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第56話 意地

今回は二話連続の更新となります

「バ……カ……な……」


 何をされたかも分からなった。気づいたら胴体を半分以上も失い。空中へと投げ出されていた。


「こんな……あり……えん……」


 力が入らない。体内から魔力が急速に失われていく。薄れいく意識の中、最強の管理者チェルノボーグは、ある難解な謎に直面していた。


 ……なぜ肉体が回復せんのだ⁉︎


 不死身に近い体を持つチェルノボーグにとって、この程度の傷ならものの数分もしないうちに塞がる。失われた肉体も、魔力を増幅させれば再生は可能だ。なのに一向に体が回復する気配がない。それどころか、意識がどんどん遠のいていく。


「なぜだ……なぜ……っ」


 チェルノボーグは知る由もなかった。自身を蝕む猛毒の正体。それは陰の魔力を浄化するまったく新たな属性。天が攻撃の際に使用した退魔必殺の武器――その名を『練気』といった。


 ……敗れるのか……このオレが……?


 300年以上もの昔から存在する最古参の管理者の一人。第四使徒の側近を務め上げ、時の英雄王ナスガルド一世、始まりの冒険士ルキナの両雄と死闘を繰り広げたこともある。古き大戦の時代を生き抜いてきた。我こそが真なる争いの神の信仰者だという自負が、最強の管理者なのだという意地が、チェルノボーグにはあった。


「ただでは……死なんぞ……!」


 老魔は最後の力を振り絞り、頭上に手をかざした。


「いでよ……我が同胞たち……」


 断末魔はない。代わりに不吉な言葉を残して、管理者チェルノボーグは事切れた。


 空には不気味な魔法陣が描かれていた。

 

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