197 完成祝いを渡したらとんでもないことに……!
予選で資金を全額注ぎ込めば、本選で使えるお金がなくなってしまう。
そういった意味でも、今日出来ることは何もないということか。
「なら、気持ちを切り替えましょう! 完成したのはいいことなんですし、お祝いしましょう。ジョゼさんのリクエストに応えて、今日はカレーにしましたよ!」
と場を盛り上げるように、今日の献立を話す。
難しいことを考えるのは止めて、こうなったら前祝いに全力投球だ。
『そうなんだよ!』
と、ミミが興奮気味に続く。ミミもカレーが好物なのでテンションが高い。
「ありがとう。それじゃあ、夕食にしようか。着替えてくるから先に行っておいてくれ」
俺は「はい」と返事をし、ミミと先にダイニングへ向かった。
遅れてやってきたジョゼさんが食卓を見て驚きの表情となる。
「おお、ご馳走じゃないか。しかも、私の好物ばかりだ」
「腕を振るいましたよ。ここで色々作らせてもらったお陰で、レパートリーも増えましたからね。それと……、ミミ」
明日は大事な予選。美味しい物を食べて元気になってほしいからね。
俺はそう説明しながら、ミミにアイコンタクトを送る。
すると、ミミが前に進み出て、背に隠していた花束をジョゼさんへ差し出した。
『完成、おめでとうなの!』
ミミからジョゼさんへ花束の贈呈だ。
「完成おめでとうございます。俺からはレース用のスーツです。運営に確認して、贈っても問題ないことは確認済みなので安心してください」
と、俺特製のレーシングスーツを渡す。
スーツを作った後、ヴィヴィアンさんに聞いたら、大丈夫だと思うが確認しておいた方がいいというアドバイスを受けた。
だから、大会運営にも問い合わせて、渡しても問題ないとの解答を得てある。
レーシングスーツは肘や膝、前腕、脛にプロテクターが入り、肋骨部分は衝撃吸収機構を備えたものに仕上げた自信作だ。ヘルメットもバッチリである。
「魔走車の色に合わせて、ちゃんと黒にしておきましたよ」
スーツの色は黒一色。カラーリングも魔走車と揃えてある。
ヘルメットの側面とスーツの背面には工房のトレードマークであるピンクのクマのマークを入れておいた。
こういうのは統一感を出したほうがいいからね。
「……その、あれはコーティング剤の色なんだ。本来はあの上からピンクに塗装する予定だったんだが、間に合わなかったんだよ」
「そ、そうだったんですか」
塗装まで完成していたら、色の選択を間違えたことになっていたのか……。
危ない危ない。
「でも、嬉しいよ。ありがとう。まだレースにも出てないというのに、こんなに祝われてしまった」
そう言って、顔をほころばせたジョゼさんが花束とスーツを抱きしめる。
「折角助手にしてもらったのに、何もお手伝いできなかったのが心苦しかったですし、これぐらいは祝わせてください」
『がんばってね!』
と、二人でジョゼさんを激励する。
「二人ともありがとう! 明日は君達のためにも、いい走りをしてみせるよ!」
と、ジョゼさんから力強い言葉を頂いた。
明日は俺たちもしっかりと応援しないとな。
そして予選当日。




