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58話 アイラ追放の件について 3


「3週間で100万スレイブだと? な、何を言ってるんだ、お前は? この場で嘘や方便は禁句だとわからないのか?」


「いえ、嘘も何も事実ですけど」


 100万スレイブという売り上げに、ユリウス殿下の思考回路は追い付いていないように思える。まあ、材料費とか人件費を差し引くと、手取り収入はもっと下がるけど。桜庭亭の中に併設してある薬屋の売り上げとしては相当に高いんじゃないかな。


 ユリウス殿下の驚きの表情がそれをよく現わしているし、今後はカエサルさん以外の医者や、領民の為に動く貴族に納品したりすれば、さらに収益は安定しそうね。


「まったく、君という人は……恐れ入ったよ」


 クリフト様も予想外の数字だったのか、かなり驚いているようだった。えへへ、彼からの誉め言葉は素直に嬉しいかも。1万スレイブが一般家庭の1か月分の生活費とするなら、単純計算で100か月分の売り上げか。そう考えたら、確かに凄いかもね。


「ありがとうございます、クリフト様。クリフト様が材料を安定的に提供してくださるのも、かなり大きいです」


「いやいや、アイラの能力だよ。誇ってもいいと思うが」


「いえ、そんな……私は本当に周りの人に助けられてますし……」



 この2か月くらいを思い出すだけでも、色んな人と出会った気がする。間違いなく、彼らとの出会いが今の売り上げに関係しているし、決して私だけの能力じゃない。特に、金額面ではシグルドさんとの出会いは非常に大きいと言えた。


 一度に買ってくれる金額の桁が違うし……エリクサーの全体版のエリキシル剤と、あらゆる状態異常を治すと言われる3大回復薬の1つ、万能薬も安定的に店頭に並べられるようにすれば、とんでもない売り上げを記録することになるかもしれない。


 私は試してみたくて、無意識の内に武者震いをしていた。単純な売り上げだけじゃなくて、私の錬金術の上限を知る上でも良い機会かもしれないし。



「どうかしたのか? アイラ?」


「いえ、なんでもありません」


 そうだった……私はまだ、自らの錬金術士としての上限を知らないんだ。ううん、成長し続けていると言えるのかもしれないけれど、その言葉では取り繕えない違和感はあった。錬金術でエリクサー等が作れるのは嬉しいけれど、上限が見えて来ないというのは不安でもある。


 私はこの機会に自分の限界に挑戦してみようと考えていた。



「と、とにかくだ! 兄上、私は急用を思い出したので、これで失礼する! 議会の者達も依存はないな?」


 えっ? ユリウス殿下は急に焦ったようにその場から立ち去ろうとしてたけど、今回の用件に関しては何も終わっていないはず。私は彼の態度が理解できなかった。


「ユリウス殿下……まだ、アイラ・ステイト追放の件は終了していませんぞ? それに、先ほどの会話を聞く限り、その娘は相当な錬金術の使い手のようだ。まさか、個人の店で1か月も経たない期間で100万スレイブも稼げるとは……」


「ははははっ! 何を言っているんだ!? 私の切り札であるキース姉弟は、シンガイア帝国の最高の錬金術士なんだぞ? アイラ以上の売り上げを実現できるに決まっているだろう?」


 なんだっけ? シンガイア帝国は確か、ホーミング王国よりも錬金術が発展してるんだっけ? 錬金勝負も普通に行われてるとか、エミリーが言ってた気がするし。それを武器に現状を乗り切る姿勢は良いとしても、他国の人間に頼るってどうなんだろう。切り札が他国って……。


「ほほう、それは頼もしいですな。ユリウス殿下のお言葉が本当であれば、我らホーミング王国の財源確保にも大きな功績となりましょう!」



 結構、乗り気になっている議会の人達。この人達は実力主義というよりは、保守的な面が強いと思う。例えユリウス殿下の計画が上手くいったとしても、彼に錬金術の行く末を任せるのは危険極まりないと思うけれど。


 既に先の錬金勝負でホーミング王国の機密事項を、キース姉弟にある程度暴露することは決まっているはず。その元凶を作り出したのはユリウス殿下なわけだし。国王陛下はこの状況をどう見ているのかしら? そう言えば、クリフト様にも聞いたことがなかったわ。


「兄上……キース姉弟は私の知る限り、最高の錬金術士であることに間違いはない。アイラ・ステイトを追放したことが、間違いではなかったことを証明してやろう!」


「そうか……楽しみにしているぞ」


「ああ、楽しみにしていてくれ。次期国王になるのはこの私だからな」


「ユリウス殿下……」



 テレーズさんも呆れてものが言えない表情になっていた。ユリウス殿下はおそらく、勢いだけでこの場を収束させようとしている。私やクリフト様、テレーズさんが納得するかどうかは二の次で、議会が納得するかどうかを最優先しているみたい。


 その後、議会の話し合いも行われ、私の追放の件に一定の意味があったのかどうかは、キース姉弟の売り上げによって決まるという方針で固まった。私の追放に関しては単なるユリウス殿下のわがまま……人権無視でしかないと思うんだけど。大丈夫かな、この国の議会……。

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― 新着の感想 ―
[一言] ? 首にしなかったらアイラの分の儲けも国に入ってたけど…。 まぁ議会とか変態と馬鹿の集まりだから仕方ないか。
[気になる点] 現代社会では他社から研修目的に来てる社員に社外秘情報を漏洩してるんだが、緩いな議会…目の前の利益しか見ないで将来的に損する会社の重役会みたいな様相を呈してきた
[一言] すみません訂正の仕方が解らないので 前回感想について補足です この場合の本題というのは 「議会が討論すべき内容が、不当解雇だったのに いつの間にか収益をあげる方」と話題が刷り変わって いる…
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