173 準備不足のせいで、衝撃の事態に……!
――翌朝。
朝食の場でジョゼさんに話を切り出した。
「ジョゼさん、実はギルドマスターからお願いされていた依頼を今日からこなして行こうと思います。ですので、朝の内に家事を済ませたら、夕方まで出かけますね」
と、説明する。
ギルドマスターに頼まれたのは、長距離コース点検、長距離レースに同行、置き引きの捜査だ。
コース点検はレース直前。長距離レースは短距離レースの後に開催される。
つまり、この二つの依頼はまだ先の話。今は出来ない。
というわけで、外に夕食を作りに行くついでに、置き引きの捜査を同時進行でやっていくことにする。
「分かった。しっかりと励んでくれ。もし工房への依頼が来た時は前日には話すよ」
「はい。日をまたぐことはないと思いますが、そういう場合は事前に話しますね」
「うむ。依頼をやっていれば、自然と翌日になってしまうこともあるだろう。あまり気にせずに行ってきてくれて構わないからな」
「ありがとうございます」
ジョゼさんの許可を貰った俺は、その日の家事を済ませ、早速外に出た。
「ふふ、自然に外に出てこれたぞ」
これで匂いを気にせず、思う存分料理が出来る。
ちょっとワクワクしていたせいか、昼食用のサンドイッチ作りも鼻歌交じりになってしまった。
「そのうち普通の依頼もやるつもりだけど、今は料理が出来る環境づくりが先決だな」
ギルドの依頼も適度にこなさないと、鉄級の俺は資格剥奪になりかねない。
だが今は、料理が優先だ。
環境を整えたら、置き引き犯捜査と普通の依頼をやっていこう。
「まずは家を作るか」
屋外で調理すると風の影響で料理に埃が入ったり、火加減にムラができたりしてよろしくない。
野営時ならそれでもいいけど、家で食べる夕食はベストな状態にしたい。
ここは、簡単なものでいいから風除けになる建物がほしいところだ。
家とまではいかなくても、囲いくらいは作りたいな。
「木を切って、錬金術で小屋っぽいものでも作ってみるか……。て、斧がない!」
これでは木が切れない。
だけど、ここまで来たのに斧だけのために街まで買いに戻るのは面倒だな……。
なんとか切れないものかと、目の前にある太い木をペタペタ触りながら考える。
「よく考えたら、別に切らなくてもいいか。よっと」
俺は思考を切り替え、大木を引っこ抜いた。
うん、切る必要はなかったな。
周囲を散策し、太い木を何本か引き抜いて材料を調達する。
しかし、ここで新たな問題に気付いてしまう。
「木はなんでもいいのか? それに種類をそろえた方がいいよな……」
やっぱり、家を建てるのに適した品種があるよな。
残念ながら今引っこ抜いてきた木は、太いということしか共通点がない。
これで大丈夫か?
でも、木の品種なんて分からないぞ……。
「あ、トレントだ! あれなら俺でも分かる」
と、ここで閃く。以前、死骸運搬で運んだモンスターを思い出したのだ。
あれは高級木材という扱いを受けていたモンスター。
つまり、トレントを集めてくれば、材料問題は解決だ。
「ちょっと、モンスター狩りといきますか」
俺は、ミミを頭に乗せると森を探索。
なんとかトレントを探し出し、十体ほど討伐することに成功した。
これで材料は揃った。後は錬金術で仕上げていこう。




