286話 後悔
「アイラ! 平気!?」
「えっ……マリアベル……?」
目の前が真っ暗になった後のことは覚えていない。気付いた時には私は無傷だった。確かにキングスシャドーの標的に選ばれたはず……どうなったの?
「マリアベルが助けてくれたの?」
「ううん、私の能力だけでは守り切れなかったよ……」
マリアベルはなんだか元気がないようだ。私はあまりの事態に気を失っていたようだけれど……。
「怪我はしていないようだな、アイラ」
「シグルドさん!?」
振り向いた先にいたのはシグルドさんだった。あれ? キングスシャドーは?
「キングスシャドーはどうなったんですか?」
「お前を標的にした隙に仕留めることができた。奴は影の化け物だからな。死体が残らんというわけだ」
「あ、そうだったんですね」
良かった……私は覚えていないけど、なんとか倒すことに成功したみたいだ。でも、なんだかマリアベルの元気がないような気がする。もっと喜びそうなものだけれど。
「マリアベル……? 大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だよ」
私はなんとなく視線をマリアベルに向けていた。彼女はシグルドさんを見ているようで、私もそのまま彼を見る。
「えっ……?」
先ほどは急なことだったので気付かなかった。再びシグルドさんを見ると異変に気付いたのだ。同時にマリアベルの元気がなかった理由も分かった。
「シグルドさん……左腕が……!」
「今気付いたのか? まあ、勝利の代償みたいなもんだ。気にするな」
シグルドさんの左腕がなくなっていたのだ。血が出ていなかったから分からなかったわ。
「それって……まさか私を庇って……!」
「ま、気にするな」
「で、でも……!」
シグルドさんはエリクサーを使って傷口の修復を完了させているようだ。でも……腕は治っていない。それはつまり、腕から先が完全に消滅していることを意味していた。キングスシャドーの攻撃で粉々になったということだ。
「し、シグルドさん……あ、あの……」
「お前が無事ならそれでいい。キングスシャドーを相手に腕一本で済んだという意味でもな」
違う……私がいなければシグルドさんは大怪我しなかったはずだ。例え勝てなかったとしても逃げることはできただろうし。
「アイラ、元気出してよ! 自分を責めたりしないで!」
「……」
私は付いて来たことをとても後悔していた。まさかこんなことになるなんて思わなかった。嘘でしょ……シグルドさんの腕が……。




