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76話 アイラと言う才能 3


「そこまで!!」


 クリフト様の号令と共に、私とキース姉弟は同時に手を休めた。互いの錬金勝負が完了した証、クリフト様の号令で勝敗も同時に決したのだ。


 カエサルさんとシグルドさんの二人も私達の錬金術を真剣な表情で観戦してくれていた。私は一人、キース姉弟は二人という違いはあるけれど。


「キース姉弟は……超上級回復薬を33個。それから、上級回復薬を24個か。たったの30分にしては凄まじい個数だな」


「はは、当たり前やん。これが双子のコンビネーション、双性錬金の真骨頂やで!」


「はっ、まあな……はあはあ……」


 二人とも相当に体力を消耗しているように見える。それでも、高ランクのアイテムを50個以上作れるのは凄い。数だけで言えば、私でも到底追い付けないわ。


「双子による、完璧に近いコンビネーションか……見習うべき技術よね」


 私には兄弟が居ないからあれだけど、今度、シスマと一緒に双性錬金を試してみようかな? 万能薬を開発した時に、双性錬金紛いのことはしたけれど、こうして本物の技術を見たから応用できるところが増えるだろうし。


「それから、アイラは……」


 クリフト様が、私の作ったアイテムに目を配っている。キース姉弟と比較するように……。


「エリクサー、万能薬の2種類で合計28個か」


「はい、クリフト様」


 作っているアイテムの数で言えば、キース姉弟と比較して倍くらいの差をつけられている。普通に考えれば、私の劣勢になるんだけど。


「錬金術師や薬士は調合したアイテムをランク分けして、点数でその希少性を評価してるんや。上級回復薬は20点、超上級回復薬は30点やな」


 そう言いながら、エミリーは懐からアイテムの点数表と思しき物を取り出した。これに似た物は私も見たことはある。せっかく彼女が出してくれた代物なので、クリフト様はその点数表で判断することにしたようだ。彼女から受け取っていた。


「エリクサー、蘇生薬、万能薬の点数はそれぞれ100点か。となると、数では倍くらいの差が出ているが、点数で見るとキース姉弟は1470点。対するアイラは2800点か……」


「そういうことやな」


「姉貴……これは」


 点数、アイテムの数、2対1という勝負形式であったことも考慮しているのかもしれない。クリフト様は少し考える素振りを見せていた。


「アイラの勝利、ということで問題ないかな? 反論があるなら承るが……」


 クリフト様は私の勝利を宣言してくれた。キース姉弟たちにも確認を取るけれど、反論する様子は見せていない。


「点数換算で倍近い差が付いているんやし、反論も何もないよ。しかも、こっちは双性錬金で挑んだのにや」


「一体、何者なんだよ……お前は……」


「いや、ただの田舎娘だけど……」


「嘘つけ、お前みたいな田舎娘が居るかよ……!」


 田舎娘というのは本当なんだけど、ローランドは信じてくれなかった。こうして、キース姉弟との錬金勝負は私の勝利で幕を下ろした。そんな勝負を見ていた二人の人物は、私の傍らに静かに立っている。実際にはインビジブルローブを身に着けた五芒星の人達も居ただろうけど、敢えてその人達はカウントしていない。


「なるほど、これが錬金勝負というものか。なかなか、見ごたえがあるじゃねぇか」


「気に入ったのか、シグルド? 俺の国ではわりと頻繁に開催されている代物だぞ?」


「ほう、あのキース姉弟とやらは、シンガイア帝国ではトップレベルなんだろう?」


「そうだな、そう聞いている。俺は錬金術については詳しくは分からないが……あのキース姉弟の1470点という点数も、ほとんど出たことはないはずだ」


「ほう、そういうことか。やはり、俺の眼に狂いはなかったようだな。アイラ・ステイト……ジャンルは違うが、近しい才能を感じた俺の嗅覚は」


 なんだかカエサルさんとシグルドさんは、仲良く会話をしているみたいだけれど、シグルドさんが私を同じ穴の狢みたいに見て来るのは勘弁してほしかった。


「いえいえ、シグルドさん。私はシグルドさんみたいに、戦闘狂ではないですよ?」


「ジャンルは違うと言っただろう? だが、お前の才能は天井知らずのはずだ。売り上げ勝負の時も今回の錬金勝負でも……自分の底を確認できたか?」


「それは……」


 確かに、どちらもキース姉弟という希代の錬金術士を相手にしていた。でも、私が確認したかった底は見れていない。シグルドさんも冒険者として、まだ自分の底が見えてないのかな? だから、私のことをジャンルは違うけど近しい才能と言ったのかもしれない。


「まあ、何はともかくアイラ」


「エミリー?」


「ウチらの負けや。シンガイア帝国の錬金術に関する秘密も知ってる範囲で話すから安心してな」


「あ、う、うん……ありがとう」


 私とエミリーは固い握手をした。本当に勝負が決した瞬間だ、クリフト様も満足そうな表情になっている。きっとクリフト様からしても、シンガイア帝国の秘密は二の次で……おそらく本当の目的は、彼らとの摩擦を完全に消すことにあったんじゃないかな。キース姉弟はこの国で国家錬金術士として働くわけでもあるんだし。


 それはきっと、長い目で見ればシンガイア帝国との友好の架け橋にも繋がる……クリフト様はそこまでを考えているんじゃないかと思えてならなかった。


 でもまあとにかく、売り上げ勝負に続いて錬金勝負でも勝利を収めることが出来た。やっぱり、勝てることっていうのは気分が良いと思う。そんな風に思える1日だった……。

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