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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第5章 only my guitar
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疑念、どれほどの実力なのか

 約3週間ぶりのXYLO BOXだが、内装は何度見ても惹かれるものがある。


 今回のライブは軽音部のリーダー格とも言えるバンドが出るということもあって、対バンするバンドもこの前より有名なものらしい、あくまで市内だけの話らしいが。

 YouTubeとかTwitterで検索すれば過去のライブ映像が出てくるみたいではあるけど。


「おはようございます」


 会場に入ってまずはカウンターに目を向ける。

 するとオーナーの洋美さんがすぐそこにいたから、ライブハウスの基本の一つである挨拶をした。


「あ、おはよう! 久しぶりだねえ」

「お久しぶりです」

「どう? あれからバンドは上手くやれてる?」

「全然ですよ、先のことを考えると頭が痛くなります」

「え? そんなんで本番大丈夫なの?」


 すると横から音琶が割り込んできた。

 後ろからついてきてたのはわかってたけど、いきなり洋美さんに挨拶もせずに何をしているんだか。


「あ、音琶も久しぶり」

「あっ! すみません、お久しぶりです」


 何に対してのすみませんなのかは挨拶を忘れたことへの謝罪だと解釈しておこう、それにしてもさっきまでの元気の無さが嘘のようなんだが。


「何? 音琶苦戦してるの?」


 ニヤニヤしながら音琶に問う洋美さん。

 この人結構性格悪いよな、俺は苦手だ。


「まあ......、苦戦してないわけじゃないですし......。でも本番までは絶対間に合いますから大丈夫ですよ!」

「へえ......」


 勝手にハードル上げやがって、それでもし間に合わなかったらどうするんだよ、正直言ってあの状況だと勉強する時間も忘れて練習してもらわないときついと思うぞ。


「......洋美さん、あんまり期待はしないで下さい。今日も練習したんですけどあいつ歌い方やばかったですし」


 音琶がステージの方まで行ったのを確認して、今の状況を正直に話す。


「まあそうだとは思ってたよ、あのこ元はギター専門だし、それに......」


 途中まで話して洋美さんは黙り込んでしまった。


「それに、何ですか?」

「いや、何でもない。とにかく音琶にボーカルは難しいと思うけど、私からは頑張ってとしか言えないかな」

「それだけで充分です」

「そう、でも見に行くから楽しみにしてるよ」

「それじゃ今日のライブ代払っときますね」

「あいよ、ありがとう」


 洋美さんと話すだけのことは話して、入場料とドリンク代なるものを払ったらステージへと向かう。


「あ、ついたかお疲れ」


 ステージに近づくと兼斗先輩と目が合った。

 てか昨日あんなことあったのになんでこんな平然としていられるんだよ。


「お疲れ様です、所で俺からのLINE見ましたか?」

「見たけどよ、俺だってゲロかけられたこと何回もあるんだぜ? 大体クリーニング代なんて大してかかんねえだろ、いちいちそんなこと気にしてたらこれから先やってらんねーぞ?」


 ......こいつ正気か? 確かに俺もいきなり請求するように促したのは良くなかったかもしれないけどまずは言うべきことがあるだろ、ごめんなさいって言葉をな。

 それなのに、過去に自分も同じ目に遭ったからって理由で共感を得ようとするのはどう考えてもおかしいだろ、それ以前に貴様の事情なんて俺の知ったことではない。


「兼斗、やめとけ。夏音はまだ飲み会の雰囲気に慣れてないんだよ。後で俺がどうにかするからよ」


 後ろで部長が声を掛けると兼斗先輩は黙り込んだ。


「意味分かんねえ」


 思わず本音を口に出していたら部長に睨まれたけど、別に俺は何か悪いことしたわけじゃないし気にも留めてない、留める必要がない。


 そうこうしている間にスタート5分前になっていた。照明やPAは準備万端らしく、あとはライブが始まるのを待つだけ。


「ねえ......」


 気づけば音琶が隣にいた。俺の隣にはこいつが居るのが最早当たり前になっている気がしなくもない。


「何だよ」

「私やっぱりここでバイトした方がいいのかな......」


 まだそのことで悩んでたのかよ、てっきり別のところでバイトしているもんだと思ってた。

 てか6月には払わなきゃいけないんだから、まずは俺が先払いしておくとしか......。

 多分給料は7万超えるだろうし。


「悩んでるくらいならもう決めとけよ」

「そうだけど......」

「言いたいことはそれだけか?」

「えっと......」

「もう始まるぞ」

「......」


 今日の音琶は情緒不安定みたいだからそっとしておくのがいいかもな。

 あんまり話し込みすぎるときついこと言ってしまいそうだった。

 

 ・・・・・・・・・


 ここまでのライブを見てきて、やっぱりこの前よりもレベルの高さが感じられた。

 まずコピーバンドがない、どのバンドもオリジナルの曲ばかりで、メンバーがそれぞれ考えを出して作り上げた曲を披露していた。

 バンド間でもしっかり話し合っていることが伝わってきたし、パートごとの音の表現がしっかりされていた。


「すごい......」


 ここまで3バンドがステージを盛り上げてきたけど、さっきから音琶が感嘆の声を漏らし続けている、もしかして俺のドラムよりもすごいとか思ってないよな?

 特に理由は見当たらないけど、音琶にだけは他のドラマーに心を奪われたくないって気持ちがあって、初めて俺のドラムを本気で認めてくれた人だからっていうのがあるかもしれないけど、どうしてそんな感情にされてるのかはまだわからなかった。


 そして4バンド目、いよいよ兼斗先輩達の出番なのだが、正直ここまで凄い人達の演奏を見てきた身からしては期待値は低い。

 そもそもこの4人のうちの誰かが部室で個人練習している所なんて見たことないし、全体練習ならともかくあれほど機材の揃った環境で練習していない以上、ちゃんとした身になっているとは思えない。

 ギターボーカルの小沢聖奈先輩に関してはつい最近就活が終わったらしく、まともに練習する時間なんてなかったに違いない。一体どのタイミングで今回のライブに誘われたんだか。

 確かにこのバンドは過去に何回か外でライブしていたみたいだけど、着実に練習を重ねておかないと少しサボっただけで本来の演奏ができなくなるに違いない。

 先輩達がそれぞれの音の確認を取り、中音と外音が終わったところで聖奈先輩が合図を出し、ライブハウス内に響き渡るBGMが小さくなり、照明が消えて真っ暗になった。


 さて、この人達はどんな演奏をするんだろうか、特に期待もしていなかったけど、来たからには最後まで聞いてやるとするか。

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