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第170話7-25選択

女神エルハイミにさらわれた姉のフェンリルを取り戻す為にソウマは立ち上がる。

この世界の女神に背くその行為は果たして姉のフェンリルを取り戻せるのか?

苦難の道のりを今、少年は歩き出す。

そんな熱い姉弟(師弟)の物語です。


うーん、ミーニャのやつ何考えてんだよ?(リュード談)


 「これって中身がオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』じゃないわ!」


 

 ミーニャは焦りながらそう言う。


 

 「そんな! これは私たち王家が代々秘密裏に守って来たオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』のはずです!!」


 「どう言う事なんだ?」



 ラーミラスちゃんもアポロス将軍も思わずミーニャに聞く。

 しかしミーニャも首をかしげるばかりだった。


 「外装は間違いなくオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』のモノよ。ただ、中身が違う。あの作りはオリジナルのそれじゃないわ」


 「それってどう言う事なの、ミーニャ?」


 ミーニャはしばし考えながら手の中にある宝珠を見る。

 そして思いだしたかのようにまた「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。


 「素体が違う『鋼鉄の鎧騎士』になっているって事かしら…… しかしどこの国の『鋼鉄の鎧騎士』なのかしら……」

 そう言いながらもう一度【浮遊魔法】を使って開かれた胸元に上がって行く。

 そして中に入りしばし‥‥‥



 ぶんっ!



 ミーニャがしばらく中をいじっていると一瞬「鋼鉄の鎧騎士」の三つある目が光った。

 そして剣を突き立てていた腕が動き出す。


 

 ごごごごごぉ

 

  

 「う、動いた!」


 「ラーミラス様、お下がりください!」



 それを見上げていたラーミラスちゃんをアポロス将軍は慌てて抱き上げその場から離れる。

 しかし鋼鉄の鎧騎士は剣をゆっくりと握りそして膝を落として座り込み始めた。

 そしてお腹の辺に空いた左手を持って来て動きを止める。



 「やっぱりそうだ、これ別モンね!」


 ひょいっと中からミーニャが顔を出す。

 そして「鋼鉄の鎧騎士」の左手をステップに床まで降りてくる。



 「ミーニャこれは一体どう言う事なんだ?」


 「この子、あたしが作ったオリジナルじゃない。機体ナンバーは十一番目の子の外装。でも中身はイザンカ王国製の旧型『鋼鉄の鎧騎士』ね」


 ミーニャはそう言ってこの「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。

 そしてラーミラスちゃんを見ながら続ける。



 「残念ながらこれはオリジナルじゃないわ。中身はあなたたちイザンカ王国製の古い機体。でもまあ、頑張ったようであの宝珠が連結型魔晶石核の代わりになる原動力だったみたいね。機体性能は動きは速いけど非力。オリジナルの十分の一の力も出ていない。まるで飾りの様な機体ね」



 「そ、そんな! では私たち王家は‥‥‥」


 「それでは王家の正当性は?」



 ラーミラスちゃんもアポロスさんもミーニャに詰め寄る。

 しかしミーニャは慌てずに僕を見て聞いてくる。



 「ねえソウマ君、昔先生の所で千年くらい前に『鋼鉄の鎧騎士』暴走の話があったっての覚えている?」


 「え? あ、ああぁ、確か呪われた『鋼鉄の鎧騎士』を止める為に女神様に力を解放されたティアナ姫の転生者がそれを倒したって話の?」


 「そう、それなんだけど、その頃のあたしは覚醒していないからわからないけど多分それが十一番目の子よ。そしてどう言う理由かは分からないけどその子の外装だけがここに残っている。それを当時のイザンカ王国が手に入れオリジナルとして祭り上げたみたいね」



 そうミーニャは説明をする。

 でもそうするとこの内乱はどうなるのだろう?



 「私たちが守って来たこれは、女神様のお言いつけを守ってきたこれは偽物と言うのですか……」


 「ラーミラス様……」


 がっくりと膝を落とし、そして肩の力が抜けてしまったラーミラスちゃん。

 この「鋼鉄の鎧騎士」が偽物となれば確かに気落ちしちゃうだろうね。



 「別に問題無いじゃない? あなたたちは今まで通りこれをオリジナルとしてその正当性を誇示すればいいわ」


 ミーニャがいきなりとんでもない事を言い出す。


 

 「ミーニャ! いくら何でも冗談が過ぎるよ!!」



 「ソウマ君、落ち着いて。イザンカは今選択しなきゃいけないのよ? 今まで通りこれをオリジナルとして祀り上げながらラーミラスの王位継承の正当性を誇示するか、新たな理念の下、いもしない魔王軍の脅威と対抗する為の国家を作り上げるかを」


 ミーニャのその言葉にここにいるみんなはラーミラスちゃんを見る。

 するとラーミラスちゃんはすくっと立ち上がり、意を決したような表情で言い放つ。


 「王家が守って来た女神様のお言葉、そしてその正当性を示すオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』。すべては国の平和を、安定を望む物! おじさまの蛮行は許される事ではありません!!」


 ラーミラスちゃんはそう言ってぐっと拳と胸の前で握りしめる。

 そんなラーミラスちゃんの目の前にアポロス将軍は跪き頭を下げる。


 「ラーミラス殿下のそのお気持ち、このアポロスしかと心に受け止めました。やりましょう、たとえ中身は違えどオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」は国の理念、平和を愛する象徴です」


 ラーミラスちゃんはアポロス将軍のその言葉を聞き涙目になりながらも「ありがとう」とだけ言う。



 「さてと、じゃあ決まりね。だったら忙しくなるわね? ソウマ君には手伝ってもらうわよ?」


 「え? 僕??」


 ミーニャはそう言いながらニヤリとする。

 

 「ソ、ソウマ君に一体何をさせるつもりですの!?」


 「あんたじゃ駄目よ。あんたにはあんたの役目をしてもらわなきゃね、聖女としての役割を」


 ミーニャはそう言いながらリュードさんやセキさんも呼んで話始める。


 「正直この子は戦闘なんかでは弱い方ね。でも外装は本物。生半可な攻撃や魔法は全く通じないわ。だから少しだけ無理をさせるの。ソウマ君は同調してもらいながらお姉さまにもらった心臓でこの子に魔力供給をしてもらうわ。そしてこの子はソウマ君が動かすの!」


 「はぁ? ソウマにこんなの動かせるのかよ?」


 「ミーニャ、いくらソウマがエルハイミ母さんから力を与えられたからって、無理させちゃ……」


 「ソ、ソウマ君に何か有ったらどうするのですの!?」


 しかしミーニャは僕を見ながら言う。


 

 「こちらにはユーベルトの聖女もいるし、オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』もある。そしてラーミラスもいる訳だから役者はそろっている。そして魔王を演じるあたしがいる」



 ミーニャはそこまで言ってラーミラスちゃんを見る。



 「あんた、イザンカを背負う覚悟はある?」


 「もちろんです! そのためにお父様は私を‥‥‥」



 それを聞きミーニャはにっこりと笑ってラーミラスちゃんの頭に手を当てる。



 「それじゃぁ、こう言う風にやるわよ? もう馬鹿なこと考えつかないように、イザンカの連中に魔王の怖さを教えてあげるのよ!」




 ミーニャは心底嬉しそうにそう言うのだった。


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