第24話2-3鍛錬
魔王が覚醒した幼馴染のミーニャを連れ戻す為にソウマたち姉弟は今日も何処かをさ迷っています。
お姉ちゃんに鍛えられながら果たしてソウマはミーニャを連れ戻せるのか!?
熱い姉弟(師弟)の物語です。
さあ食べに行こうボヘーミャ名物!!(セキ談)
姉さんは強くなるために学園長に稽古をつけてもらう事となったのだけど‥‥‥
「どっひゃぁぁぁああああぁぁぁぁっ!!」
「のほぉぉおおおおぉぉぉぉぅっ!」
僕と姉さんは学園長に吹き飛ばされている。
「あーあ、やっぱりね。フェンリルもソウマもまだまだだねぇ~」
「セキ、仕方ないわよ。相手がユカだもの」
「シェル様、また回復魔法かけた方が良いのですの?」
風の魔法で防御されているあっちにはゴザを敷いて高みの見物しているシェルさんたちがいる。
僕は吹き飛ばされながらその様子を見るとシェルさんはお酒を片手に、セキさんは骨付き肉にかぶりつきエマ―ジェリアさんはシェルさんの膝でゴロゴロしている。
いいなぁ、僕もそろそろ休みたいしお腹も減って来たよ。
村でもしょっちゅう吹き飛ばされていたから飛ばされている間にこうして余裕が出来るんだよなぁ~。
しかしこの稽古って村でやっていたモノより厳しい。
両手両足に重りをつけて念動魔法でその重さを軽減しながら学園長の攻撃をよけるとかって至難の業なんですけど?
「くっ! 魔力が上手く扱えないわ!! あー、もうっ!!」
「姉さん落ち着いて集中しないとおもりが‥‥‥」
ドンっ!!
学園長の放つ【火球】ファイアーボールにまたまた吹き飛ばされる僕たち。
僕はまたまた空中で吹き飛ばされながら思う。
どう考えてもこれって無理だよね?
と、そろそろ魔力も切れるね?
地面に落ちる時上手く受け身だけは取れたけどもう限界。
僕は魔力切れで意識を失うのだった。
* * * * *
「全く、情けないですわ。ソウマ君もう少し頑張れませんの?」
「ああぁ~、エマ―ジェリアさんありがとうございます」
気がついたらエマ―ジェリアさんが【回復魔法】をかけてくれていたようだった。
その隣で姉さんも回復が終わっていたようだ。
姉さんは僕を心配そうに見ている。
「ううぅ、お姉ちゃんが体を使ってソウマを介護したいのに、こっちも魔力切れでまだふらふらするぅ~」
学園長が使う【浄化魔法】のお陰で奇麗にはなっているけどほんと心身ともにもうバテバテだよ。
「うーん、あたしが稽古つけてあげる余地なくなっちゃったね? まあユカに任せておけばあたしと対等にやり合えるくらいにはなれるわよ?」
セキさんはそう言って僕に骨付き肉を差し出す。
僕はお腹が空いていたのもあってありがたくそれを受け取りかぶりつく。
「私たちがセキさんくらい強くなれるって言うのですか? 『爆竜』と呼ばれるセキさんほどに?」
姉さんもセキさんから骨付き肉をもらいながらそう聞く。
するとセキさんはにっこりと笑って言う。
「なれるなれる。『同調』が出来れば出来るって」
「「『同調』?」」
思わず聞き返してしまう僕たち。
するとセキさんは「あっ!」と言う表情をしてシェルさんを見る。
「まあ『同調』について教えるのは良いでしょう。もし『同調』でも足りなければ『心眼』を開いてもらわなきゃだもんね。先に教えても良いわよ?」
するとセキさんはほっとした表情に戻り、指を立てて話始める。
「うーん、『同調』ってのは魂と体の結びつきを強くして魂から出て来る力を発揮する技よ。フェンリルやソウマの魂が強ければ強いほど効果は抜群よ! もしそれでだめなら『心眼』って言う技を身に着けてもらえばいいわ。こんな感じで!」
そう言ってセキさんは瞳の色を金色に変える。
「あっ!」
それはシェルさんもやっていた事だけど、一体何なのだろう?
「今あたしは『心眼』が開いた状態でこれだといろいろが見えるよの。マナの動きやその魔力がね。だからあなたたちも良く見えるのよ‥‥‥」
そう言って優しく笑う。
シェルさんもそうだったけど何故かセキさんの笑顔を見ても懐かしさがこみあげてくる。
「セキさん? ‥‥‥何だろう、この感じ。とても懐かしい‥‥‥」
「フェンリル?」
すっと元の瞳の色に戻ったセキさんは何かわくわくした感じで姉さんを見る。
しかし姉さんは頬に汗を流しながら引きつって後ろに下がる。
「セキさん、近い、近い!! 私にそっちの気は有りませんからね! 私はソウマ一筋なのですから!」
うーん、何で僕が引き合いに出されるのか分からないけどそう言われたセキさんはちょっと残念そうだった。
「ま、仕方ないか。こればかりは待つしかないもんね。さて、今日の稽古は終わりでしょ? せっかくだからボヘーミャ名物たこ焼き食べに行きましょ! シェルお金ちょうだい!」
セキさんはまだふらふらする僕らの手を取り元気にシェルさんにお金を要求するのだった。
* * * * *
ボヘーミャは南方に近い事もあって一年中ちょうどいい気候の所らしい。
近くに海もあって海産物もそこそこ捕れるらしい。
「ほい、これがボヘーミャ名物『たこ焼き』よ! 熱いから気を付けて食べてね!」
そう言いながらまん丸な茶色っぽいものにソースがかかったものを差しだされる。
セキさんやエマ―ジェリアさん、そしてシェルさんもそれを付属の楊枝で刺して口に運ぶ。
「ほふほふ、熱いですがそれが良いですわね!」
「ハフハフ、そうそう、これが良いのよねぇ~」
「うーんあたしは熱いの平気だけど相変わらずおいしいわねこれ!」
エマ―ジェリアさんやシェルさん、セキさんは熱い物を無理やりほふほふハフハフさせながら食べている。
僕もマネして口に運ぶけど確かに熱い。
でも‥‥‥
姉さんも僕も思わず舌鼓してしまう。
「はふはふ、なにこれ! 美味しい!!」
「たしかに美味しいね! なんだろう、小麦粉がほとんどみたいだけど味が付いてるし、いろいろな具が入っている。あれ? なんだろうこの食感?? クニクニと‥‥‥」
僕は中に入っている食べた事の無いものに驚いている。
特に変な味がする訳ではないけど面白い食感だな?
「あ、それクラーケンよ」
シェルさんに言われ思わず吹き出してしまう。
「ぶっ!」
ク、クラーケンってあの足がいっぱいあってうにょうにょと動き大きい奴は船をも海に引きずり込むって言う魔物!?
本で見た時はあの気持ち悪さから嫌な魔物だと思っていたのに!?
「た、食べられるもんだったんですか、あの怪物!?」
流石に姉さんも驚いている。
「慣れれば美味しいわよ」
「そうね、そのまま焼いたやつも美味しいわよ?」
「私はあのぬめぬめうにょうにょが苦手ですわ、生理的に。でもシェル様にされるならバッチこーぃですわ!!」
慣れているのだろうか、シェルさんたちはそのまま続けて食べている。
うーん、まあ食べれるのだから問題無いだろうけど、ちょっと想像がつかないなぁ。
と、何か口の中で吸い付いた?
「んんっ!? 何らろ、口の中にくっついら!」
「えっ! ソウマ大丈夫!? お姉ちゃんが見てあげるからこっち来なさい!!」
慌ててこっちへ来る姉さんは僕の口を見るや否やむちゅ~っという感じで自分の唇を突き出す。
でも口の中にくっついたものはすぐに取れて問題無くなる。
「むちゅ~、お姉ちゃんがソウマの口から吸いだしてあげるからねぇ~!!」
「姉さん止めてってば、もう治ったから!」
「いやいや、万が一があるわ、あたしが舌入れて隈なく確かめてあげるから!!」
「いらないってば! そんなに吸いたいならこれ吸ってなよ!」
僕は手元のたこ焼きを姉さんの口に放り込む。
もごもご‥‥‥ ごくんっ!
「もう、ソウマのいけずぅっ!!」
騒ぐ姉さんを放っておいて残りのたこ焼きをおいしく食べる僕だった。
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