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278話 割引券

お待たせして申し訳ありません。


 エンゲージ2号店で本格的な割引券の活用が始まった。


 実は昔にもやったこと自体はあるのだけれど……あの時はうまく行かなかった。お客さんが殺到しちゃって。まあ、今回も不安ではあったのだけれど……予感は的中した。


「あの……ここは露店なんですけど……」


「なんという行列だ」


 割引券の話を持ち出してから、お客さんが殺到してしまった。2万スレイブ購入毎に30%の割引券を付与するというものだ。私の予想ではお金に余裕のある人以外は来ないイメージだったけど。100メートルくらいの長蛇の列になっていた。


 えっ……どういうこと?


「シグルドさん、どうなっているんでしょうか? これは……」


「100人はいそうだな。全員、2万スレイブの買い物ができる連中と思っていいんじゃねぇか?」


「そんなわけないと思いますけど……」


「ははは、無理している人もいるかもしれないな」


 アルファさんの意見はもっともだった。全員が2万スレイブの買い物が余裕の人達ではないはずだ。でも、この行列の人達は2万スレイブの買い物をしてくれる人達だろう。それだけで200万スレイブの売り上げになる可能性があった。


 アミーナさんの桜庭亭の最高級の部屋で1万スレイブなのだから、2万スレイブなら2泊分だ。一般的な宿屋の代金としては高すぎるレベルと言えるだろうか。1万スレイブで一般家庭の1カ月くらいを賄う金額だしね。


 その時点で信じられない気分だった。200万スレイブ売り上げたとすれば、それだけで200カ月生活できるのだから。まあ、経費とか引けばもっと少なくなるけれど。


 200カ月……10年近い年数かしら? うん、それだけの売り上げを1日で達成できそうな予感……なんでこんなことになっているんだろうか? 30%引きの割引券がそんなに魅力的なの?


「客はお前を見に来ているんだろう」


「ふぉふぉふぉ、そうじゃな」


「老師もそう思われますか?」


 いつの間にか横にいたシグルドさんの師匠……なんだか意味深なことを言っている気がした。


「クレスケンスの再来と言われるアイラ・ステイト……そんな少女が出した30%の割引クーポン券じゃ。使うかどうかはともかくとして、記念に持っておきたいと考える者も多いじゃろうな。割引券は使ったら無くなるからの」


「そうですね……まあ、お前の人気がこの列を生み出したと考えな」


「え、ええ~~~!?」


 もしかして、100人の行列の中には例えば半分は割引券を使う気がないということ? 私が出したサイン色紙のような感覚で持っておこうとする人が多いということかしら? 信じられないけれど……。


「まあ、アイラの人気なら仕方ないよね!」


「いえ、よく分からないのだけれど……」


 マリアベルもシグルドさんやアルファードさんの意見に同調しているようだった。事実……買い物をしてくれた人は全員、2万ゴールド以上を買い上げた。それから次の日以降……割引券を使う人は極端に少なかった。


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