第203話8-27守る者その四
女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。
この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?
苦難の道のりを今、少年は歩き出す。
そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。
うーん、エルハイミ母さんお願い聞いてくれるかな?(セキ談)
涙目のエマ―ジェリアさんをセキさんがエルハイミねーちゃんに一緒にお願いするからと言ってなだめ、やっと次の部屋に向かう事が出来た。
「セキ、本当ですわよ! ちゃんと女神様にお願いするって約束忘れたら許しませんわよ!!」
「わかった、わかった。流石に本体のエルハイミ母さんならそのくらいできるはずだからちゃんとお願いすれば無視だけはされないでしょうよ」
次の場所へ急ぎながら廊下を走って行くとまた扉が見えてきた。
これが最後のガーディアンのいる所。
今までは何とかなって来たけど、今度も何とかなるかな?
少し気持ち的に緩み始めていた僕だったけど、それを見透かすようにアイミが僕たちの前に出る。
ぴこぴこっ!!
「え? 何アイミ??」
ぴこぴこぴこぉ~っ!
だいぶ慌てている様だ。
しかしそれに気付いたセキさんもいきなり髪の毛を逆立てる。
「なにこのプレッシャーは!? この私にここまでプレッシャーを与えるとは何者なの!?」
「セキがここまで警戒するとはですわ…… ソウマ君、気を付けてですわ!」
「なんだろうね、この感じ懐かしくもあるんだけどまるで空気を切り裂くようなこの感じ……」
セキさんは頬に一筋の汗を流しそしてエマ―ジェリアさんもミーニャも警戒心を強める。
一体全体、この扉の向こうにいるのはどんなガーディアンなのだろう?
「ふんっ! このままここにいましても埒が明きませんな、扉を開けましょうぞ!」
ぐっと取っ手を掴み筋肉を盛り上げ変なポージングをするフォトマス大司祭様。
アイミも首を縦に振ってからもう片方の取っ手に手をかける。
そして最後のガーディアンのいる部屋の扉は開かれた。
そこは今までと同じ大きな部屋だった。
そしてその部屋の中央に一人の男性がたたずんでいた。
見た感じ三十を過ぎたような人。
ものすごく静かな感じで、腕を組んでじっとこちらを見ている。
しかし僕は見た事が無いこの人の顔を見てもの凄く懐かしさがこみ上げてくる。
「嘘っ!? ま、まさか……」
「そんな、そんな!」
途端にセキさんとミーニャが声を漏らす。
その声は恐怖でもなく、心底驚きを現したような声だった。
「ふむ、この道をやってくる者がいると聞いたので来てみれば懐かしい顔がいるな」
この声、聴いた事がるような気がした!
遠い昔、いや、僕が僕になる前、ずっと前に聞いた懐かしい声。
「ショーゴ! ショーゴじゃないの!! どうして!?」
「ショ、ショーゴさん…… 復活してたんですね……」
セキさんはその男性に駆け寄ろうとして慌てて飛び退く。
そして腕を上げるとそこに一筋の赤い線が有ってそこからだんだんと血が流れ始めた。
「セキ、大丈夫ですの!? 【回復魔法】!!」
エマ―ジェリアさんは慌ててセキさんに【回復魔法】をかける。
それを見てその男性は懐かしそうに目を細める。
「昔の主にそっくりだな。確か情報ではハミルトン家の令嬢だと」
「だ、誰ですのあなたは!?」
「エマ、下がって。この人はショーゴ・ゴンザレス。エルハイミ母さんの騎士。いや、鬼神って言った方が分かるかな?」
鬼神だって!?
僕は自分の腰につるされているショートソードを見る。
「少年、今は君がその剣を使っていてくれるのか? 大切にしてもらっている様だな感謝する。しかしここから先は主の命が無い限り通すわけにはいかない。大人しく戻ってもらえないだろうか?」
そう言ってその人は軽くため息をつく。
「ショーゴ! これは一体どう言いう事よ!?」
「セキも大きくなったな。小さなころの面影が残っている。元気だったようだな?」
「ショーゴさんがまさかお姉さまのガーディアンとして復活していただなんて‥‥‥」
「お姉さま? そうすると君はイオマの転生者か? まさかまだ主を狙っているのか?」
セキさんもミーニャも知っているこの人、ショーゴ・ゴンザレス。
女神様の戦士でありあ、騎士であり、そして鬼神と呼ばれる。
先生の所でも鬼神いついては色々聞かされた。
先生自身は鬼神を崇めているような所すらあった。
そんな人が今僕の目の前にいる。
「すみません、僕はどうしてもエルハイミねーちゃんに会いに行かなくっちゃいけないんだ。フェンリル姉さんを返してもらうために……」
「主をその呼び方で呼ぶとは…… 少年、君も誰かの転生者なのか?」
「その昔ジルと言う人だったらしいです。ほとんどその人の記憶は戻ってませんが」
僕がそう言いながら油断なく身構えるけど鬼神は腕を組んだままだった。
それなのにあのセキさんにかすり傷を負わせるのだもの、只者じゃ無い。
「そうか、ジルか…… ふふっ、懐かしいな。この俺にもそんな感情がまだあったのか」
そう言って彼は天井を見上げる。
そして僕たちを見ながら言う。
「それでも俺は主に従うまで。ここを通りたいのならば全力で俺を倒してから行くが良い!」
どんっ!
その気迫、その迫力、まさしく鬼神そのものだったのだ。
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