262話 アイラ救出作戦 3
(シグルド・バーゼル視点)
「よし、合図の轟音は鳴らす準備は整った。あとはこの音でエディの奴が建物内に侵入すれば勝ちだ」
「でもまだ、アイラの姿は確認出来てないよ? 大丈夫かな? エディ君も……」
「あいつはまだ新米冒険者だが、誘拐犯程度に遅れを取るとは思えん。万が一、強すぎる戦力だと確信したら逃げるのを第一に考えろと言っているからな」
俺とマリアベル、それからカミーユの3人は建物の入り口から真裏に当たる所で待機していた。マリアベルの熱源反応──サーチ能力で人がこの建物に密集していると分かったからだ。
エディを一人で正面から向かわせたのは、俺達がバレないように裏に回り込む時間を稼ぐ為だった。エディなら顔が割れていないから相手も油断するだろうと考えたからだ。
「随分、そのガキを買っているわね。そこにいるマリアベルといい……シグルド、あんた性格変わったんじゃない?」
「ふん、どうだかな。俺はただ一定の戦力になり得る人間を認めたに過ぎない。今までと特に変わった印象はないがな」
「はっ、ど~だか。今回もエディとかいうガキを先に行かせるのに賛成していたし。信頼していないとそんなこと出来ないでしょ?」
「……」
カミーユの言うことも一理はあるか。俺はなんだかんだエディのことを認めているのかもしれん。ただし、あいつは年齢相応の純粋さゆえに「危険」でもあるがな。
「まあ、そんなことはいい。それよりも、エディの奴が暴走しないように注意していてくれ」
「暴走?」
「ああ」
カミーユは少しだけ眉間にしわを寄せ始めた。俺の言っている意味を理解したようだな。
「あんた……私をここに呼んだのは、それを止める為の手伝いをさせようってこと?」
「それもある。内部の状況がはっきりしない以上、想定外の事象に対応できる人間は複数いた方が良い。アルファの奴はエンゲージに残してあるからな」
俺の言葉は序列4位のカミーユの力を信頼している証だ。アルファは念のために店の警護をお願いした。ないとは思うが留守の間に襲撃されては大変だからな。
「シグルドさん、エディ君の暴走って……どういう意味?」
「ああ、お前も注意していてくれ。あいつはまだ15歳だ。捕まっているアイラを見てどういう行動に出るか分からないからな」
「あ、そういうことか。でも、そんなに心配する必要はないんじゃないかな~?」
「まあ、念のためだ」
俺はマリアベルに対してそう言ったが、エディが「暴走」する可能性は少なからずあると睨んでいた。特にアイラが酷い目にあっていた場合は確実に起こるだろう。
「とにかく用心に越したことはない」
「わかったわよ。ここまで付いてきちゃったんだしね。協力くらいしてやるわよ」
「私も大丈夫だよ。サーチで常に熱源感知をしておくね」
「よし、それでは音を出すぞ」
カミーユとマリアベルの了解を得て、俺は建物の裏口付近を遠距離から攻撃した。ドカンと音を立てて裏口が破壊される。エディが内部に侵入する音としては十分な轟音が鳴り響いた。
「な、何の音だ!?」
「裏口が吹き飛んだぞ!」
建物内では誘拐犯と思しき人物の声が聞こえて来た。間髪入れずに俺達は破壊された裏口に向かう。ここからなら内部に侵入できそうだからな。そして、次の瞬間、裏口からエディの姿を捉えることに成功した。どうやら、作戦通りに行ったみたいだな。
「アイラさん!?」
「エディ君!?」
エディだけでなく、アイラの声を捉えることも出来た。姿はまだ見ることが出来ないがどうやら無事らしい。これでこの建物に居る連中が誘拐犯だと確定したわけだ。しかし……。
「お前ら……!」
「お、おい……なんだよ、こいつ……!?」
「!?」
「うわ! エディ君の周囲ですんごい熱源が観測されてるよ!」
「マズい……!」
俺は瞬時に悟った……アイラの声から察するに命に別条がある状態ではないはずだ。とするとそれ以外の何か……エディを一気に「暴走」状態に加速させる何かが起きていたことになる。
ある程度は想像が付くが……まずはなんとしてもエディを止めなければな!




