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263話 アイラ救出作戦 4


(エディ・スミス視点)


 僕は──何を見ていた? シグルドさんが放った一撃……轟音を合図にして誘拐犯と思しき連中のアジト内に入った。表向きは近くに出現している魔物が攻めて来たのではないかという理由で。


 誘拐犯は村人を装っていたが明らかに焦っている様子だったし、それが嘘だと看破することは容易かった。同時に敵の実力も把握。僕でも十分に倒せる連中であることは分かっていたのだ。だからこそ、僕は躊躇なく建物内に侵入することが出来た。シグルドさんからは戦力差で勝てないと判断したら逃げろと言われていたけど、そんなことはない。


 入口にいた二人に反応されることなく、余裕で建物の内部に侵入することが出来た。あとはアイラさんが居ることを確認すれば言い逃れは出来ないはず。そんなわけで僕はアイラさんを探した。


 そしてすぐに見つけることに成功したのだけど。


「アイラさん……!?」


「え、エディ君……!?」


 アイラさんは後ろ手に拘束されている姿で見つかった。声の状況からしても、大怪我をしているということはないようだ。しかし……。


「お前ら……」


「な、なんだこのガキは!? 入口の奴らは何してたんだ!」



 アイラさんの服は覆面の男二人により剝ぎ取られていた。いかがわしい何かが行われようとしていた証だ。いや、もう行われた後かもしれないが。そんなことを確認している時ではない。目の前の奴らをアイラさんから引きはがす。……それ以外に考える必要はないのだから。大丈夫、今の僕なら出来るはずだ。


 僕は瞬時に覆面の男一人を捉えた。向こうが狼狽えていたから、余計に簡単に出来たのだ。首に腕を回し後ろ側から押さえ付ける。同時にもう一人の男に蹴りを入れ後方へと飛ばした。


「ぐはっ!」


 骨が折れる音と共に後方へ飛ばされた男は地面に倒れた。血反吐を吐いているところからしてアバラ骨が折れたのかな? まあ、今はどうでもいいけど。俺は解放されたアイラさんに視線を向けた。


「アイラさん! 大丈夫ですか!?」


「エディ君……う、うん……大丈夫……」


「アイラさん……」


 この男達に何をされたんだ? 意気消沈しているように見えるが、もしかして遅かったのか!? 許せない……! 僕は無意識に拘束した男の首を強く絞めていた。このまま絞め殺してやろうか……。


「ぐぎぎ……し、死ぬ……!」


「待て、エディ!」


 シグルドさんの声が聞こえて来た。破壊されている裏口から入り、僕の前まで来たようだ。マリアベルさんとカミーユさんの姿も見られる。それから遅れて入口に居た誘拐犯の姿も見えた。


「な、なんなんだこいつらは……!」


「し、シグルド・バーゼル……!?」


 入口にいた二人の内の一人がシグルドさんに気付いたようだ。かなり取り乱している。自分達の運命を悟ったのかもしれない。アイラさんにこんな酷いことをした以上は死んでも償い切れないはず。お前らの命運は尽きたんだ……!


「その首を絞めている奴を解放してやれ、エディ」


「シグルドさん!? どういうことですか……!?」


 一瞬、何を言われたのか分からなかった。首を絞めて拘束しているこの男を解放しろだって? 意味が分からない。


「そこにいるお前ら……少しでも動けば容赦はしない。大人しくしているんだな」


「う、うう……!」


 シグルドさんは入口から走って来た二人に脅しの言葉を掛けると、僕が蹴り飛ばした男の前にしゃがんだ。


「が、がは……!」


「暴走状態のエディの蹴りをモロに受けたんだ。まだこのくらいで済んで良かったな」


「致命傷ではないにしても、結構な大怪我よこれ。どうするの?」


「サイフォスがいれば回復魔法があったが、仕方ない。エリクサーを使ってやるとするか」


 僕は耳を疑っていた。シグルドさんは肌を露出させているアイラさんには近づかずに、よりにもよって僕が蹴り飛ばした人間の治療を開始したのだ。しかも、エリクサーを使っている。神聖国では2か月分の生活費に相当するエリクサーだが、本来の価格はその5倍とも言われているとか。マリアベルさんの受け売りだけど。


「何をしているんですか!? そんな男を助けている場合ではないでしょう!」


「落ち着くのはお前だよ、エディ。まずはその男を解放しろ。今のお前は非常に危うい」


「な、何を言っているんだ……?」


 シグルドさんはどっちの味方をしているんだ……? アイラさんがもしも殺されている場合は、誘拐犯は皆殺しにするとまで言っていた彼が。シグルドさんの目つきは完全に誘拐犯には向かっていない。僕を危険視し敵として認識しているようだった。


 僕は自然と拘束している男をさらに絞めてしまう。


「か、かは……!」


「おい、そこまでだ、エディ!」


「なぜ止めるんだ!! シグルドさん! 僕には理解できない!」


 シグルドさんの声は届かない……僕には理解できなかったから。この男は有罪だ……アイラさんを酷い目に合わせた。殺されて当然の男だ。思い切り腕に力を入れ男を殺した──はずだった。


「なっ! シグルドさん……!」


「いい加減にしろ、エディ!」


 男を殺す直前にシグルドさんが猛スピードで介入してきたのだ。僕の腕はシグルドさんによって握られていた。拘束していた男はその場に倒れ伏し、咳を激しくしている。どうやらまだ生きているらしい。


「シグルドさん……あなたは……!」


「おいおい、ここからさらに暴走する気か?」


「シグルドさん! マズイってば~~~! エディ君の熱源反応が異常なことになってるから!」


「ったく……責任もって止めなさいよ、シグルド!」


「わかっている。エディ、文句があるならかかって来るんだな」


「ぎっ!」


 拘束していた男を殺すにはシグルドさんが邪魔だ。僕は力の限り突進した。まずはこの人を倒す!

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