265話 VSエディ・スミス 2
(カミーユ・シェイド視点)
猛スピードで突進を開始したエディ。その速度は常人であるアイラや誘拐犯には見えていないでしょうね。私は前方にバリアを展開し、なんとかガードを間に合わせた。マリアベルも魔法障壁で自らをガードしているようだ。その直後……秒数で言えば1秒にも満たない時間でエディの突進が私達を襲った。
「ぐぐっ……このガキ、強い……!」
「エディ君、なにするのよ~~~! 痛いよ~~~!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
「もう、こっちの言葉は聞こえてないわね……危険だわ、こいつ」
マリアベルがかなりのガード能力を持っているのには安心したわ。私が助ける必要はないってことだからね。流石はシグルドが同行を頼んだ相手と言うべきかしら。それよりも……どうすればいいのだろうか。エディの攻撃力は想像以上……ガードを続けているだけではいずれ突破されてしまう。
こちらからも攻撃を仕掛ければ相手の突進を阻めるだろうけど、どれだけ怪我をさせるか分からないし……難しいわね。ていうか、シグルドの奴は暴走する危険性がある男の同行を許したってことよね。ったく、どういうつもりなのかしら。まあ、作戦前に分かってて誘いに乗った私が言うのもなんだけど。
「暴走」というのは自らの才能に強さが追い付いていない者が起こしやすい現象だ。エディ・スミスのように15歳という年齢が若い者ほど発動はしやすい。冒険者というのは毎日のように同業者の死体を見たりするので、精神的に追い詰められやすくそういったところでも「暴走」は起きたりする。
この現場にエディを連れて来たのは間違いだったんじゃないの!? 私は心底そう思っていた。
「ちょっと、そろそろマズイわよ……! こっちからも攻撃を仕掛けないと、押し切られるわ!」
「ええ!? でも、相手はエディ君なんですよ!」
「そうだけど……!」
エディの身体を心配してこっちがやられたんじゃ意味がないわ。多少、怪我をさせてしまってもそれなりの反撃に出ないと。と、そんな考えが浮かんだ時、私の後ろから気配がした。はあ、やっと起き上がったのね。
「想定以上の才能を秘めているようだ。これなら多少、本気を出してもいいだろう」
「シグルドさん! 無事だったんだね!」
「当たり前だ、俺を誰だと思っている」
「そんなことはどうでもいいから、あんたなんとかしなさいよ! あんたの弟子でしょ、あれは!」
ほぼ無傷で後ろから現れたシグルドに私は叫んだ。まあ、大してダメージは負ってないと思っていたけど、あのタックルをまともに受けて無傷は本当におかしいわ、こいつも。
「わかっている、迷惑を掛けたな。アイラの奴を診てやってくれ。俺は本格的にエディを止めるとしよう」
「じゃあ、このバリアを解除してあんたのところに飛ばすわよ! いいわね!」
「ああ、この建物内では崩壊の原因になりそうだ。裏口から適当な戦闘場所に運ぶ」
「ええと……どうすればいいのかな~?」
「いいから後はシグルドに任せるわよ! 私達はガードを解いて、両サイドに逃げればいいの!」
「わ、わかった! じゃあそうするね!」
「ああああああ!」
エディのタックルはどんどん強力になっている。これでは息を合わせてのガード解除は不可能だった。私とマリアベルは各々のタイミングでガードを解いて、後ろへと飛んだ。マリアベルの離脱タイミングは少し甘かったけど、実戦でも十分に活躍できるレベルのようね。
「うきゃ! いたい~~!」
「後は頼んだわよ、シグルド!」
「ああ、ここからは少々全力で行くぜ。何時以来だ? ドラゴンを討伐したとき以来か? 随分と前の話じゃねぇか」
「はあああああ!」
余裕を見せているシグルドにエディの奴は突っ込んで行った。それを両腕で掴んだシグルドは……。
「少々、場所を変えるぜエディ。楽しませてくれよ?」
エディの後ろに回り込んだシグルドは、タックルで開いた裏口の外へと吹き飛ばした。間髪入れずにシグルド自身も裏口から飛び出していく。戦場は建物の外へと移動した。
「ったく、派手な連中ね……あれに付いて行くのはしんどいわ。アイラ、あんた平気なわけ?」
「か、カミーユさん……うぇぇぇぇ……!」
「あ~はいはい。本気で怖かったでしょあんた? まあ、自分の立場を見直すにはちょうどいい機会だったんじゃないの?」
「そ、そんな……!」
「ほら、仕方ないから慰めてあげるわよ。仕方なくね」
「カミーユさん~~~!! 怖かったですよ~~~!」
「あ~五月蠅いわね、本当に……」
まあ、最後までやられてはいないみたいだけど、かなりギリギリだったようね。本当は虫唾がはしるけど、私はアイラをその胸に抱くことにした。その後もめちゃくちゃ泣いてたのがウザかったけどね……。




