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267話 VSエディ・スミス 4


(エディ・スミス視点)


「はっは……うぉおおおお!」


「……」


 僕は一体何をやっているんだ……? 途中からの記憶が途切れている。気付いた時にはシグルドさんと戦闘を開始していた。しかも、自分の意志で止めることが出来ない。


「大した動きだな、エディ。まさかここまで急成長するとは考えてなかったぜ」


「ぐっ!」


 僕はいつの間にか懐の剣を取り出してシグルドさんに全力で斬りかかっていた。突進攻撃ではダメージを与えられないと踏んだからだ。しかし、剣攻撃となると命のやり取りということになってしまう。僕はそんなことを望んでいたのか? いや、そんなはずがない……僕はただ、アイラさんを守りたかっただけだ。


「剣さばきも明らかに上達しているじゃねぇか。お前の才能はまだまだ底が知れんな」


「はあああああ!!」


 自分の意志とは裏腹に剣撃の速度はさらに増して行った。僕はこんなに動けただろうか? いや、今の動きは曲がりなりにもシグルドさんの速度に付いて行っている。そんな芸当は今までは全くできなかった。しかし、シグルドさんは抜刀していない。


「くうっ!」


「どうした、エディ。動きが止まったぞ?」


「手加減、のつもりですか……? 抜刀しないのは!」


 僕の叫ぶような質問にシグルドさんは動じていなかった。


「お前の剣撃が俺の魔法障壁を貫いていないからだ。まあ、かすり傷くらいは受けるがまだ抜刀する必要はない」


「……!」


 今の僕は才能が自身の身体を凌駕している状態……オーバーパワーを得ているようなものだ。それでもまだ、シグルドさんを抜刀させるには足らないということか? そこまでの差が出ているなんて……。


「うあああああ!」


 さらに威力や速度を上げた渾身の一撃をシグルドさんに向かって放った。この辺りは自分の意志なのか自動的に動いてしまったのかよく分からない。今の僕は第三者視点で見ているようだったから。


「おっと」


 その一撃をもってしてもシグルドさんの抜刀には至らなかった。彼は二本指で僕の剣を受け止めている。


「才能に任せた剣技では何発撃とうが俺には届かん。こう見えても北の大地でドラゴンとの死闘を制しているんだ。人間とのバトルはそれに比べれば可愛いもんだな」」


「ど、ドラゴン……」


 Sランククラスの最強格の生物だ。人類史上を垣間見ても倒した人物なんて、ほぼ皆無といっても良いレベルなのに……。Sランクの魔物はそういう位置付けになっていたはず。


「そんな化け物と比べないでください……!」


「今のお前からは底知れない才能の波を感じる。ジャンルは違うがアイラと同じような匂いがな。お前はこれから驚くほどに成長するだろう。俺以上の存在になるかもしれん、非常に楽しみだ」


「!!」


 その直後、僕は意識が飛んでしまった……最後に見た光景はシグルドさんの右ストレートだ。



-----------------------


「うっ……いてて……」


「よう、エディ。目が覚めたか?」


「シグルドさん……?」


 次に目を覚ました時、僕には毛布が掛けられていた。隣には薪をくべて火を起こしているシグルドさんの姿が。


「何をしているんですか? ここ、一応は村の中ですよ?」


「もう朽ち果てているんだ。焚き火くらい問題ないだろう。大丈夫か、容態の方は?」


「うっ……! はい、なんとか……大丈夫です」


「暴走状態のお前を止めるのは少々苦労したぞ。ドス黒いオーラも消えているので、もう安心だな」


 シグルドさんの「苦労」という言葉を鵜呑みにしてはいけない。少々、と付いているので余計にだ。実際にはパンチ一発で僕は負けてしまったし。


「アイラさんは……どうなったでしょうか?」


「あいつはカミーユとマリアベルに任せておけば大丈夫だろう。他の誘拐犯なんぞ数に含まれないからな。今頃は捕縛されて、アイラの奴はカミーユに泣きついているといったところか。多分な」


「アイラさん……やはり……!」


「念のため言っておくが、アイラの貞操は守られているからな? そこの心配はするなよ」


「えっ?」


 アイラさんの貞操は守られている……? 


「それは本当のことなんですか?」


「まあ、遠目から見ただけだから100%とは言い切れないが、まあまず大丈夫だろう」


「……」


 僕とシグルドさんとでは、そっち方面でも大きな差がある。そんな彼が言うくらいなのだから、正しいのだろう。僕はホッと胸を撫で下ろした。


「それなら……安心しました。後でマリアベルさんとカミーユさんに謝罪しておきます」


「ああ、それがいいだろう。しかし、今回の件でお前は自らの才能に目覚めたわけだ。俺としては大収穫だった。ははははは」


「シグルドさん?」


 シグルドさんは屈託のない笑顔を見せていた。シグルドさんがこんな素直な笑いを見せるとは……なんだか不思議な気分だった。


「今度、マリアベルのペットであるダークドラゴンに会わせてやる」


「だ、ダークドラゴンですか……?」


 そういえば少し前に現れたとか聞いたことが……マリアベルさんのペットになっていたのか。


「ペットではあるがその実力はマリアベルを凌いでいるぞ。俺でも勝てるかは分からん存在だ。良い刺激になるだろう」


「あ、あはは……お手柔らかにお願いします」


 ダークドラゴンとの邂逅……確かに強くなりたい僕にとってはカンフル剤になるかもしれない。会えるのが楽しみだった。その後、シグルドさんは焚き火の火を消して立ち上がる。目指すは例の建物だ。アイラさん達が無事なことを祈りながら僕も立ち上がった。


 しかし、今回の件で色んな人に迷惑を掛けてしまったな……ちゃんと謝っておかないと。

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