35 魔法特訓開始! 覚えた魔法は……!
「いいわよ。そんなことでいいの?」
オレリアさんが、快諾してくれる。
これは渡りに船。願ってもない機会に恵まれた。
「俺は魔法が全く使えないので、是非お願いします」
「なら決まりじゃな。指導となると、時間もかかるじゃろうし、今日は泊まっていきなさい」
「村が大変な時にすいません。お世話になります」
「そのくらいなんでもないわい。むしろ恩人なんじゃから、もてなされていきなさい」
「じゃあ、日が暮れるまで、その辺で練習しますか。付いて来て」
「はい」
オレリアさんに「こっちよ」と促され、後に続く。
しばらく歩くと見晴らしの良い場所に出た。
「まるもっちー君は、魔法が使えないの?」
「はい、全く」
「へぇ、珍しいわね。小さい頃に教わったりしなかったんだ」
「ええ、いつか誰かに教わりたいとは思っていたのですが、中々機会に恵まれなくて」
「私は教師じゃないし、大魔法使いってわけでもない。だから大したことは教えられないけど、本当にいいの?」
「はい、基本的なことを知れるだけでも、ありがたいです」
「分かったわ。じゃあ、その辺に適当に座って」
野原に座った俺は、オレリアさんに魔法のイロハを教わることとなった。
背筋を正し、オレリアさんの説明に耳を傾ける。
俺の膝の上に座ったミミも、傾聴姿勢である。
オレリアさんの授業内容は、要約するとこんな感じだった。
まず、体内には魔力というものが流れている。
魔法を発動する際は、その魔力を操る必要が出てくる。
最もポピュラーなのは、手のひらや指先に魔力を溜め、発動条件を満たした後に魔法名を唱えることで発動する方法だ。
他にも四肢の別の部位に魔力を溜めたり、全身に溜めたりする場合もあるとのこと。
魔法の発動条件を満たすには二パターンある。呪文詠唱と現象想像だ。
呪文詠唱派は正確かつ明瞭に呪文を詠唱すればするほど、魔法の精度と威力が上がると考えている人たちで、学者系の人に多い。
現象想像派は呪文の詠唱は行わず、魔法が発動した姿を明確に想像すればするほど精度と威力が上がると考えている人たちで、冒険者系の人に多い。
呪文詠唱なら威力が安定しているが、呪文を唱えるために魔法発動までに時間がかかる。
現象想像なら魔法名を唱えるだけで魔法が発動するも、使用者の精神状態によって威力が増減する。
両者共に一長一短がある、といった感じだ。
ちなみにオレリアさんは現象想像派とのこと。
「それじゃあ、一度使ってみるから見ていてね」
俺たちを後ろへ下がらせたオレリアさんが、近くにあった木へ手をかざす。
「氷貫弓!」
魔法名を唱えると同時に、オレリアさんの手のひらから氷が発生。矢の形となって飛び出す。
撃ち出された氷の矢は木に突き刺さった。
「と、こんな感じ」
「おお! 初めて見ました!」
「ええ? 魔法を初めて見たの?」
「あ……、いえ、氷貫弓をってことです」
やってしまった、と口元を手で押さえる。
俺自身は今初めて魔法を見た。だが、この世界で魔法は珍しくない。
どこでも見かけるようなものだ。それを見たことがないとなれば、いらぬところで詮索されてしまう。
俺は、オレリアさんが使った魔法を初めて見たのだと、慌ててごまかした。
「そうなんだ。それも珍しいわね。じゃあ、早速練習していきましょうか」
「よろしくお願いします。俺も氷貫弓を撃つんですね」
「いえ、違うわ。今の魔法は属性が絡むから、君が使えるかどうかは分からないの」
「そうなんですね。誰でも撃てるわけじゃないのか」
オレリアさんの話によると、効果の高い魔法には属性というものが存在する。
使用者にその適正がないと、当該の属性魔法は使えないそうだ。
自分に何の属性があるかどうかを調べるには、手当たり次第に使えるか試すしかない。
そのため、属性魔法は初めて行う魔法の練習に向いていない。
「まあ、初心者は生活魔法で練習するのが一般的ね。でも、それじゃあ、お礼っぽくないのよねぇ。だから、珍しい魔法を教えてあげるわ」
「え、普通でいいんですけど……」
「後で生活魔法も教えるから、安心なさい。生活魔法は呪文を忘れちゃったから、教えにくいのよ……。あれって、呪文詠唱なら一発なんだけど、現象想像だと、ちょっとコツがいるのよ」
「分かりました。それで、珍しい魔法って?」
「うちの村に伝わる魔法よ。さっき話した通り、うちは冒険者上がりの狩人の村。そんな奴らが使っている魔法だから、使い勝手の良さは折り紙つきよ。村の秘密や秘伝ってわけじゃないから、村の人以外でも使っている人はいると思うけどね」
「へぇ、面白そうですね」
「でしょ? 名乗魔法っていうのよ」




