に給料が振り込まれる仕組みになっている。

 いくら稼いだのか気になるところだが、今はそれどころじゃなくなった。


「だから! XYLOでバイトすることにしたの!」


 どうやら聞き間違いではなかったようだ、まさかあれほど迷っていた音琶が昔辞めたバイトに復帰するなんてな。

 でも結構時間かかってたし、それなりに悩んで決めたのであろう。


「それは良かったけど、でもいつそんな話したんだよ」

「夏音はほとんど覚えてないだろうけど、この前の打ち上げの時にオーナーに思い切って言ったんだよ」


 そうだったのか、確かにあの時のことはほとんど覚えてない、酔った勢いで誰かに迷惑掛けてなきゃいいんだけど。

 ......少なくとも音琶には迷惑掛けてるな。


「これでひとまず安心ってとこか。アンプの弁償代は俺が先に払うから、最初の給料貰ったらすぐに俺に後払いするんだぞ」

「え? いいの!?」


 音琶は拍子抜けたような表情をして驚いている。

 でもこうするしかないんじゃないか、結羽歌にも全体の3分の1は払って貰うつもりだしあいつだってそろそろ最初の給料貰う頃だろう、面倒事は早いとこ片付けてしまった方がいい。


「いいよ」

「そっか、ありがと」


 俺から少し目を逸らしながら音琶は返事をした。

 少しだけ頬が紅潮していたけど、今そんな状況だったか?


「......ほら、早く食わないと冷めるぞ」

「あ! ごめん」


 そう言われて焦るように箸を動かす音琶。美味そうに食べるのはいつも通りだった。


 ***


「それで......、なんでこうなったんだっけ?」


 時刻は20時になろうとしていた。

 これからギターボーカルの練習をしようとケースからギターを取り出していると、台所で食器を洗い終わった夏音に問いかけられた。


「部室が使える状況じゃなかったんだから、仕方ないでしょ?」


 私にとっては何を今更、みたいな質問だったけど夏音にとっては二日連続で私がここにいることが信じられない、って思ってるのかもしれない。


「そう言えばさ、もう遅いかもしれないけどこの部屋って防音とか大丈夫なの?」

「ああ、それは大丈夫だ。あと音琶、お前はもう少し服装に気をつけろよ」

「え? 別に普通じゃない?」

「いや、だからその......、見えてんだよ」

「ん?」


 振り向くと夏音は私の目より少し下の部分を見ていた。

 見えてるって何のこと? って思ったけど、少し背中が涼しい感じがするから手を触れて確かめてみた。


「夏音......」


 ギターを取り出すとき、屈んだ弾みでブラウスの裾から背中が見えていたから指摘(?)したらしい。

 案の定パンツの上の部分も見えていたから、ズボンの上の部分で隠した。


「お前女なんだから、そういうのはもう少しな......」

「もしかして夏音って結構むっつり?」

「そんなわけないだろ」

「でも興味はあるみたいだね~」

「ねえよ!」


 慌てて否定してくるあたり「自分はむっつりです」って言ってるようなもんなのに......。

 でも夏音にそういう所気にしてもらえるのって、なんか嬉しいな、別に狙ったわけじゃないんだけど最近暖かくなってきたから上着の中にシャツ着てないし、疲れた時とかに身体を伸ばすとおへそが見えててもおかしくないかも。


「いいから練習するぞ!」

「はーい」


 すっかり顔が紅くなってしまった夏音に言われるがまま、私は今度こそギターとスマホの中の音源を用意し、


「それじゃあ見ててね」


 合図を出して歌い出した。

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