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第二話 最期の晩餐

 王子様のお付きの人にそれとなく連行された私は、街で一番大きな建物──王子様の宿舎になっていると聞いた……で、哀れみの目を向けられていた。

 パレードを邪魔した罪で処刑でもされるんだろうか。

 膝ががくがくとして、今にも腰が抜けそうな私に、王子様のお付きの人々は「おあがりなさい」と食事を用意してくれた。

 ふかふかのパンと、具沢山のスープと、薄切りにした生焼けの肉だった。

 普段食べるのは固いパンが多いし、スープにもこんなに具が入っていることはない。肉は──表面しか焼けてない気がするけど、生肉を食べても大丈夫なんだろうか?


 罪を犯した人は、死刑になる前に豪華な食事を用意されると聞いたことがある。最期の晩餐というやつだ。

 私はますます震え上がり、心の中で母と幼馴染に助けを求め、恐怖を紛らわせるためにふかふかのパンを必死に頬張った。母は変人だから、きっとよくわからない方法で私を助けてくれるに違いない。それはともかくとして、ふかふかのパンが美味しい。表面しか焼けていない肉も、食べてみたら肉の旨みがギュッと閉じ込められていて、ものすごく美味しかった。なんだこれ。


「かわいそうに……よほどお腹が空いていたんだろう」

「すごくおいしいです。こんなの初めて食べました」

「かわいそうに……」


 王子様のお付きの人々に見守られながら、私は次々とお皿を空にしていき、すっかり満腹になった。


「ごちそうさまでした」

「君、私たちと一緒に働きなさい」


 あまりの美味しさに、すっかり処刑のことなど忘れていた私は、きょとんとした。王子様のお付きの人々は真剣で、冗談ではなさそうだった。

 王子様のパレードを邪魔した罪人を、処刑するんじゃなかったのか。それとも……と、私は胃からあがってくるゲップをなんとかやり過ごしながら、思案を巡らせた。

 王子様のお付きの人々の仕事を手伝うことで、罪を償いなさい──ということかもしれない。

 お金で払えと言われても我が家は裕福ではないから無理だし、処刑されるよりはずっとマシだ。

 私はおどおどしながらも、「わかりました」と応えた。

 やっぱり王子様は怖いものだ。関わる人の生活を一変させてしまう。

 これが、私が世にも恐ろしき王子様という存在の元で働くことになったきっかけだった。

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